第84話
翌日。
俺、アキト、ティンファの三人は早朝からギルドの会議室にいた。
俺とティンファの手には雑巾、アキトの手には箒があった。
「……あの師匠。これは?」
「ふふん。掃除道具だ」
「いや、そうじゃなくて……」
雑巾をジト目で見るティンファ。アキトも疑問に思っているようだ。
俺は説明する。
「まあ、今回のエンシェントドラゴン討伐……俺たちは一番下っ端だ。これから始まる会議で一番最後に入ろうモンならヒンシュクを買う。だから、一番最初に来て、会議室の掃除をして好感度を稼ごうってわけだ」
「「……」」
ちなみに、好感度を稼ぐことで何かあるわけじゃない……まあ、チーム内で「この新人は調子乗ってる」って思われるよりは、会議が始まる前にしっかり掃除をして待っている方がいい印象を与えられる。
「まあ、騙されたと思って掃除するぞ。はい、手を動かす」
「「はぁい……」」
というわけで、掃除開始。
◇◇◇◇◇
一時間後。
「お? なんだなんだ……お前たち、掃除をしていたのか?」
「「おはようございます!!」」
会議室に、ボンバイエと騎士たちが入って来た。そしてもともと参加予定のS級冒険者たちも入って来る。
ピカピカの会議室を見て、みんな「へえ」だの「殊勝なこった」とか言っている……うんうん、悪い感触じゃないな。
ボンバイエは言う。
「さて、これよりエンシェントドラゴン討伐について情報共有をする」
俺たちは端っこの席へ座る。
すると、ボンバイエの隣に女性冒険者が立つ。
「冒険者側の代表として、私、『光矢』のアロアが指揮官補佐をすることになったわ。よろしくね」
なるほど……美人で巨乳なお姉さん。じゃなくて、冒険者側からも補佐を入れることで、騎士と冒険者の共同戦闘ってのを強調するのか。ボンバイエの案かな……悪くない。
ボンバイエは資料を出す。
「まず、エンシェントドラゴンについて」
エンシェントドラゴン……過去に俺も戦い討伐したことがある。でも、討伐レートはSだったような気がする。
今回、討伐するエンシェントドラゴンのレートはSSSだ。この世界で六体目のSSSレートの魔獣……国家レベルの武力が必要な魔獣だ。
密偵の調査によると、エンシェントドラゴンの頭部にデカい古傷があり、その傷の影響で脳に異常が発生し、異常な成長をしたエンシェントドラゴン……らしい。
古い文献によると、タクニキ王国の先々代くらいの王様が戦ったエンシェントドラゴンに酷似しており、そのエンシェントドラゴンの可能性が高いとか何とか……まあ別にいい。
「ここにいる騎士、冒険者はタクニキ王国で最強とも呼べる者たちだ。我々ならば、エンシェントドラゴンを討伐できる。これは確定事項だ」
はっきり言うねぇ……周りは自信に満ちあふれている。
エンシェントドラゴンの説明は終わり、アロアが言う。
「まず、部隊を四つに分割するわ。前衛七名、中衛十名、後衛十名。そして連絡係の三名」
「え……」
三名と聞き、ティンファがボソッと呟いた。
アロアがその呟きを聞き逃さず言う。
「アルノー、ティンファ、アキト。あなたたちは後衛のさらに後ろ、王都への連絡係として待機してもらうわ」
「お、王都?」
「ええ。我々が全滅した場合か、増援が必要な場合の連絡係よ。戦況の報告は重要だから、前線に出ることはないわ」
「……っ」
ティンファが何か言おうとしたので、俺は強く睨む。
ビクッと震え、ティンファが黙り込む。
「さて、チーム分けだけど……」
会議は、俺たちを除いた内容で進んだ。
ティンファが不満そうに、アキトは受け入れつつも少し不満そうな顔だ。
ボンバイエが言う。
「よし。明日の早朝、ガガムド山脈に向かって出発する。移動手段はギルドの馬車だ」
会議が終わり、俺たちを除いて全員が会議室から退出。
ティンファが言う。
「うう、わかっていましたけど……やっぱり戦いには参加できないんですね」
「連絡係も立派な仕事だ。それに、今回の一番の目的は、『SSSレートの存在を生で見る』ってことだ。未熟なお前たちじゃ、見ただけで心折れる。戦うなんて無理だ」
「……よし。先生、気持ちを切り替えました。準備をしましょう」
「おう。さあティンファ、準備するぞ」
「はぁい」
さて、いよいよ明日、ガガムド山脈に向けて出発だ。
討伐レートSSSのエンシェントドラゴン……俺が出ることにならないといいけどな。




