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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第二章

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第42話

 夕食後、スティンギールと別れた。

 「では教官。いつかまた」と、礼儀正しく一礼して自宅へ……学者っぽいんだが、ああ見えてやっぱりS級冒険者で、しかも戦うと普通に強いんだよなあ。

 スティンギールの『傀儡聖』は、俺には手に入れることはできないな。

 

「さて……帰るには少し早いな。でも、明日はスーリヤに向けて出発するし、今日は早く帰ってバカンスの予定でも考えようかなーと」


 俺は宿へと戻り、部屋に入るなりメモ帳を取り出した。

 まず「バカンスでやること」と書き、考える。


「昼寝、読書、釣り、酒も飲みたいな……ボート、いやソロでボートとか地獄すぎる。あ、ボート釣り。湖畔でボート出してそこで釣り……やべえ楽しい。となるとキャンプだな。よーし」


 予定を立てるの楽しいぜ。

 料理もキャンプっぽくやろう。わくわくするね。


「雰囲気次第では、俺も別荘欲しくなるかも……チート解禁してドラゴンでも狩って素材売却しちゃおうかな……なんて」


 グレースの別荘もどんなところか気になる。

 豪邸……なのかな。あいつ、金持ちだけど庶民的というか、必要最低限の物さえあれば困らないって感じだし、豪華なモンとか興味ないんだよな……吸ってる煙草も安モンだし。


「まあいい。ふふふ……バカンス、楽しみだ」


 アストライアへの挨拶は、バカンス終わってからにしよう……どうせポータムに帰るときに王都を経由するしな。

 この日、俺は遅くまでバカンスのプランを考えるのだった。


 ◇◇◇◇◇


 翌日、宿で朝飯を食ってスーリヤに向けて出発することにした。

 一度、軽くレグナフィリアに挨拶でもしようとギルドに向かっていると。


「いたああああああああああああ!!」

「え」


 ギルドの前に、エルレインがいた。

 いや、エルレインだけじゃない。


「あ、師匠だー!! ホントにいましたー!!」

「……王都で会うなんて、ヘンな感じ」

「おおー!! 師匠だぜ!!」

「う、うん……久しぶり」


 アルテミウス、シャナ、エリオ、ユウナ……そういや王都を活躍の場にしているんだよな。ギルドに行けば合う可能性はあるだろうな。

 すると、エルレインがズンズンと近づき、俺に顔を寄せてやや怒ったように言う。


「ちょっと!! 挨拶もなしに王都に行くなんてどーいうことよ!! 行くなら声かけてよ!!」

「いや、まあ……うん、ごめん」


 つい謝ってしまった。

 俺はエルレインを押しのけて言う。


「まあその、たまにはのんびり一人旅してみたくてな。それに、王都でキュレネたちに挨拶もしたかったし……」

「は? キュレネたち、って……あいつらに会ったの?」

「ああ。キュレネ、ファルカ、スティンギールには挨拶した。アストライアはいなかった」

「ふーん。で、この後の予定は?」

「……まあ、スーリヤに行くけど」

「へええええ~……」


 エルレインはにんまりと嫌な笑みを浮かべた……な、なんかイヤな予感。

 すると、エルレインはアルテミウスたちに言う。


「さて、あんたら。これからの予定は?」

「はい!! 私たち、お仕事で『湖の町スーリヤ』に行きます!! 依頼人にお届けモノして、そのあとはバカンスです!!」

「なるほどねー。で、アルノー……あんたの予定は?」

「…………」


 こ、こいつら……めっちゃニヤニヤしてるし、わかってやがるな。

 俺は言う。


「言っておくが、俺はソロでバカンス楽しむ予定だからな……」

「わかってるわよ。でも、何日か一緒に遊ぶくらいできるでしょ。この子たち、あたしの別荘で過ごす予定だしさ」

「え、お前スーリヤに別荘なんてあったのか?」

「まあね。依頼の報酬でもらったのよ。全然使ってないからどうなってるかわかんないけどね」

「……まあ、それならいいか。じゃあ、一緒に行くか……」


 と、言った瞬間……一台のデカい馬車がギルド前に止まった。

 冒険者ギルドの紋章が描かれた馬車だ。

 すると、ギルドからレグナフィリアが出てきた。


「あら、皆さん……おはようございます」


 ギルマスモードのレグナフィリアだった。

 アルテミウスたちが一気に緊張する。エルレインも表情が強張った。

 俺は言う。


「おう。お前も出かけるのか」

「ええ。湖の町スーリヤの冒険者ギルドへ用事がありまして」

「……は?」

「ふふ。アルノー、目的は一緒かしら? よろしければ馬車に乗る?」


 俺はレグナフィリアに顔を近付けボソッと言う。


「おいお前、どういうつもりだよ」

「何よ……べ、別に、あなたのバカンスが羨ましくなったわけじゃないわ。本当にお仕事で行くのよ。まあその……ちょっとはお休みもあるけど」

「……」

「で、乗っていくなら送るけど」

「……頼むわ」


 すると、エルレインが言う。


「ちょっとアルノー……顔、近くない?」

「いや、こいつ耳遠くてな」

「……ふふ、そうね」


 やべ、少し怒ってる。変なこと言わないようにしよう。


「エルレイン。俺、レグナフィリアの馬車に乗って行くから。お前たちはゆっくり来いよー」

「えー、ずるい。いいなー」

「ふふ。なら、皆さんどうぞ。この馬車、広いから問題なく乗れますので」


 アルテミウスたちが「やったー!!」と喜んでいる。

 俺はレグナフィリアに言う。


「おいおい、いいのかよ。よく言うだろ? 若者には苦労をさせろって……若い連中はしっかり歩かせてだな」

「あら、それを言うなら、あなただって私からすれば若者よ。歩いて行く?」

「うぐ……ああもう、わかったよ」


 こうして、いきなり現れたエルレイン。そしてアルテミウスたち、そしてレグナフィリアと一緒に、湖の町スーリヤへ向かうことになるのだった。

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