第61話
それから、のんびりとタクニキ王国へ向かった。
乗合馬車に乗ると、若い冒険者たちが「大会……」とか「優勝……」とか興奮しながら喋っているのを眺めたり、一緒に乗ったおばあちゃんから貰ったリンゴを丸かじりしたり、川沿いでの休憩時に昼寝したりと、特にトラブルもなく進んだ。
それからまあ、の~~~んびり進み……あっという間に時間が経過。
同乗の若い冒険者たちが興奮していたので外を見ると、どうやら見えて来たようだ。
「おー……」
タクニキ王国。
マルセリア王国よりは小さいが、この国自慢の巨大な『闘技場』がよく見えた。
円形の……まあ、コロッセオみたいな建物だ。あそこで毎日、何かしらのバトル大会が開催されているらしい。
そして、年に一度、世界中から猛者が集まってデカい大会があるとか。
ぶっちゃけ、興味ないのでよくわからん……目立たず、平穏な冒険者生活を送る俺にとって、スリルとか戦いとかあまり必要ないんだよな。
俺は欠伸をして、窓から視線を外した。
◇◇◇◇◇
タクニキ王国。王都タックへ到着した。
馬車は王都の中央で停車……そこで降り、俺は大きく伸びをする。
若い冒険者たちは、降りるなりダッシュで闘技場へ行ってしまった……若いっていいねえ。
「さーて、しばらく滞在することだし、いい宿を取らないとな。へへ……グレースが奮発してくれたし、バカンスの時の報酬もまだまだあるし、けっこういい宿に泊っちゃおうかな」
スーリヤでの水質汚染事件、表向き俺は何もしてないことになってるけど……レグナフィリアが「はい、報酬ね」とけっこうな大金をくれたのだ。最初は断ったが、依頼に対する正当な報酬と言われたのでもらった。
「ふふん。三十五年の人生経験からすると……王都の中央にはいい店が揃っている」
まあ、高級な店とかある区画がマルセリア王国にはあるが……それでも、王都の中央ってのはいい店が揃っている。
キョロキョロしながら歩いていると、女の子に声をかけられた。
「おにーさん!! 何かお探し? 美味しい食事、ゆっくり休めるベッド、タック名物のお酒をお探しなら案内できるよ!!」
「うーん、最高だね。つまり、宿屋かな?」
「正解。うちの宿、町の中央にあるけっこう有名なお宿なのよ。お父さんの料理、お母さんの出すお酒、そして娘の私の客引き!!」
「客引きって……まあいいや。どんな宿?」
「そこだよ、『タックのお宿』ってところ」
女の子が指を差したところは、三階建ての立派な宿だった。
「すごい立派だな。お高いんじゃないか?」
「まあ、そこそこ。ふふん、どうどう?」
「料金は? 一か月ほど滞在したいんだけど」
「一か月!! うんうん、おにーさん上客だね。ちょっとお安くしちゃって……」
値段を聞くと、まあそこそこ高い……が、今の俺には全く問題ない。
「じゃあ、お世話になるよ」
「ありがと!! あ、あたしはトーニャ。一か月間よろしくね」
「ああ。俺はアルノー、冒険者だ」
「お、やっぱり? ってことは……やっぱり闘技大会に出るの?」
「いやいや、そうじゃない。古い友人の頼みを聞きにな」
喋りながら宿に入る。
一階はロビー、隣は食堂になっており、なんと地下には大浴場もあるそうだ。まさか大浴場とは……ここは大当たりだ。
トーニャに一か月分の料金を支払い、部屋の鍵をもらう。
「食事は一階の食堂で、朝昼晩と用意できるよ。お昼はお弁当とかも準備できるから、事前に言ってくれたら用意するね。夜は食堂が酒場にもなるから、けっこう賑わうよ。宿泊者さんには専用のお席も用意してるから。お外に食べに行くときは言ってね」
詳しい説明をしてくれる。堅苦しい喋りではなく、友人みたいに接してくれるのは俺好み……ほんといい宿だな。
とりあえず、朝は毎日、お昼はなし、弁当頼むかも、夜はまだわからないとだけ言っておいた。
部屋の鍵をもらい、三階にある部屋へ。
「ほお……すげえ」
かなり広い部屋だ。
シャワー、トイレ付、ベランダもある。ベッドは大きくフカフカで、窓際にはソファがあり、ここで酒を飲んだりもできるようだ。
荷物を置き、俺はソファに座る。
「はあ……今日はのんびりしようかね」
とりあえず、タクニキ王国へ到着した。
カムド、ショコラに会いに行くは明日でいい。今日はのんびり過ごすとしよう。




