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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第二章

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第43話

 レグナフィリアの馬車は、電車一両を半分くらいにしたような大きさで、対面式の座椅子仕様の立派な馬車だった。最大十五名まで乗れるので、俺たちの人数でも平気だ。

 ていうか、俺の一人旅、どこに行った……と、思わなくもない。

 

「シャナ、お菓子ある?」

「お菓子はないわ……というか、話しかけないで」

「え、なんで?」

「あのね……」


 シャナはボソボソ言う。


「アストライア様を目の前にして、子供みたいにはしゃげるわけないでしょ……アタシたちエルフ族にとって、エルダーエルフは神様みたいなものなんだから」


 そういや、そうだったな。

 エルフの始祖であるエルダーエルフ……俺からすれば、普通のお姉さんにしか見えない。まあ、美人だとは思うけど。


「なぁに、アルノー」

「うんにゃ、お前は美人だなと思ってな」

「あら嬉しい。ふふ」


 外面モードなので、こんな風にからかっても態度は変わらない。二人で飲んでる時なら「なーに言ってんのよ、このスケベ!!」って言って背中叩かれるぞ。

 すると、隣に座っていたエルレインが言う。


「……あんた、年上好きだっけ」

「は?」

「べつに。それより、あいつらに挨拶したんでしょ? そのへんの話、聞かせてよ」

「その前に……なんでお前らがあそこにいたんだ?」

「はあ? そりゃ冒険者だし、テミスたちは王都が活動拠点でしょ。依頼を受けるために来たに決まってるじゃない。あたしも王都に報告あったから来たのよ。そこで、五傑の師が王都に来たって噂になってて、あんたじゃないかって思ったら、ギルド前にあんたが現れたのよ」


 う、噂かあ……まあ、キュレネの時もファルカの時も目立ってたしな。冒険者ギルド内で噂になるくらいはあるか。

 というかエルレイン、アルテミウスのことテミスって呼んでるんだな。


「で、あいつらは?」

「普通に元気だったよ。ていうかお前、拠点はポータムだけど活動の場は王都マルシェだろ? 同期なんだし、たまにはメシ食ったりしろよ」

「イヤよ。ファルカはやかましいし、キュレネはなんかムカつくし、スティンギールは嫌なやつだし、アストライアは根暗だし」

「評価ボロボロだな……」


 すると、レグナフィリアがクスクス笑う。


「『極星五傑(グラン・ステラ)』は仲良しみたいね。ふふ、冒険者の未来は明るいわ」

「あの、ギルマス……話聞いてました? 別に、あたしたち同期は仲良しじゃ」

「大丈夫。わかっていますから」


 エルレインはもう何も言わず、口をへの字の曲げる……そういやエルレイン、レグナフィリアのこと苦手だったな。

 なんとなく車内を見渡す。

 

「ん~おいしい。エルフの保存食っておいしいね」

「乾燥させた果物を練った小麦と混ぜて焼いた保存食よ。聖樹の葉っぱで包んでるから長持ちするし、葉っぱの香りが移ってさらに美味しいの」


 なんかお菓子食ってるな。楽しそうで何よりだ。


「くかー」

「ん……」


 エリオ、ユウナは……はは、寝てる。

 互いに肩を寄せ合って寝ている。まあ、まだ早朝だしな。寝る子は育つって言うし、声のボリューム少し落としておくか。

 すると、レグナフィリアが言う。


「そういえばアルノー、アストライアのことだけど」

「ああ。あいつ、王都にいなかったんだよな」

「あの子、マルシェ王家の依頼を受けて、スーリヤにいるみたいなの。どんな依頼かまでは知らないけど……まあ、会う機会あるんじゃない?」

「そうなのか?」


 俺の教え子の一人、アストライア。

 今は王都マルシェにある『国立魔法研究所』で魔法研究やってるはず。

 するとエルレインが俺の腕を掴む。


「そんなことより。ねえアルノー、あっちで美味しいお酒飲もうよ~」

「わーったわーった。ていうかお前、別荘あるんだっけ。どんなのだ?」

「わかんない。それもあとのお楽しみ」


 こうして、俺たちは湖の町スーリヤに向けて、順調に進むのだった。


 ◇◇◇◇◇


 馬車は滞りなく進み、見えて来た。


「お、あれか」


 窓から視界に入ったのは、巨大な湖だ。

 湖の町スーリヤ。やや低地にあるため、今いる街道からだと見下ろすような光景だ。

 まんまるな湖を囲うように、建物が並んでいる。簡単に言うならドーナツみたいな町だ。

 

「湖の町スーリヤは、古い歴史のある町ね。東西南北の四区画に分かれているわ。グレースの家があるのは西区……ふふ、観光特区の方ね」

「なんで知ってんだよ……」

「もちろん、お手紙に書いてあったからよ」


 レグナフィリアはクスっと微笑んだ……近所に住む一人暮らしの美人会社員って感じがするのは気のせいじゃない。

 エルレインが言う。


「あたしの別荘は……東区か。居住区画の方ね。アルノーとは反対側かあ」

「まあ、別に気にしなくていいだろ。それよりお前たち、依頼あるんだろ?」

 

 アルテミウスに言うと、「はい」と頷く。


「王都に住むパン屋さんから、スーリヤに住むパン屋さんへのお届け物ですね。えーと、息子さんへのお手紙みたいです」

「へへ、簡単な依頼だぜ。馬車で楽できたしなー」

「エリオ、そういうこといわないの」

「……依頼料も大したことないけど、たまにはこんなのもいいわね」


 なんか、普通の冒険者生活を満喫しているようだ……うんうん、何よりだ。

 アルテミウスたちは問題なさそうだ。


「エルレイン。お前はスーリヤで何をするんだ?」

「そうね。とりあえず、アルテミウスたちと遊ぶ予定。その前に、別荘の状態確認とかもあるけど……」

「……お前、本当はそっちが目的だろ」

「ななな、なにを言ってんのかしら」


 たぶんこいつ……別荘の掃除とか手伝いとかさせるために、アルテミウスたちを連れて来たのかもしれん。もしかしたら、とんでもないボロ別荘の可能性もあるぞ。


「こほん。それよりアルノー、せっかく同じ町にいるんだし、その……少しは遊んでよね」

「はいはい。わかってるわかってる」

「ふふ。私もご一緒しちゃおうかしら」

「えー……あんま騒がしいのは嫌だぞ俺」


 こうして、馬車は湖の町スーリヤへと到着するのだった。


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