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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第三章

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第81話

 冒険者ギルドに、大討伐についていろいろ確認を終えた。

 俺はカフェに入り、情報整理をする。


「大討伐……はあ、マルセリア王国で最後にあったのは十年くらい前かな」


 今回の『エンシェントドラゴン討伐』は、俺の予想した通りだった。

 まず……エンシェントドラゴン討伐は、S級冒険者が数名、タクニキ王国騎士団の部隊長が十数名でチームを組んでの討伐になる。

 出発は十日後。それまで、タクニキ王国周辺に大量発生している魔獣の討伐が行われる。


 騎士団の騎士たちを筆頭に、C級以上の冒険者は討伐に強制参加。それ以下の冒険者は志願制となり、報酬は国庫から支払われる。

 討伐した魔獣の部位などは討伐者の物になる……これはまあ当然か。


 タクニキ王国は、エンシェントドラゴン討伐まで街道などの移動は制限される。流通など最低限の移動は、騎士や冒険者が同行しての移動となる。

 まあ、この情報は予想通り……問題は次だ。


「大討伐で功績を残した冒険者は、エンシェントドラゴン討伐に参加することができる……か」


 つまり、この十日で魔獣討伐でいい成績を残した冒険者は、エンシェントドラゴン討伐に参加可能……冒険者として、これ以上ない功績になる。

 ドラゴン討伐。冒険者にとって憧れの偉業だ。


「うーん……」


 アキト、ティンファには言ってないことがある。

 それは、今の二人の実力だ。


「……この十日で、恐らく相当な戦闘経験が手に入る。実戦で伸びるタイプだとは思っていたけど……」


 正直に言う。今のアキトとティンファは、C級冒険者レベルの強さだ。もしかしたらこの十日で、B級上位かA級レベルの強さになる。

 強くなるのにもっと段階を踏むべきだと思っているが……仕方ないか。


「……さすがに、エンシェントドラゴンはまだ厳しい。いざとなったら……やるしかないか」


 俺はカバンの中にある『変装セット』を意識する。

 年のため持ってきてよかった……『刀』を。


 ◇◇◇◇◇


 宿に戻ると、トーニャが心配そうな顔で出迎えてくれた。


「あ。アルノーさん……ね、聞いたよね。ドラゴンのこと」

「もちろん。ああ……宿屋も大変か?」

「うん。流通が制限されて、食事とかも満足に出せなくなっちゃうかも。でも、一か月分くらいの備蓄はあるから、アルノーさんが滞在している間は大丈夫だよ」

「はは、そんなこと気にしなくていい。それに、これから大量に魔獣狩りが始まる。肉とかならきっと溢れるくらい手に入るぞ」

「あはは。お肉だけじゃ無理だよー」


 トーニャは笑った。

 そして、すぐに不安そうな顔になる。


「あのさ、ティンファとアキトくん……戦いに行くの?」

「ああ。覚悟は決まってるようだしな」

「そっか……アルノーさんも?」

「まあ、二人のお守りが必要だしな」

「そっかあ……ね、気を付けてね。まだ滞在日数残ってるし、いきなりいなくなるとかダメだからね!!」

「はは、わかってるよ」


 最悪……俺がエンシェントドラゴンを狩る。それくらいの覚悟はあった。

 さて、部屋に荷物を置いて、ティンファの家に行くとするか。


 ◇◇◇◇◇


 ティンファの家へ到着。

 店番していたのはショコラだった。


「あれ、お前が店番か?」

「ええ。ところで、もう町中の噂になってるけど……エンシェントドラゴンが出たそうね」


 ショコラは意外と落ち着いて……意外でもないか、元冒険者だし。

 俺は適当に頷き、カウンターへ。


「ああ。ティンファはどうしてる?」

「こっちが聞きたいわよ。あなたと一緒に冒険者ギルドに行ったんじゃないの? 戻って来るなり部屋に籠って……あなたとの別れが寂しくなったのかしら」

「ちゃうちゃう。遺書を書くように言ったんだよ」

「は?」


 俺はショコラに「大討伐に参加する」ことを説明。ショコラは厳しい顔をする。


「本気?」

「……まあな。言ってなかったし、言うつもりなかったけど……今のティンファはもうC級レベルの強さだ。魔獣の大量発生で経験を積めば、十日でA級レベルまで強くなる可能性もある。エンシェントドラゴン討伐に参加できるかもしれない」

「……アルノー、本気なの? そもそも……それを私と、カムドが許すと思っているの?」


 すると、店の奥のドアが開き、タンクトップ姿のカムドが俺の元へ。

 そして、俺の胸倉を掴んで睨みつけた。


「ティンファから聞いた。お前……あの子を大討伐に参加させるだと? 冒険者になって一年どころか、半年も経過していない最下級の冒険者であるあの子を、大討伐に? お前、何考えてやがる!!」


 怒るのは当然。俺はその怒りを全て受け止める。


「あの子の実力なら問題ないと確信した。恐らくカムド、ティンファはお前より強いぞ」

「……それでも、まだ経験が足りねえだろうが!!」

「確かにな。だが、ティンファはメキメキ上達している。大討伐で大量の魔獣を倒してレベルを上げれば、A級レベルの強さを手に入れることができるかもしれない」

「そりゃただの強さだ。経験じゃない。まだあの子には早い!!」


 俺はカムドの手を掴む。

 かなり強い……冒険者を引退して二十年経つ男の力じゃない。こいつ、たぶんずっと鍛え続けているな? 恐らくショコラも。

 だが……俺は現役の冒険者。カムドの腕を掴み、手のツボを指で押すと、痛みで顔をしかめたカムドが手を離す。


「あの子が『お前たちの娘』なら俺も参加させるつもりはなかった。でも、話を聞いてあの子が『冒険者』だったから、俺は参加を認めた……わかるだろ、お前たちなら」

「「…………」」


 カムド、ショコラは黙りこむ……冒険者だからこそ、わかるのだろう。

 

「止めたいなら、ティンファを直接止めろ。それと……ティンファは俺が死なせないさ」

「……ったく、D級のくせによ。だが……なんだろうな、お前が言うと、エンシェントドラゴンだろうが敵じゃねぇように聞こえるぜ」

「……アルノー、あなたを信じるわ」

「俺じゃなくて、ティンファを信じろよ」


 すると、ティンファがドアを開けて滑り込むように俺たちの前へ。


「遺書できた!! って……師匠? あ、おかーさんこれ遺書!! えへへ、よく書けたかな?」

「あのね……そんな明るい声で『遺書』なんて言わないの。まったく……」

「わわ、なになに?」


 ショコラはティンファを優しく抱きしめた。

 カムドも、ティンファの頭をなでなでしている。

 俺は家族の邪魔をしないよう、そっと家を出るのだった。

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