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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第三章

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第79話

 さて、『覚悟』ができて数日後。

 現在、俺は腕組みをしながら、魔獣と対峙するアキトとティンファを眺めていた。

 敵はイノシシ……全長四メートルくらいある。でかいキャンピングカーみたいなサイズのイノシシ。

 名前は『ボアレックスボア』だ。討伐レートはC……まあ、普通の強さ。

 タクニキ王国からちょっと離れたところにある農村からの依頼。畑を荒らすボアレックスボアを討伐して欲しいという依頼を受けてきた。


『ボモオオオオオオオ!!』


 そして現在。生肉を畑の近くに置いて数時間……ボアレックスボアが現れ、二人が戦っている。


「ティンファ、挟み込む!!」

「うん!! こいつ突進はすごいけど、方向転換できないみたい。挟み込んでブッ倒そう!!」


 ちゃんと敵を見て、何ができるかできないか、弱点は……を考えている。

 アキトはもちろん、ティンファも考え、動いている。


「スキル、『連撃突』!!」


 おお、アキトが威嚇して気を引いたところで、接近したティンファが連続で突きを放つ。しかもただ突いてるわけじゃない、硬い骨部分を避けて内臓に的確なダメージを与えるように突き……最後。


「っしゃあ!!」


 ズドン、とスキル『渾身突き』で頭を突き刺した。

 ボアレックスボアは白目をむき、そのまま横に倒れる。


「……うん、死んでるね。さすがティンファ」

「アキトが気を引いてくれたおかげ。ありがとっ」


 パシッとハイタッチ。この二人もいいコンビになったもんだ。

 そして、二人は俺の元へ。


「師匠、どうでしたか?」

「ああ、いい連携だった。まあ、欲を言うなら……」


 俺はボアレックスボアに近づき、動脈部分を剣で斬る。すると、まだ心臓が動いていたので血が勢いよく噴き出した。


「ボアレックスボアは食える。血抜きを含めた攻撃をすれば、のちのち楽になる……まあ、これは覚えなくてもいい。余裕がある時だけな」

「はーい!! えへへ、今日はイノシシ肉ですね」

「だな。けっこうデカいし、イノシシの牙だけもらって、肉は食う分以外は村に寄付しよう」

「牙……先生、何に使うんですか?」

「魔獣の素材はいろんなものに仕えるぞ」


 牙は剣に、骨は防具の素材に、魔獣の種類によっては血や内臓は薬になる。目玉とか珍味で食う奴とかもいるしな。


「師匠、早く解体解体!! お肉お肉!!」

「はいはい。さ、やるぞ」

 

 魔獣の解体も、二人は慣れ始めている。

 俺はナイフで皮を剥ぎながら言う。


「そろそろ、俺の役目も終わりだな」

「え……師匠、それって」

「お前たちはもう、冒険者としてやっていけるくらいの実力はある。あとは二人で協力して依頼をやるのもいいし、一人で新しい仲間を見つけてチームを組むのもいい」

「……チーム」


 アキトはティンファを見た。ティンファもアキトを見たので目が合い、二人はさっと目を反らす……って、何だ今のは。

 とりあえず、俺の役目はそろそろ終わりだろうな。


 ◇◇◇◇◇


 さらに数日後……俺はカムド、ショコラと居酒屋で飲んでいた。


「もう、充分指導したし、俺の出番は終わりだ」


 エールを飲み、焼き鳥を食いながら言う。

 カムドはジョッキを置く。


「なあアルノー、ティンファはどのくらい強くなった?」

「冒険者等級はE級に昇格した。タクニキ王国周辺にいるレートCくらいの魔獣なら、よっぽど油断しない限り負けることはないだろ。以前も言ったけど、ティンファは数年でS級に昇格する才能はある……あとは慢心せず、経験を積んでいけばいいさ」

