第12話 独りきりの確認
瞼の裏に、あの夜の光景がこびりついて離れない。
セラフィナの声が、記憶の奥から蘇ってくる。
「魔王が……この教会の、中枢に……人の姿を借りて、潜んでいます……」
息も絶え絶えに紡がれた言葉だった。血にまみれた手が、リゼットの手を強く握りしめる。
「これを……あなたに……この剣だけが、魔王を滅ぼせます……でも、一度きり……失敗すれば、消えて、次の誰かに……」
セラフィナのあの時の言葉を忘れないように心に刻み込む。
リゼットは呼吸を整えると、胸に刻まれた紋様に語りかけるように、「聖剣よ、顕在せよ」と念じた。
手のひらの上に光の粒子が集まり、細い剣の形を作っていく。
装飾らしい装飾もない、ただ研ぎ澄まされた一振り。刃に触れても、冷たさすら感じない。
なぜなら、この聖剣は実体を持たない魔力でできた剣だったからだ。
リゼットは剣先をじっと見つめた。
――こんなに頼りない見た目で、本当に魔王を滅ぼせるのだろうか。
疑いかけた気持ちを、セラフィナの最期の言葉が押しとどめる。あの人が確かにそう言ったのだから、信じるしかない。
感傷に浸っている時間はなかった。通路の奥で、看守の足音が響き始める。
リゼットは剣を握る意思を解くと、光の粒子が霧のように散り、剣は跡形もなく消え、辺りは影が落ちたかのように暗くなった。
袖を戻し、何事もなかったかのように壁にもたれる。
――焦ってはだめ。大丈夫、まだ気づかれてはいない。リゼットはそう自分に言い聞かせた。
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それでは、また別の作品でお会いできますように。




