第7話
飯を食った後、俺は三人に言う。
「まず、アルテミウスは前衛にしかなれない。そしてエリオは『弓士』だから中衛から後衛。ユウナは『魔法師』だから中衛から後衛、サポートもできる」
「「「なるほど」」」
息ぴったりな返しだ。
さらに続けて言う。
「そもそも、『弓士』も『魔法師』も、前衛がいないと戦えない。鍛えるなら、チーム戦だ。それでもいいなら、俺が鍛えてやる」
「やります!! 強くなれるなら何でもいいぜ!!」
「わ、わたしは……エリオがいいなら」
「私も!! 仲間と戦えるなんて嬉しい!! えへへ……エリオくん、ユウナちゃん、よろしくね!!」
アルテミウスがニコッと微笑むと、エリオが顔を赤くして「あ、はい」と照れていた。ユウナが少しムスッとしてる気もするな……修羅場とか御免だぞ?
「よし。じゃあ今日は解散。エリオ、ユウナの宿は?」
「路地裏にある安宿です。あまりお金なくて……」
「へへ、今にバンバン稼いで、美味いもんたくさん食べて、いい宿に泊まるんだ!!」
路地裏の安宿か……治安、あまりよくないんだよな。
すると、アルテミウスが言う。
「あ、なら……私の宿、来る? お部屋も空き部屋あるし、一人じゃ広いから」
「「え?」」
「一緒にチームを組むんだし、共同生活もありですよね、師匠!!」
「あー、まあな」
そういや、アルテミウスって貴族の子だから金はけっこう持ってるんだった。泊ってる宿がどこか聞いたけど、けっこういい宿だったし。
家を出たと言っても、無一文で放り出されるわけじゃなかったみたいだしな。
食後、三人は安宿へ荷物を取りに行き、そのままアルテミウスの宿へ。
エリオが緊張しているようだった……が、十二歳はアルテミウスにとって弟みたいなものなのか、全く意識していないようだった。
そして、三人と別れたあと、俺は。
「さて……金、まだあったかな」
三人を鍛えるにあたって、必要なモンができちまったな。
まずはシモンの店に行きますか。
◇◇◇◇◇◇
翌日、冒険者ギルド前にて。
「おはようございます、師匠!!」
「お、おはようございます」
「おう、アルテミウスにユウナ。と……どうした、エリオ」
「…………」
顔が赤く、なぜか俯いていた。
ユウナを見ると、どこかムスッとして言う。
「師匠、エリオは気にしないでいいです。さっそく修行をお願いします!!」
「え、ああ……うん」
すると、アルテミウスが言う。
「私がシャワー浴びてるところに間違えて来ちゃってから、様子がおかしくて……大丈夫なんでしょうかね、師匠」
「原因それだろうが!!」
つまり、アルテミウスの裸を見ちまったのかい……まあ、俺からすれば子供だけど、十二歳にとって十五歳の裸は刺激強かったようだ。
俺は咳払いをして、エリオに言う。
「エリオ、ほれ」
「え、これって……」
「ゴブリンが捨てたボロ弓なんて使えないだろ。とりあえず、十二歳の子が一般的に使う狩猟用の弓を買ってきた。矢もある。今日からこれ使え」
「おおおおおおおっ!! すっげえええええ!!」
エリオは興奮し、矢を構える。
そして、エリオとユウナに革製の胸当て、帽子、脛当てなどの軽装備を渡した。
「まず、装備だ。命を守る防具、これは絶対に装備すること。人間には弱点が多い。ほんの一センチの穴が胴体に空いただけで、命の危機に陥るからな。命を守る防具は絶対に大事……よく覚えておけ」
「「はい!!」」
「あの師匠、私は?」
「予算オーバーでな。お前は自分で稼いで買え」
「えぇぇ~」
「お前な、その武器いくらしたと思ってんだ」
エリオ、ユウナは防具を装備。
「まずエリオは『弓士』の初級スキル、『鷹の目』の習得を目標にする。ユウナは『魔法師』の初級スキル、四属性魔法の習得からだ」
「師匠、詳しいっすねー」
「師匠って『剣士』でしたっけ。いろんなこと知ってるんですね」
エリオ、アルテミウスが感心していた。
まあ俺、『弓士』も『魔法師』も持ってるからな……とは言えないのだった。
◇◇◇◇◇◇
三人でチームを組ませ、初めてのチーム戦となったある日。
俺は、町の入口で三人を前に言う。
「いいか、決して魔獣を深追いしないこと、チームでの役割を認識すること、たとえゴブリン一匹だろうと命を奪い、奪われる敵だと忘れないこと」
「「「はい!!」」」
これからしばらく、俺から離れて三人で冒険者生活を開始する。
依頼を受け、チームで戦い、報酬を分配したり、装備を整えたり……学ぶべきことはいくらでもある。知恵は授けたので、あとは実際にやって覚えることだ。
俺の助けはない。まあ、困ったら声かけろとは言ってある。
アルテミウスは言う。
「師匠、これまでずっと師匠が一緒でしたけど……今日からチーム三人での冒険なんですね。なんだかワクワクします」
「そうかそうか。いいかアルテミウス、お前がリーダーなんだから、二人を頼むぞ」
「はい!! えへへ……私、初めて冒険者として歩き出したような、そんな気がします。これも師匠のおかげです!! ありがとうございます!!」
「──……おう」
アルテミウスたちは「行ってきます!!」と言って歩き出した。
その背中を見送りながら、俺は自分の中に芽生えた新しい『力』を確認する。
ジョブ習得──『連装士』。
「はは……手に入ってるわ」
俺のジョブ『自由人』……ジョブを手に入れ、登録する方法。
それは、『俺の持っていないジョブを持つ人の願いを叶える』ことだ。
その人が持つ真の願いを叶えた時、俺の『自由人』に新たなジョブは登録される。
俺が持てるジョブの最大数は十二個。また、新たなジョブが登録された。
『連装士』……俺の『自由人』の下位互換、というか超劣化版みたいなジョブだ。必要ないし、使うこともないだろう。
「……まあ、まだジョブストックに空きはあるしな」
アルテミウスを指導した証……なんて、勲章とは違うけど、しばらくはこのままでもいいかなと思い、このままにすることにした。
「さぁぁ~て、しばらくあいつらに付きっきりだったし、俺もそろそろ依頼を受けて稼がないと……ん?」
ふと、視線を感じたような気がした。
周りを見渡すが……うん、気のせいか。
『…………』