「なるほどなあ……」


 ショコラはエールを飲み干し、おかわりを注文する。


「アキトくんも同じくらいなの?」

「ああ。ティンファといいコンビだ。まだアキトの方が少し強いな……一緒にチームを組んで戦えるなら最高なんだが、そこまでは共用しない」

「なるほどね……」


 俺は確認する。


「てわけで、俺の役目はそろそろ終わり……依頼完了ってことでいいか?」


 雇い主は、カムドとショコラだ。なので確認はこの二人にする。

 カムドとショコラは顔を見合わせる。


「……なあアルノー。相談なんだが」

「タクニキ王国には残らんぞ」

「まだ何も言ってないけど……」

「悪いな。俺のホームはポータムだ。仕事が終わったら家に帰るさ」

「だよなあ……しゃあーないか。うし、じゃあ依頼完了ってことでいいぜ。でも……ティンファはお前に懐いてるからなあ。ちゃんと別れはしてやってくれ」

「おう。じゃあ明日、最後の指導をして終わりにするか」

「……寂しくなるわねぇ」


 ショコラがジョッキを向けてきたので、俺は自分のジョッキを合わせる。


「まあ、これない距離じゃないしな。タクニキ王国も悪くない……今度は観光で来るかもな」

「お、そりゃいいな。今度はグレースも連れて来い。同期で飲み会とか、楽しさしかねぇよ」

「はは、仕事大好き人間のあいつが来るわけないだろ?」

「あら、何を言ってるのかしら。グレースなら来てくれるわよ?」


 この日、俺は同期の二人と楽しい酒を飲むのだった。

 

 ◇◇◇◇◇


 翌日、冒険者ギルド前で、アキトとティンファが待っていた。

 俺を見て元気に挨拶。今日も笑顔で元気いっぱいだ。

 ギルドに入り、さっそく俺は今日の予定を説明する。


「さて、今日が最後の指導だ。自分たちで依頼を受けて、達成して、報酬をもらうまで一連の流れを、俺に聞くことなく達成しろ。それができたらもう俺は必要ない」

「そんな……師匠」

「さあ、卒業試験だ。さっそく……ん?」


 すると、冒険者ギルドに大勢の騎士が入って来た。

 アキトとティンファが驚く。他にも、ギルド内にいる若い冒険者は驚いていた。

 ベテラン勢……俺を含め、事情を察した冒険者は落ち着いている。

 そして、騎士の一人が言う。


「冒険者諸君、タクニキ王国より緊急の依頼だ!! C級以上の冒険者は強制参加、D級以下は自由参加となる!!」


 やっぱそうか……国の依頼だ。

 C級以上は強制参加の依頼……これがあるから、俺はD級から等級を上げないのだ。


「ガガムド山脈に、討伐レートSSS『エンシェントドラゴン』が現れた。ドラゴンの影響で魔獣が活性化し、タクニキ王国周辺の魔獣が増えている。A級以上の冒険者は王国騎士とガガムド山脈への討伐部隊に参加、B級以下は王国周辺の魔獣討伐へ参加せよ!!」


 ギルド内がざわめく。

 騎士の一人が、依頼掲示板にデカい依頼書を張る。冒険者たちはその依頼書を確認……俺たちは離れた場所でその光景を眺めていた。


「あの、師匠……これって」

「そのまんま。国の依頼だよ。C級以上の冒険者は絶対参加、それ以下の冒険者は自由参加だ。まあ……国の危機だけど、王国騎士が主導なら問題ないだろ」


 エンシェントドラゴンだっけ……討伐レートSSSか。若いころ一度だけ狩ったっけ。なつかしいなあ。


「……先生。ボク」

「やめとけ」


 俺はアキトが何かを言おうとする前に止めた。


「お前にはまだ早い」

「……でも」

「師匠、あたし」

「お前もだ」

「「…………」」


 こういう『大討伐』に参加するには、少なくとも俺と同じD級に昇格してからだ。経験を多少積んだとはいえ、二人はまだ新人……参加義務はないし、わざわざ危険を冒す必要はない。


「……『大討伐』が起きたら、全ての依頼は後回しにされる。仕方ない、今日は休みだ。装備の点検とかして、家で大人しくしていろ」

「「…………」」


 俺はそう言ったが……アキト、ティンファの目が決意に満ちているのを見逃さなかった。


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