第5話
さて、アルテミウスの指導から一か月が経過。
指導方針、初級スキルの習得も決まり、俺は二十年の冒険者生活で得た伝手を使って、アルテミウスの初級スキル習得に必要なジョブを持つ人を呼び、初級スキルを習得させた。
ちなみに、スキルの習得法は『習得したいスキルを視認し、指導を受ける』だ。
金かかるかなーと思ったけど、アルテミウスが『連装士』とわかると憐れむような視線を向け、スキルを習得させてくれた。
アルテミウスを見たが……アルテミウスは目を輝かせていた。
「師匠!! 初級スキル、ゲットできました!! さあさあ、新しい戦法を試したいです!!」
「……お前ってやつは」
もう、憐れみを受けてメソメソするアルテミウスじゃない。
俺はアルテミウスの頭を撫でて言う。
「その前に、まずは武器だ。ちゃんと、お前の戦法に対応した武器じゃないとな」
「あ、はい。武器……買うんですか?」
「うんにゃ。オーダーメイドしてある。行くぞ」
向かったのはシモンの店。
頼めば何でも作ってくれるシモンは笑顔で迎えてくれた。
「おっす。例のモン、できてるか?」
「おう。ったく、苦労したけどできたぜ。お……そっちのお嬢さんかい?」
「そうだ。こいつ専用の、俺が考えた最強の武器を装備して戦う、未来のS級冒険者だ」
「え、え? あの、師匠?」
困惑するアルテミウス。
まあ、説明はあとでいい。シモンに頼むと、さっそく木箱をカウンターに置く。
箱を開けると、そこには『装備一式』が入っていた。
「わあ……」
「こいつが、お前専用の武器だ。デザインとアイデアは俺な」
「し、師匠……でも、お金」
「気にすんな。俺のアイデアで初級スキルを覚えたんだし、俺が専用の武器を用意するのも当然だろ」
「し、師匠……あ、ありがとうございますぅぅぅぅ~!!」
「うおおおお!?」
なんと、アルテミウスが抱きついてきた。
びっくりした。こいつ、ガキなのにいい匂い……じゃなくて。
「うわ、アルノーさん……」
「げっ、ミア。いつのまに……じゃなくて、こっち見んな。あっち行け!!」
いつの間にか、冒険者後輩のミアがジト目で見ていた。
俺はアルテミウスを引き剥がし、頭をポンポン撫でる。
「そ、装備。装備しろ。んで、さっそく試しに行くぞ!! まだ初級スキル覚えたばかりで、実戦経験はないんだからな」
「は、はいぃぃ!! よおおおおおっし!!」
アルテミウスは、さっそく武具を装備。
俺はややドキドキしながら、汗を拭うのだった。
◇◇◇◇◇◇
さて、向かったのは近くの森。俺がゴブリン退治をした森だった。
ゴブリンはいつの間にか湧いて出る。周囲からいくつもゴブリンの気配がする。
「さて、アルテミウス。お前が習得した初級スキルは三つ。いいか、一つを使うんじゃなくて、三つ全てを使って、一つの戦い方になる。つまり……お前は、その戦い方を極める冒険者になるんだ」
「はい!!」
「大丈夫。お前はセンスもあるし、眼もいいし、器用さもある。俺の教え通りにやればきっといけ……」
俺は言葉を切り、バッと振り向いた。
近くの藪がガサガサ動き、怪我をした少年、少女が転がるように……いや、転がって来た。
「たた、たすけ」
「うわあああああん!!」
若い。アルテミウスよりも年下だ。
すると、近くの藪からゴブリンが飛び出してきた。俺は飛び出してきたゴブリンを蹴り飛ばし、子供二人の襟を掴んで後退する。
アルテミウスは驚いていたが、すぐに冒険者の顔となった……この一か月、基礎トレーニングがメイン、俺と体術の訓練をしていたおかげなのか、度胸も付いてる。
俺は目の前にいるゴブリンを見た。
「……アルテミウス。実戦だ」
「はい!!」
アルテミウスは前に出た。
俺は子供を降ろすと、少年が言う。
「え、え、ひ、一人で? おっさん、まだ奥にデカいのが」
「た、助けを呼ばないと」
女の子も心配する。
だが、俺は二人の頭をポンと撫でて言う。
