第83話
十日後。俺、アキト、ティンファの三人は冒険者ギルド、ギルマスの部屋に呼ばれた。
「来たか」
部屋で待っていたのは、初老女性のギルマス、そして騎士っぽい鎧……というか騎士なんだろう。騎士のお偉いさんっぽいおじさんだ……しかもアフロ。
初老女性は金色の煙管を吸い、紫色の煙を吐き出す。
「D級アルノー、F級のアキトにティンファだね。アタシはタクニキ王国冒険者ギルドマスター、グリオーマだよ。よろしくね」
グリオーマ……頭の中にできる悪性腫瘍みたいな名前だな。まあそんなのはどうでもいい。
俺は緊張している二人の代わりに言う。
「ここに呼ばれた、ってことは……俺たち三人がエンシェントドラゴン討伐に参加できるってことか」
「察しがいいね。さすが、あのレグナフィリアの教え子さね」
「……婆さん、レグナフィリアのこと知ってんのか?」
「グリオーマ姐さんと呼びな、クソガキ。あの婆のことならよーく知ってるよ。アタシもあいつの教えを受けたからねぇ」
なんと……まあレグナフィリアは何百年もギルマスやってるし、いろんな国に教え子がいるとは思っていたけど。まさかタクニキ王国のギルマスが姉弟子だとは思わなかった。
婆さん……ではなく、グリオーマ姐さんはアキト、ティンファを見る。
「F級の新人がBレートの魔獣を狩りまくってると報告があったが……まさか、『職業適応者』とはねぇ。ボンバイエ、騎士団に欲しいんじゃないかい?」
俺は吹き出しそうになったが耐えた。
アフロの騎士……ぼ、ボンバイエって名前なのか。アキト、ティンファは緊張しているから笑う余裕はないのだろう。
ぼ、ボンバイエ……ぶふっ、は言う。
「たーしかに、欲しいねぇ。ウチの騎士団にはいない逸材だ。それに、才能もありそうだ。どうだい若者たち、冒険者やめて騎士にならないか?」
おーっと、まさかギルマスの前で引き抜きとは。グリオーマ姐さんは……あれ、あんま気にしているように見えないな。
アキトは言う。
「も、申し訳ございません。自分は冒険者に憧れているので……」
「あたしも!! ごめんなさい!!」
二人は頭を下げた。
グリオーマ姐さんはニヤッとする。
「目ぇ見りゃわかるだろ。この二人は根っからの冒険者さね」
「だな。ハハハ、聞いてみただけ。と……自己紹介がまだだったな。オレはタクニキ王国騎士団の第一部隊隊長ボンバイエ。今回のエンシェントドラゴン討伐の総指揮官だ」
「アルノーだ。よろしく」
「あ、アキトです!!」
「ティンファ!! 実家はパン屋、よろしくです!!」
二人はもう一度頭を下げる。ボンバイエはアフロを揺らしながら笑った。
「若いっていいねぇ。さて本題だ、大討伐で最も優秀な成績を残したお前たち三人を、エンシェントドラゴン討伐部隊に加える。了承してくれるかい?」
なるほど、呼ばれたのはその確認ってことか。
当然、俺たちは断る理由なんてない。むしろ願ったり叶ったりだ。
「もちろん参加する」
「「参加します!!」」
「よし。じゃあ決まりだ。討伐会議が明日、ギルドの会議室で行われる。それに参加してくれ」
話は終わり、俺たちはギルマス部屋を出た。
ギルドを出て、昼飯を食うため近くの食堂へ入った。
「さて、エンシェントドラゴン討伐参加のチケットは手に入れた。あとは」
「ドラゴン退治!!」
「ああ。でも、俺たちは後方支援で間違いないだろ」
「「え」」
二人が驚く。ちょうど、料理が運ばれてきた。
日替わり定食……お、今日はオークのステーキか。大討伐でかなり魔獣が討伐されて、魔獣肉が値崩れするくらい安くなってるってトーニャが言ってたっけ。肉肉、いっぱい食うぞ。
「し、師匠。後方支援って」
「……考えれば、S級冒険者に王国騎士が合わせて二十名以上いるんですよね。大討伐でたくさん魔獣を狩ったからって、いきなり入るボクたちが最前線で戦えるわけない……」
アキトは気付いた。
俺はオークステーキを切り分けて食べる。うっま。
「まあ、そういうこった。今回はエンシェントドラゴン討伐の『空気』を感じろ。いいか、直接戦わなくても、エンシェントドラゴンという最上級の存在を肌で感じるだけでも、魔獣千体と戦う以上の価値がある。SSSレートを拝めて、S級冒険者や王国騎士の戦いを目に焼き付けろ。それだけでも、お前たちは成長できる」
「「…………」」
二人は顔を見合わせ、自分たちに運ばれてきたステーキを見る。
「お前ら、SSSレートの存在感を舐めるなよ? 対峙すれば、俺の言う意味を理解できる。さて……メシ食ったら解体場に行くぞ。お前たちが狩った魔獣の査定が終わるころだ。ふっふっふ……かなりの大金が入るぞ。それで、今日は親孝行でもしてやれ」
「お金!! そういや、換金お願いしてたっけ」
「……どのくらいの金額なのかな」
十日前。魔獣の討伐、解体、素材持ち込みなどしたが、換金は大討伐が終わったあとにしたのだ。解体場も大忙しだったしな。
ちなみに、俺もけっこう狩ったのでけっこうな金が入る。
「アキト。母さんにいい服とか美味いメシでも奢ってやれ。喜ぶぞ」
「はい!!」
「ティンファも、家のパン窯を新しくしたいって言ってたよな。金持って、カムドたちと鍛冶屋にでも行けばいい」
「はーい!! えへへ、たのしみー!!」
こうして、この日は自由に過ごすことにするのだった。




