第9話
「ぐおおおおお~~~……っ」
早朝。
シュラフから這い出し、朝の光を浴びた。
軽く体をほぐし、ビーチチェアに座ってお湯を沸かす。
白湯を飲み、ようやく目が覚めた。朝食は焼いた肉をパンとチーズで挟んで食べた。これがもう絶品よ。
その日はゆっくり昼まで過ごした。
釣りをしたり、スコープアローで鳥を撃ち落としたり……お昼は焼き鳥だぜ。
夕方になる前に撤収する。
テントはワンタッチタイプ。作るのに苦労したけど実用的だ。もうちょいサイズを大きくすればよかったなーと思わないこともない。
「キャンプギアの問題点も見つけたし、改良してシモンの店に持っていこうかな。くふふ、副業副業」
リュックに荷物を全て詰め、俺は森を出た。
町までは近い。朝の散歩にはちょうどいい。
町に戻り、キャンプギアの改良のために適当な素材を買いに行こうとした時だった。
「クソ、騙しやがって」
「エルフのくせに、弓がヘタクソとかマジかよ?」
「希少なジョブとか言っても、それだけね」
「じゃあ、金輪際近づかないでね」
冒険者チームが、町の入口で揉めていた。
仲間割れか? そう思っているが……近づくと、四人が一人を責めている。
しかも驚いた。責められているのは、エルフ族のシャナだった。
大きな弓を握りしめ、悔しそうに下を向いている。歯を食いしばっており、震えているのがよくわかった。
仲間たちはワイワイ楽しそうにしながら行ってしまう。「報酬、四人で山分けな」とか「豪勢にいこうぜ」とか、もうシャナのことを忘れている。
「…………ぁ」
手で涙を拭った瞬間、ちょうど目が合ってしまった。
「……ヘンタイ」
「え、なんで」
「女の子が泣いてるところ、ジッと見て楽しい?」
「あ~……悪かったよ」
このまま別れるのも気まずいし……しゃーないなあ。
◇◇◇◇◇◇
俺はシャナを誘い、大衆酒場にやってきた。
シャナは、きょろきょろと酒場を見ている。来たことないのだろうか?
「ほれ、好きなの頼め」
「う、うん……えっと」
どうすればいいのか。そんな風に俺を見てモジモジしている……まさかこいつ。
「お前、こういうところ来たことないのか?」
「…………」
あ、そっぽ向いた。
ジーッと見ると、涙目で俺を睨んで言う。
「わ、悪い? そうよ、アタシは来たことない。宿の食事だけで、外食経験なんてない。一人でお店に入るとか、怖いもん!!」
「お、おお」
こ、こわいもん、と来ましたか。
なんかとっつきにくい子だなーと思ったが、ただのコミュ障か。
俺は給仕を呼び、適当に注文。俺は酒、シャナには果実水を注文した。
料理が到着し、シャナは目を輝かせる。
「わああ……!!」
「こっちが焼き鳥、こっちが煮込みで、こっちが炒め物で」
「み、見ればわかるし。でも……ありがと」
シャナは小さい声でお礼を言う。俺は頷き、ジョッキを差しだした。
「……?」
「乾杯だよ、乾杯」
「あ!! か、かんぱいっ!!」
なぜか嬉しそうに、シャナはグラスを合わせるのだった。
◇◇◇◇◇◇
シャナは、嬉しそうに、美味しそうに食事をする。
果実水がカラッポになり、俺をチラチラ見る……ああ、おかわりね。
おかわりを注文し、再び食事を再開。
しばし、食事を楽しみ、落ち着いたところで俺は切り出した。
「んで、何かあったのか?」
「もがが?」
「飲み込んでからでいい。何があったか聞かせてくれるか?」
「んっぐ……ぷは」
シャナは飲み込み、焼き鳥の串を皿の上に置く。
「……馬鹿にしない?」
「事情は知らんが、俺は人を馬鹿にするようなことは絶対に言わん」
「……うん、信じる」
シャナは、果実水を一気飲みしてグラスを置いた。
そして……何があったのかを、説明し始めるのだった。




