第71話
タクニキ王国にはデカい闘技場があり、そこで毎日何らかの戦いが繰り広げられている……あんま興味ないからどんな戦いなのかわからん。
でも、年に一度開催される『闘技大会』は、国内で一番デカいイベントで、世界中から猛者が集まってくるとかなんとか。
現在、俺はカムド、ショコラの二人と闘技場の控室にいた。控室といっても学校の体育館みたいな広さで、周りには多くの選手がいる。
「うー、緊張してきた。おとーさん、おかーさん、ちゃんと見ててね、あたし優勝するからさ!!」
「ああ、頑張れよ!!」
「はあ……心配だわ」
ショコラはずっと心配しているので、俺は改めて言う。
「ショコラ。ティンファが参加する部門は非殺傷部門だから大丈夫だって。剣は刃が潰してあるし、槍の切っ先も丸めてある。この部門はメイントーナメントの脇役みたいなもんだ」
つまり、前座みたいなもんだ。
この非殺傷部門に参加するのは、ティンファみたいに冒険者になったばかりの子供とか……まあ、新人潰しみたいなヤツが参加することもあるが。
それに、怪我をしても『治療士』のジョブ持ちが医務室に何人ンか控えているから、怪我をしても大丈夫だ。
ティンファは俺を見て言う。
「師匠、あたし優勝できますか?」
「あー、わからん。でもまあ、頑張れ」
「なんか適当―……でも、がんばります!!」
ちなみに、外では開会式が開催されている。
ちなみに、会場は二か所ある。メイン会場となるリング、ティンファが出場するサブリングだ。メインリングの半分以下の大きさだが、それでもかなりデカい。
俺とカムドとショコラは観客席へ移動……選手の親族はけっこういい席をもらえるのありがたいぜ。
ちなみに、フェニアたちはパン屋でお留守番。
「おいアルノー……そろそろ教えろよ。なんでティンファをこの大会に?」
カムドが言う。
ショコラも頷いた。
「まさか、あの子……本当に優勝できるの? だから参加を?」
「いや? 違うぞ」
「「……え」」
俺は椅子に寄りかかり、空を見上げる。
今日は快晴。雲一つない最高の天気……実にいいね。
「正直に、真面目に、本気で言う。ティンファは間違いなく天才だ。『職業適応者』であり、槍の才能もズバ抜けている。恐らく、五年後くらいにはタクニキ王国では敵なしの強さになるだろうな」
「おいおいおいベタ褒めだな……」
はっきり言う。才能だけなら、『極星五傑』より上だ。
昨日、たった一日だけど……軽く摸擬戦をしたが、驚いた。
「槍士の初期スキルは、もう全部マスターした」
「……嘘だろ?」
「嘘じゃない。俺が軽く型を教えて、それを摸倣したらマスターした」
「待って、槍の初期スキルって確か十三個あったわよね。一つのスキルを習得するのに、型をなぞって繰り返すだけでも時間が必要なんじゃ……」
「でも、マジだ。しかも『槍聖』だから、中級、上級と全てのスキルを覚えることができる。才能だな……槍を使うために生まれて来たような子だ」
ベタ褒めだが、マジなのでしょうがない。
「だから、今のうちに覚えさせておこうと思ってな」
俺がそう言うと、二人は察したのか黙り込む。
元冒険者なだけあって、こういうことはよくわかっている。
「敗北。勝ちしかしらない冒険者よりも、負けを知って上を目指す冒険者の方がより成長できる。それに……」
今しかない。
魔獣との戦いで負けを覚えさせるのは命懸けになる。対人戦で敗北を覚えさせるのは今しかない……なぜなら、この先ティンファが負けることがないかもしれないから。
「さっき、控え室にいる参加者の中で一人いた。ティンファより格上の相手」
「何? いたのか?」
「ああ。多分同い年くらいかな……男の子だ」
というか、タクニキ王国ってどうなってんだ……ティンファだけじゃなく、才能の塊みたいな子がもう一人いた。
喋っていて気付かなかったが……もう第一試合が始まる。
「お、あの子だ」
リングに上がったのは、どこか緊張したような少年だった。
腕、身体、足と革装備に身を包んでいる。装備の汚れ具合からして……ずっと冒険者をやっていた汚れというよりは、短い期間で過酷なトレーニングをして汚れたって感じだ
『さあ、非殺傷部門第一試合、大会二度目の参加者、十六歳の新人冒険者、アキト!! なんとレジェンドジョブ『双剣聖』であり、さらに『職業適応者』という奇跡!! 去年は一回戦で敗北しましたが、今回はどうなるでしょうか』
おいおいおい、けっこう強そうなと思ったけど……この子も『職業適応者』だと? タクニキ王国マジでどうなってんだ。
「おいアルノー、レジェンドジョブで、『職業適応者』って……ティンファと同じじゃねぇか」
「だな。『双剣聖』……ふむ」
さて、どうなることやら……やばいな、ちょっとワクワクしてきたぞ。




