第16話 流した噂
看守が変わるたびに、リゼットは相手の性格を注意深く観察していた。
厳格な者、無関心な者、そして――口が軽い者。
若い看守のカイルは、明らかに最後のタイプだった。巡回のたびに世間話をしたがり、聞いてもいない外の噂まで運んでくる。
「今日も静かだな、リゼット」
差し入れのパンを渡しながら、カイルは気安く声をかけてきた。リゼットは小さく頷き、受け取る。
「……ねえ、変なこと聞いてもいい?」
「ん? 何だ」
「魔王を倒せる剣が、この世のどこかにあるって話、聞いたことある?」
カイルは目を丸くした。
「初耳だ。何だそれ、御伽噺か?」
「さあ。前に誰かがそんなことを言ってた気がして。気のせいかもね」
リゼットはそう言って、興味なさそうに視線を逸らした。カイルは首を傾げながらも、それ以上は深く追及しなかった。
――これで、十分。
カイルのような男は、聞いた話を誰かに話さずにはいられない。今夜のうちに、この話は看守の詰め所を巡り、明日には城下の酒場にまで届いているだろう。
小さな種を蒔いただけだ。あとは、それがどこまで届き、誰の耳に入るかを待てばいい。
奴らが本当にこの国のどこかに潜んでいるなら、この噂は必ず届く。そして、少しでも動揺すれば――尻尾を出す。
リゼットは静かに、その時を待つことにした。
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それでは、また別の作品でお会いできますように。




