第47話
なんかもう、キャラが多くてわけわからん。
俺はとりあえず、なぜスティンギールがここにいるのか聞いた。
「以前言ったと思いますが……知り合いが古書店を開きまして。開店祝いをしに来ました。ついでに休暇を取って、スーリヤの古書市場に行こうかと」
「古書市場?」
「ええ。スーリヤは今でこそ観光地ですが、商業区の外れには古書店が多く営業していまして、月に一度、古書市場を開催するんですよ」
「そりゃ興味惹かれるな……」
「よろしければ、一緒にどうで「ああああああああああああああああ!!」
と、デカい声が割り込んできた。
いつの間にか着替えたのか、青いビキニ姿のエルレインが俺たちの元へ。
「なんでアンタまでいるのよ!!」
「……はあ。挨拶もろくにできないとは、野蛮なところは変わりませんね、エルレイン」
「む。フン……こんにちは、スティンギール」
「ええ。こんにちは。もう二度と会うことはないと思っていましたが、まさかここで再会するとはね」
確かに……まさか、ビーチで再会とは。エルレインは水着姿だし。
というか、エルレインの水着……キュレネもだけど、初めて見た。
俺の視線に気づいたのか、エルレインは大きな胸を隠すようにして身をよじる。
「な、なに……?」
「いや。お前はやっぱり青が似合うなと思って」
「……そ、そうかな。えへへ」
エルレインは照れていた。すると、キュレネとファルカも来る。
「おー!! スティンギール!! ひっさしぶりだなあ!!」
「あなたも、挨拶なしですか。全く……」
「おっと。こんにちは!! スティンギール!!」
「……エルレインとは違った意味で、あなたは頭が痛くなる。こんにちは、ファルカ」
「こんにちは、スティンギール」
「こんにちは、キュレネ」
ファルカはともかく、キュレネとスティンギールは事務的な挨拶だった。ていうかスティンギール……エルレインとキュレネが水着で目の前にいるのに、全く興味を示していないような、そんな表情だった。
俺は言う。
「アストライアがいれば、同期が勢揃いだな。まあ、アストライアもこの町にいるみたいだし、もしかしたら揃うかもな。はっはっは」
「「「…………」」」
「え、お師匠様。アストライアもいるんですか!?」
「そうらしいぞ。と……」
すると、水着に着替えたアルテミウスたちが来た。
「師匠―!! えへへ、水着です!!」
「……ふん」
アルテミウスは意外にもビキニ、シャナは競泳水着っぽい。
ていうかアルテミウス……けっこうな巨乳で驚いたわ。
「うおー!! 早く遊ぼうぜ師匠!!」
「え、エリオ……あんまりそっち行かないで」
「え、なんで?」
「だ、だって……水着姿の皆さん、すごいんだもん」
エリオはハーフパンツ、ユウナはワンピースだ。なんか普通の子供って感じで安心する。
今更だが……けっこうな面子が揃っているんだが、なぜか全員が俺に指示を求めるようにこっちを見ていた。
「あー……じゃあ、ビーチで遊ぶか。スティンギール、お前も寄っていけよ」
「……そうですね。せっかくなので、教官と雑談でもしましょうか」
「ちょっと。アルノーとお喋りするのあたし!!」
「私よ。邪魔しないで」
「よっしゃ。えーと……エルレインの仲間たち、遊ぼうぜ!!」
「はい!! あ、アルテミウスです。こっちはシャナ、エリオ、ユウナです」
「おう!! オレはファルカだ。自己紹介したし友達だな。遊ぼうぜ!!」
「はい!!」
「よっしゃ、兄ちゃん遊ぼうぜ!!」
ファルカは、アルテミウスたちを連れて湖へ向かって行った。
残りはタープの下へ。ドリンクを買い、飲みながら雑談する。
エルレインは、果実水を一気飲みして言う。
「……キュレネ。その、ごめん」
「は?」
「いきなり態度悪かったわ。スティンギールも」
「構いませんよ。確かに、あなたはファルカと同じく単純で思考も浅いですが、きちんと反省できるところは評価できる」
「おいスティンギール」
俺はスティンギールの口を手でふさいだ。また喧嘩になったらたまらん。
でも、スティンギールの言う通り、エルレインはカッとなりやすく、同期のこいつらとはよく喧嘩したが……最終的には『自分が悪かったところ』を反省し、ちゃんと謝ることはできるのだ。
俺は欠伸をしつつ、果実水を飲み、水中での息止め対決をしているファルカたちを見て言う。
「お前たち、喧嘩も多かったし、互いに気に食わないところはいろいろあるんだろうけど……ちゃんと互いのいいところ、悪いところはしっかり認め合っていることは俺が一番よくわかってる。ファルカ、エルレイン、キュレネ、スティンギール。今はいないアストライアも含めて、お前たち五人はみんな、いい仲間だと思うぞ」
「「「…………」」」
三人は無言だった。でも……どこか照れているような、そんな無言だった。
すると、びしょ濡れのファルカがこっちへ来た。
「お師匠様、一緒に素潜りしませんか!! いやー、あの子たちすごいっすね。みんな息止めがかなり続くし、湖のもっと深いところまで素潜りできるかも!!」
五人の中じゃ、ファルカが一番子供っぽいな。まあ……たまにはいいか。
俺は立ち上がり、背中を逸らす……すると骨がパキパキ鳴った。
「うーし。軽く運動するか!! お前ら、どうする?」
「あたしも行く!!」
「ふふ。私も」
「ボクは荷物を見ていますよ」
「あら。荷物なら、私が見ているわ」
と……いきなり割り込んできたのは、水着姿のレグナフィリアだった。
いきなり水着姿。緑色の、露出の押さえたワンピースタイプの水着。だが、胸元がけっこう目立っている……周囲の視線が一気に集中した。
俺はレグナフィリアに近づいて耳元で言う。
「いきなり出てくるな。驚くだろうが」
「用事が早く終わってね。なんだか楽しそうだし……ね、どう? 私の水着」
「はいはい。ナイスバディでほれぼれしちゃう。これでいいか?」
「……適当ねぇ。まあいいわ。荷物、私が見てるから子供たちと遊んでらっしゃい」
「……なんか優しいな。何企んでるんだ」
「失敬ね。ほら、みんな硬直してるし、声掛けなさい」
お前のせいだろ……とは言えない。
こいつ、千歳超えてるくせに二十代前半の超極上美女だし、露出控えめとはいえ水着だから、周囲の視線を老若男女問わず独占してるんだよな。
エルレイン、キュレネですら見惚れてるし……スティンギールは見ないようにしている。
俺はエルレインたちに言う。
「よし。今日はレグナフィリアが全員に晩飯奢ってくれるそうだ。せっかくだし、限界まで腹を減らそうぜ」
レグナフィリアは「は?」と首を傾げた。
まあ、これくらいの悪戯はいいだろう。
俺はエルレインとキュレネの背中を押し、スティンギールの手を引いて水辺へ向かうのだった。
さて、いろいろ騒がしくなったが……俺のバカンス、たっぷり楽しむぜ。




