第66話
全ての手続きを終え、俺とティンファは宿屋へ。
「あれ、師匠。ここって」
「手続き終わったし、昼は俺がご馳走する。事前に頼んでおいたから遠慮なく食え」
宿屋に入ると、トーニャが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませー!! おにーさん、ティンファ、お席に案内するね!!」
「やっほ、トーニャ。久しぶりにおじさんのごはん食べれる~」
「ふふ、今日はあんたの好きなものいっぱいあるから、たくさん食べてね」
席に座ると、お昼が運ばれてくる。
すごいな……ステーキがメイン、他にも魚料理や野菜料理がいっぱいある。パンもバスケットいっぱいに入ってるし、一人じゃ絶対に食いきれない量だ。
さすがにサービスしすぎでは……と思ったが。
「ティンファ、冒険者になれたの?」
「うん。さっき登録してきた。ふふん、これからはF級冒険者ティンファとして活躍するからね!!」
「うんうん。お金稼いで、うちでいっぱいご飯食べてね。今回はサービスするからさ」
「ありがと!!」
どうやら、今後はウチでお昼食べてね……っていう営業のためでもあるようだ。まあ、俺としては腹いっぱい食えるし別にいい。
さっそく食べる……うっま、このステーキうっま。
「師匠、もぎゅもぎゅ……午後は何をするんですか? 午前中はけっこうお勉強の時間っぽかったですけど」
「勉強というか、手続きだな。午後はお前の練習用武器を買いにいくぞ」
「武器!! って……練習用?」
「槍といっても種類が豊富にある。お前のジョブは『槍聖』で、全ての槍を使えて、全ての槍スキルを会得できるけど、やっぱりお前に合った、使いやすい槍ってのが一番だ。いくつか練習用に買って試す」
「はい!! えへへ、武器……ほんとに冒険者っぽい」
ティンファはニコニコしながらパンを頬張る……このパン、カムドの家のパンだよな。
それから、お腹いっぱい食べて満足し、俺たちは武器屋へ向かうのだった。
◇◇◇◇◇
武器屋へ到着した。
闘技場があり、闘技大会が開催されるくらいの国だから、武器屋や防具屋などの店の数は二百軒を超えるとカムドから聞いた。
なので、王都の中央にある、有名な武具店から回ることにした。
「あ、あの師匠……お金、あんまりないんですけど」
「心配すんな。カムドとショコラからもらってる」
まあ、俺も多少は出すけどな。
俺たちの入った店は、王都の中央にある有名店だけあってかなりデカい。武器もコーナーごとに分かれている。
ティンファは、テーマパークに来た子供みたいにはしゃいでいた。
「すっごーい!! 師匠師匠、初めて入りましたけどすごいですね!!」
「はいはい落ち着け。槍は……こっちは」
槍のコーナーへ。
壁には高級そうな槍が何本も陳列されており、ケースに入った物もある。
それらは無視し、俺は種類ごとに樽に差してある槍を何本か選ぶ。
「まず、短槍」
「わ、短い」
「ああ。持ってみろ」
一メートルもない短い槍だ。ティンファは柄を持ち、シュッと軽く突く。
「これ、いいですね。軽いし、動きやすいかも」
「よし、じゃあ買っておくか。次は長槍」
二メートル以上ある槍を渡し、ティンファは軽く突き、くるっと回してビシッと構える。
「ちょっと重いけど、いい威力が出そうな感じ」
「じゃあこれも。あとは、先端部かな……十文字槍とか、ナギナタとか、突きに特化させるか、斬撃もできるようにするか……お、取り換え式の槍もある。これを買って試してみるか」
「わくわく……」
ティンファは目を輝かせ、俺が持つ槍をジッと見ていた。
まあ、練習用なので安いし、質もあまりよくない。でも、ティンファがどの槍が一番使いやすく、手に馴染むかを調べるくらいなら問題ない。
会計を済ませ、槍は全て布に包んでもらい、店を出た。
「よし、次は防具だ」
「防具? おかーさんから貰った胸当てありますけど」
「ダメ。お前に合ったサイズの防具を買わないとな。胸当てといっても、サイズが合わないと苦しいし、ムレて臭くなることもある」
「確かに……おかーさんの胸当て、少しキツイかも」
近くの防具屋へ入る。
まず胸当て。そして槍を背負えるようアタッチメント加工をしてもらい、槍を持つ手を保護するための籠手も買う。
「籠手もですか?」
「ああ。槍は基本、両手で持つ武器だ。片手を怪我するだけで使えなくなるか、スキルの精度が落ちることもよくある。だから、腕は特に守らないとな」
「なるほど……」
すると、店員にティンファが呼ばれた。どうやら胸のサイズを測り、専用の胸当てを作るようだ。
シャツだけになり、メジャーで胸周りを測っているけど……最近の子供って発育いいのな。
すると店員が俺を見て言う。
「あの、できれば男性の方は……」
「ん? ああ、そっか。すまんなティンファ」
「何がです?」
「あーいや、とにかくあとでな」
どうやらティンファ、胸のサイズとか見られたり聞かれたりしても気にしないタイプのようだ。俺の前で普通に上着とか脱いでたし、俺も子供に興味ないから気にしてなかったけど。
サイズを測り終えると、データを工房へ。そして、サイズに合わせた胸当て、籠手を作るようだ。
半日ほどで完成とのことなので、支払いだけして明日取りに来ることにした。
防具屋を出て、次に向かったのは。
「さて、冒険者登録もした、必要な手続きもした、練習用の武器、防具も手に入れた……その次は何をする?」
「えーと……依頼を受ける?」
「ちがーう。まだ冒険者活動はしないぞ」
「えとえと……あ、道具を買う?」
「まあ正解。次は、冒険者に必要なアイテムを買う。寝袋とか、ナイフとか、必要なモノはけっこうあるんだ」
「わーお……本当に冒険者っぽいですね」
「ライセンスはあるから、お前はもう冒険者だぞ」
「はい!! えへへー」
向かったのは、冒険者専用の道具屋だ。
王都の中央は本当にいろいろ揃っている。最初の武器屋から道具屋までの距離、百メートルも離れていない。
道具屋に入り、さっそく必要なモノを買う。
「まずはカバン」
「はい!! このピンクのがいいです!!」
「待て待て。色だけでいきなり決めるな。素材を見て、頑丈で持ち運びしやすいやつだ」
「じゃあこっちの赤いやつ」
「どれ……悪くないな。さて、ここに何を入れる?」
「えーと……野営に必要なのは寝袋?」
「正解。あとはタープに火起こしの着火器具、簡単な調理器具、あとはナイフだ」
「ナイフ……」
「ナイフは重要だぞ。魔獣の解体でも使うし、食材を斬る包丁にもなるし、腰に差しておけばいざという時の武器にもなる」
「おおおー」
ナイフのコーナーがあったので向かい、陳列してあるナイフを見る。
「おすすめは、ミスリル製のナイフだな。頑丈だし、鉄と違って錆びない。一本あれば二十年はもつ」
「なんで二十年?」
「そりゃ、俺が使ってるナイフ、ミスリル製でもう二十年使ってるからな」
「なるほどー、じゃあ師匠のと同じのにする!!」
ただし、ミスリル製は高い……まあ、ここは俺が出すか。
ベルトに通せる専用のケースも買い、ティンファはナイフを腰に差す。
「師匠は胸にナイフを差してますね……」
「まあ、抜きやすいからな」
「いいですね。胸当てできたらあたしも真似しよーっと」
俺は革鎧の左胸に、ナイフ用のスロットがある。わざわざ改造したのだが……どうやらティンファも真似したいようだ。
まあ、それくらいなら俺でも改造できるし、やってやるか。
必要なモノを全て買い、カバンに入れてティンファは背負う。
「よし、これで冒険者の最低限必要なモノは揃った。あとは使ってみて足りなかったり、こういうのがあった方がいいなって思ったら自分で買っていろいろ試してみるといい」
「はい!!」
「使い方は……うん、胸当てが明日できるし、明日やるか。明日は野営の仕方と、槍の使い方を解説していくぞ」
「はい!! よーし……あれ、今日は?」
「今日はここまで。よし、帰るか」
ちなみに、まだ夕方前。
ティンファは「これから槍の訓練」と考えていたのか、ちょっとガッカリしていた。
「こんなにユルいのは今のうち。方針が固まったら、本格的に始めるからな……だから、今のうちにダラけておけ」
「はぁい。えへへ、じゃあ師匠……お散歩しませんか? 師匠、この町のことあんまり知らないですよね? あたしとデートしましょう」
「……まあ、いいか。じゃあ案内してもらおうかね」
とりあえず、今日の残った時間は、ティンファとデートしますかね。




