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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第三章

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第61話

 それから、のんびりとタクニキ王国へ向かった。

 乗合馬車に乗ると、若い冒険者たちが「大会……」とか「優勝……」とか興奮しながら喋っているのを眺めたり、一緒に乗ったおばあちゃんから貰ったリンゴを丸かじりしたり、川沿いでの休憩時に昼寝したりと、特にトラブルもなく進んだ。

 それからまあ、の~~~んびり進み……あっという間に時間が経過。

 同乗の若い冒険者たちが興奮していたので外を見ると、どうやら見えて来たようだ。


「おー……」


 タクニキ王国。

 マルセリア王国よりは小さいが、この国自慢の巨大な『闘技場』がよく見えた。

 円形の……まあ、コロッセオみたいな建物だ。あそこで毎日、何かしらのバトル大会が開催されているらしい。

 そして、年に一度、世界中から猛者が集まってデカい大会があるとか。

 ぶっちゃけ、興味ないのでよくわからん……目立たず、平穏な冒険者生活を送る俺にとって、スリルとか戦いとかあまり必要ないんだよな。

 俺は欠伸をして、窓から視線を外した。


 ◇◇◇◇◇


 タクニキ王国。王都タックへ到着した。

 馬車は王都の中央で停車……そこで降り、俺は大きく伸びをする。

 若い冒険者たちは、降りるなりダッシュで闘技場へ行ってしまった……若いっていいねえ。


「さーて、しばらく滞在することだし、いい宿を取らないとな。へへ……グレースが奮発してくれたし、バカンスの時の報酬もまだまだあるし、けっこういい宿に泊っちゃおうかな」


 スーリヤでの水質汚染事件、表向き俺は何もしてないことになってるけど……レグナフィリアが「はい、報酬ね」とけっこうな大金をくれたのだ。最初は断ったが、依頼に対する正当な報酬と言われたのでもらった。


「ふふん。三十五年の人生経験からすると……王都の中央にはいい店が揃っている」


 まあ、高級な店とかある区画がマルセリア王国にはあるが……それでも、王都の中央ってのはいい店が揃っている。

 キョロキョロしながら歩いていると、女の子に声をかけられた。


「おにーさん!! 何かお探し? 美味しい食事、ゆっくり休めるベッド、タック名物のお酒をお探しなら案内できるよ!!」

「うーん、最高だね。つまり、宿屋かな?」

「正解。うちの宿、町の中央にあるけっこう有名なお宿なのよ。お父さんの料理、お母さんの出すお酒、そして娘の私の客引き!!」

「客引きって……まあいいや。どんな宿?」

「そこだよ、『タックのお宿』ってところ」


 女の子が指を差したところは、三階建ての立派な宿だった。


「すごい立派だな。お高いんじゃないか?」

「まあ、そこそこ。ふふん、どうどう?」

「料金は? 一か月ほど滞在したいんだけど」

「一か月!! うんうん、おにーさん上客だね。ちょっとお安くしちゃって……」


 値段を聞くと、まあそこそこ高い……が、今の俺には全く問題ない。

 

「じゃあ、お世話になるよ」

「ありがと!! あ、あたしはトーニャ。一か月間よろしくね」

「ああ。俺はアルノー、冒険者だ」

「お、やっぱり? ってことは……やっぱり闘技大会に出るの?」

「いやいや、そうじゃない。古い友人の頼みを聞きにな」


 喋りながら宿に入る。

 一階はロビー、隣は食堂になっており、なんと地下には大浴場もあるそうだ。まさか大浴場とは……ここは大当たりだ。

 トーニャに一か月分の料金を支払い、部屋の鍵をもらう。


「食事は一階の食堂で、朝昼晩と用意できるよ。お昼はお弁当とかも準備できるから、事前に言ってくれたら用意するね。夜は食堂が酒場にもなるから、けっこう賑わうよ。宿泊者さんには専用のお席も用意してるから。お外に食べに行くときは言ってね」


 詳しい説明をしてくれる。堅苦しい喋りではなく、友人みたいに接してくれるのは俺好み……ほんといい宿だな。

 とりあえず、朝は毎日、お昼はなし、弁当頼むかも、夜はまだわからないとだけ言っておいた。

 部屋の鍵をもらい、三階にある部屋へ。


「ほお……すげえ」


 かなり広い部屋だ。

 シャワー、トイレ付、ベランダもある。ベッドは大きくフカフカで、窓際にはソファがあり、ここで酒を飲んだりもできるようだ。

 荷物を置き、俺はソファに座る。


「はあ……今日はのんびりしようかね」


 とりあえず、タクニキ王国へ到着した。

 カムド、ショコラに会いに行くは明日でいい。今日はのんびり過ごすとしよう。


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