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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第二章

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第46話

 歓楽街の帰り路。


「いやー……観光地ってすごい、うん。子供を連れて歩けないね」


 スーリヤは『古都』ってイメージだったけど、歓楽街はまあ……いいところだった。

 あくまで、確認しに行っただけ。まだまだバカンスは始まったばかりだし、最初からエンジン全開レッツゴーで行くわけにはいかない。

 せっかくだ。ビーチの近くにカフェくらいあるだろ。冷えたエールでも飲みに行くか。

 そう思い、歓楽街を抜けた時だった。


「あら」

「へ?」


 絶対に、ここにいるわけはがないやつがいた。


「きゅ……キュレネ?」


 なぜか、キュレネがいた。

 赤いワンピースに帽子を被り、いかにもバカンスですみたいな感じで。

 キュレネはにっこり微笑んだ。


「コーチ、また会えるなんて嬉しいです」

「いやいやいやいや、おま、なんでいるんだ?」

「ふふ。私もバカンス……というのは半分本当。実は、スーリヤで公園がありまして。前乗りして、少し観光しようかと」

「……そ、そうなんだ」

「ふふ。実は……コーチがスーリヤに行く、って言うから前乗りしようと思ったんです。まさか、到着してすぐに会えるなんて」


 こっちも驚いた。まさか、キュレネがいるなんて。

 するとキュレネ。何とも言えない表情になった。


「その、コーチに会えたのは嬉しいんですけど……コーチ、あいつに何か余計なこと、言いました?」

「あいつ?」

「ええ……」


 すると、こっちに向かって誰か走って……いや、マジか。


「おおおおおおおおい!! キュレネええええええええええええ!! あ!! お師匠様ああああああああ!!」


 デカい声を出しながらダッシュでこっちに向かって来たのは……ファルカだ。

 前に別れた時と同じ、冒険者装備。

 俺たちの前で急ブレーキをすると、抱拳礼で挨拶する。


「お師匠様、お疲れ様です!!」

「お、おう……いや、なんでお前まで」

「イヤだな、お師匠様が言ったんじゃないですか。『もっといろんな分野に手を出せ』って。だからオレ、お師匠様のマネをして『バカンス』することにしたんです!! そして、女の子……ヒマしていたキュレネを誘ってきました!!」

「……えっと」


 何から言えばいいんだ?

 キュレネはデカいため息を吐く。


「あのね。私はヒマしていないし、あなたのバカンスに付き合うために来たんじゃないの。たまたま目的地が一緒だっただけ」

「そうなのか? まあ、どうでもいいか。よしキュレネ。泳ごうぜ!!」

「あのね……まずは、宿にチェックインでしょ」

「そっか。じゃあ行こうぜ!!」

「え、お前たち……一緒に泊るのか?」

「ち、違います!! もう、コーチってば!!」

「オレは別にいいんだけど、キュレネが嫌だって言うんで部屋は別っす」

「あんたは黙ってなさい!!」


 キュレネ……なんか苦労してそう。ちょっと申し訳ない。

 

「あのコーチ。この馬鹿はともかく、一緒に泳ぎませんか? その……水着、用意してきたので」

「そうだな……うん、少しくらい泳いだ方が、美味いエール飲めるかもな」

「やった。じゃあファルカ、宿に行くわよ。コーチ、場所取りお願いします!!」


 キュレネは、ファルカを連れて宿へ向かって走り出した。

 その背中を見送り、俺はビーチへ向かうのだった。


 ◇◇◇◇◇


 ビーチでは、海の家みたいな建物があった。

 そこで、シートやタープ、水着なども売っていたので購入。更衣室で着替え、ビーチへ。


「うおっ、暑いな……」


 砂浜が熱い。サンダル越しでも砂の熱を感じる。

 いい場所があったのでシートを広げ、ポールを立ててタープを展開する。

 そして、しばらく待っていると。


「コーチ、お待たせしました」

「ん。おお……キュレネか」


 真紅のビキニにパレオを巻いたキュレネがいた。

 髪もまとめ、麦わら帽子を被り、荷物は小さなポーチだけ。

 こうしてみると、かなりスタイルがいいな……って、俺はセクハラおじさんか。


「お師匠様、どうも!!」

「おう。お前さ、もう少し声のボリューム下げようぜ」


 ファルカは、黄色いハーフパンツの水着だ。

 上半身は裸だが……身体中に細かい傷があり、さらに細マッチョなのでかなりスタイルがいい。キュレネと二人で並んでいると、美男美女のカップルにしか見えない。

 二人とも童顔だし……俺はこの二人の保護者にしか見えないだろうな。

 荷物を置くなり、ファルカは言う。


「キュレネ、泳ぎに行こうぜ!!」

「……あなたの口から、そんな言葉が出るなんてね」

「へへ。オレもお師匠様の教えで変わったんだ。もっとお前のこと、知りたくてな。これからいっぱい遊んで、もっとお前のこと教えてくれ!!」

「…………ぇ」


 いやいやいやいやファルカ、おま、天然なのかマジか。それ口説いてるじゃん!! キュレネもなんか満更じゃないの!?

 ファルカは屈託のない笑みを浮かべ、キュレネに手を差し出してるし。


「……はあ。コーチ、この修行バカに何を言ったのですか?」

「いや、もう少し遊べって言ったんだが……うん、こいつは天然だな」

「……ですね。もう、しょうがないわね」


 と、キュレネがファルカの手を取ろうとした時だった。


「ああああああああああああああああ!!」


 デカい声が俺たちの耳を貫いた。

 驚いて声の方を見ると……なんと、エルレインがいた。アルテミウスたち四人もいる。

 エルレインは、俺たちを見るなりダッシュで向かって来た。


「ちょ、アンタら何してんのよ!! しかもアルノー、水着で、こいつらと遊んでんの!?」

「お、エルレインじゃん。久しぶりだな!!」

「うっさい修行バカ!! しかもキュレネ……アンタ、水着」

「……久しぶりも言えないのかしら。ふふん、見ての通り、コーチと遊んでいたの。あなたは……ああ、新人の指導? ふふ、頑張ってね」

「~~~っ!! みんな、あたしたちも遊ぶわよ。水着用意!!」

「やったー!! ねね、シャナ、水着だって!!」

「……ええ~?」

「おっしゃ!! 今日は依頼報告して終わりかと思ったけど、海で遊べるぜ!!」

「み、水着……だよね」


 一気に騒がしくなってしまった。

 キュレネと睨み合うエルレイン。二人を見て首を傾げるファルカ。エルレインそっちのけで海の家へ向かうアルテミウスたち。

 俺はこっそりその場を離れようと、タープから出た……すると。


「おや、教官ではありませんか」

「……なんでお前までいるんだよ」


 なぜか、ラフな格好をしたスティンギールが、数冊の本を手にして歩いていた。

 ほんともう、バカンス始まったばかりなのに疲れたよマジで!!


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