「まあ見ておけ。この戦い、俺の弟子、『連装士』のデビュー戦なんだ」
「れ、『連装士』って……不遇ジョブじゃん!!」
少年が言う。子供でもそう思っているんだろう。
少女は、不安そうに見ていた。まあ……いざとなれば俺もやる。
「いきます、見ててください師匠!!」
アルテミウスは、口から下を覆うマスクを着け、マントをなびかせる。
そして、両手両足に装備した『籠手』と『レガース』を見せつけるように構え、ゴブリンに向かって行く。
「え、剣士? 闘士?」
「ま、魔法師とか?」
「違う違う」
「でも、連装士って、初級スキルを三つしか覚えないんじゃ……剣士とか、斧士とか、強いスキルを覚えるのはフツーだろ、あの人」
そう……そこが落とし穴というか、ミソなんだよ。
三つの初級スキルしか覚えないから、強いジョブの初級スキルを三つ覚える。それが当たり前になっている。だから俺はその考え方を捨てた。
あ、ちなみにマスクは俺の趣味で意味はない。
『ギイイイイイッ!!』
藪からゴブリンが数匹飛び出してきた。
数は三体……もともといた一体を合わせて、合計四体。
だが、アルテミウスは焦らない。
多対一は、俺が想定していた。だからそのための訓練もした。
「スキル──『ダンシングステップ』」
「「えっ!?」」
驚く少年少女。
なんとアルテミウスは踊り出した。正確にはステップを踏んだ。
ひとつめのスキルは、『ダンサー』の初級スキルである『ダンシングステップ』だ。効果は見ての通り、踊るようなステップを踏める。
これを戦闘に応用すると、細かいリズムを刻める。つまり……?
『『ギギャアアア!!』』
『『ギャウギャウ!!』』
ゴブリン四体の棍棒による乱撃を、アルテミウスは近距離で、細かいステップを踏みながら完全に回避していた。
少年少女が唖然とする。
「す、っげえ……」
「綺麗……」
そして、アルテミウスは両手、両足のスイッチを起動させると……籠手、グリーブから『刃』が飛び出した。
そのまま、踊るように手足を振り、ゴブリンたちの喉を正確に切り裂く。
ゴブリンたちは出血し、そのまま倒れた。
同時に……藪から別のゴブリンが二対、飛び出してきた。
「ホブゴブリンか。アルテミウス、できるな?」
「はい……っ」
やや疲労がある……そりゃそうか。初めて初級スキルを使用しての戦いだしな。いちおう、ダンスしながら戦うことを想定していたから、体術なんかも叩きこんだけど。
『ゴオオオオオ!!』
「ッ!!」
ホブゴブリンの棍棒だ。丸太みたいなサイズの棍棒を躱し──アルテミウスは動く。
「スキル発動、『エンチャント・エア』」
二つ目の初級スキル……それは、『魔法師』から得た風属性だ。『エンチャント・エア』はその名の通り、武器に『風属性』を付与する。
剣士や斧士の武器や、弓士の矢なんかに風を付与するのが本来の使い方だが、アルテミウスの武器は四肢。両手両足に風を付与し、推進力に……。
「あわわわわっ!?」
やっぱいきなりはムリか。
両手両足に風を纏わせたはいいが、操作が難しいのか空中でバタバタしている。器用だし、風のコントロールもできる……と思ったけど、ぶっつけ本番はムリだったようだ。
「アルテミウス、三つ目!!」
「は、はいぃぃぃっ!!」
風を解除、アルテミウスは着地。
ホブゴブリンの棍棒が振り下ろされ、アルテミウスは横っ飛びで回避。
そして、アルテミウスは目をカッと見開いた。
「スキル発動、『エンチャント・サンダー』!!」
紫電が爆ぜた。
帯電し自らが『雷』となり、急接近しての一撃。
アルテミウスの斬撃は、ホブゴブリンの首を両断した。
「あぶげっ!?」
だが、速度を調整できず、木に激突……そのまま目を回した。
ホブゴブリンは残り一体。アルテミウスは目を回している。
「まあ、上出来だ」
俺は剣を抜き、残り一体のホブゴブリンを討伐するのだった。




