第6話
アルテミウスが得た初級スキルの三つは、『ダンサー』の初級スキルである『ダンシングステップ』と、『魔法師』の初級スキルである『エンチャント・エア』と『エンチャント・サンダー』だ。
戦法は、両手両足に仕込んだ特製のブレードによる接近戦。ダンスのステップで敵を翻弄し、風の力で舞い、雷の力で一撃必殺を叩きこむ……つまりは、接近戦のスペシャリストとなる戦法だ。
視力がいいので、接近戦で敵の攻撃を躱すこともできる。
風を操ることができれば、動きを補佐することもできる。雷を操ることができれば攻撃力のアップに繋がる。
近接戦闘に特化させた初級スキルの組み合わせ……それが俺の考えた戦法だ。
「ううう、痛いです……師匠、たんこぶできてませんか?」
「大丈夫大丈夫。それより、雷はともかく、風の使い方が全然ダメだな。『エンチャント・エア』は武器に風属性を付与する魔法だ。両手両足がお前の武器なら、風の力で移動の補佐をしたり、攻撃力を上げることもできるはずだぞ」
「ううう、未熟です」
「その通り。ま、レベルを上げていけば使いこなせるさ」
俺は、ホブゴブリンやゴブリンの死体を見て言う。
「これで、お前はもう冒険者だな」
「……ッ!! ううう、師匠おおおおおおおっ!!」
「うおおおお!? おま、抱き着くなっての!!」
俺はアルテミウスを引き剥がす……すると、少年少女がジッと見ていた。
「おっと。おいアルテミウス、離れてろ。さて……きみたち二人は新人……いや、登録したばかりだな?」
「「……えっと」」
冒険者登録は、十二歳からできる。
普通は、そのままどこかの冒険者チームに加入して下積みなどをするか、アルテミウスのように冒険者ギルドが開催する初心者講習などに出るんだが。
「……見たところ、きみは『弓士』で、そっちの女の子は『魔法師』か」
「「…………」」
「組み合わせとしては……正直、イマイチだな。前衛がいない。どういう経緯でここに二人で?」
「あの!!」
と、少年がいきなりデカい声を出した。
驚いていると、少年が頭を下げる。
「おれを、弟子にしてください!!」
「…………へ?」
えーと……もしかして、面倒くさいことになる?
◇◇◇◇◇◇
夕方も近いので、町に戻って食事をすることにした。
適当に料理を注文……年長者なので「ここは俺の奢りだ」とカッコつける。少年少女は「ありがとうございます!!」と叫び、肉を中心に料理をジャンジャン頼んだ。
がっつくように食べ、アルテミウスも負けじと食べる……や、やばい、金足りるかな。
「あ、あ~……ところで、きみたちの名前は?」
「おれ、エリオっす」
「わたし、幼馴染のユウナです。一昨日から、エリオと二人で冒険者をやってます」
「お、一昨日?」
「はい。故郷から出てきたのか、四日前です」
なんつうスピード感……どんな事情があるんだよ。
アルテミウスはユウナに聞く。
「あの、ご家族は?」
「……その」
「おれ、家を追い出されたんです」
言いにくそうにしているユウナだったが、エリオは骨付き肉を食べながら言う。
「おれのジョブは『弓士』で、冒険者向けのジョブだったから。口減らしのために、十二歳になったから家を出ろって言われて、追い出されたんです」
「……マジか」
「ええ。弓なんか使ったことないし、この弓も、ゴブリンが捨てた弓ですしね。矢は適当な枝を拾って、石を結んで矢っぽくしてます」
オーマイゴッド……死にに行くようなモンだろうが。てか口減らしってマジか。
ユウナを見ると、俯いていた。
「こいつ、『魔法師』で村に常駐している冒険者チームに誘われてんのに、おれにくっついて来たんですよ。ったく……へんなやつ」
「あうう……だって」
この野郎……どう見てもユウナはお前にホの字だろうが!! って叫びたくなった。まあ俺はそういうの言わないタイプなので気にせずに。
そして、最後の肉を飲み込んだエリオが言う。
「おっさん、じゃなくて師匠!! あんた、すっげえ強い冒険者なんだろ? おれを鍛えてくれよ!!」
「俺、D級冒険者だぞ」
「べつにいいよ!! おれ、弓のことなんもわかんねーし!! 教えてくれ!!」
「あ~……」
キラキラした目を向けるエリオ。ユウナも俺をじーっと見てるし。
すると、アルテミウスが言う。
「師匠!! 鍛えてあげましょう!! 私を鍛えてくれたみたいに!!」
「お前な、簡単に……」
と、アルテミウスを見た。
そして、エリオに、ユウナ。
「…………」
「師匠?」
「師匠、どうしたんだ?」
「え、エリオ……まだ師匠じゃないよ」
エリオは弓士、ユウナは魔法師、そしてアルテミウスは近接戦闘向けの連装士。
「あ、いいなこの組み合わせ」
「「「?」」」
「よし決めた。エリオ、ユウナ、二人は俺が鍛えてやる。そしてアルテミウス、お前は姉弟子として、二人に冒険者のイロハを叩きこめ」
「よっしゃー!! ありがとう師匠!!」
「あ、ありがとうございます」
「姉弟子……なんだかいい響きです!! よーし、お任せください!!」
俺はジョッキを掲げ、三人に言う。
「ここに、チーム結成だ!! アルテミウス、エリオ、ユウナの冒険者チームに乾杯!!」
「「「乾杯っ!! ……って、チーム?」」」
三人の声が重なり、俺はジョッキのエールを飲み干すのだった。




