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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第二章

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35/52

第35話

 翌日。俺は宿屋で目覚め、そのまま一階の食堂でメシを食い、キュレネに呼ばれているので真っすぐ劇場へ。

 受付で確認すると、そのまま奥の応接室へ通された。


「コーチ、おはようございます!!」

「おう。今日もいい天気だな」

「ふふ、そうですね。では……さっそく」


 キュレネの話によると、俺の考えたアイデアを全て採用することにしたそうだ。

 飲食店と契約をして劇場内にカフェスペースを設けること、ショップの経営と、劇場の収入はこれから増えることだろう。

 それと、シャダークとシャルーナが資料の整理を終え、必要な経費、そうじゃない経費をまとめ、経費削減などもできるそうだ。


「本当に、コーチにはお世話になってばかりです……私、全然ダメですね」

「んなことない。俺はお前みたいに踊ることはできないしな、お前の踊りを見て、俺も人並みにダンスできれば……なんて考えたこともあった」


 ちなみに……俺は『舞踊聖』のジョブを得ていない。

 キュレネの『真の願い』が何なのか、全くわからない。エルレインもだが……近しければ近しいほど、俺はその人のジョブを手に入れていない。


「もっと、コーチと一緒にお仕事したいな……」

「ん?」


 おっと、キュレネがボソッと何かを言ったが聞き取れなかった。

 とにかく……あとはもう、俺にできることはない。実際に経営をしてみてどうなるか、数か月後にまた様子を確認しに来る感じになるかなあ。

 話が終わり、俺は席を立つ。


「よし、じゃあキュレネ。困ったことがあればレグナフィリアを頼れ。あいつ、ああ見えてかなり頼りになるからな」

「……はい。あの、コーチ……今度はいつ、王都へ?」

「わからん。バカンスのあと、真っすぐポータムに戻る予定だしな。スーリヤの滞在が一か月くらいだから……まあ、二、三ヶ月後くらいに様子を確認しに来るよ」

「……スーリヤ、かあ」

「ん?」

「いえ。なんでも……コーチ、本当にお世話になりました」

「気にすんな。お前はもう、俺なんかより立派なことやって生活してるけど、それでも俺が担当した教え子に違いないしな。困ったことあればいつでも来いよ」

「はい……!!」


 さて、一度宿に戻って、次の挨拶に行くとするか……と思っていると。

 キュレネが俺の腕を掴み、ギュッとしがみついてきた。


「ん……どうした?」

「いえ。昔、こうやってコーチに甘えたことあったな、って思って……ダメですか?」

「はは、もう二十二歳だろ?」

「歳は関係ありません。もう、コーチってば」

 

 ちょっとだけ悩んだが、俺は昔みたいにキュレネの頭を撫でてやる。

 キュレネは、猫みたいに甘えた顔をして、顔を綻ばせていた。


 ◇◇◇◇◇


 キュレネと別れ、俺は一度宿屋に戻ることにした。

 俺の弟子は四人、そのうちの一人、キュレネには挨拶を終えた……まあ、挨拶だけじゃなく相談にも乗ったけど。

 残りの三人、住んでいるところは変わってないらしい。手土産持って挨拶へ行くか……そう思いながら歩いていると。


「……ん?」


 現在、俺が歩いているのは王都の中央通り。

 王都マルシェで一番横幅が広く、大型バスだったら十台並んでも楽勝な道幅だ。

 そんな中央通りのど真ん中を、何か巨大な物が動いていた。

 

「……んんん?」


 道行く人たちが横にずれていく。

 その巨大な何かは……デカい車輪付きの板だ。その板に極太のチェーンを付けて引っ張っているようだ。

 板の上には、巨大な……うげえ、あれって討伐レートSSの魔獣、ジェノサイダーべへモスじゃねぇか。

 全長四十メートル以上、鋼のような体毛を持つバケモノ牛。討伐には王国騎士団が総出で討伐に出るようなバケモノなんだが。

 重さだけで数百キロありそうな鎖を身体に巻き付け、数トンはありそうなジェノサイダーべへモスを轢いていたのは、一人の男だった。


「ふぁ……ファルカ」

「あ? あああああああああ!? お、お師匠様!?」


 俺の教え子の一人、ファルカ。

 主人公ヘアと言えばいいのか、明るい少しツンツンした金髪、瞳は髪よりも明るい金色で、右頬から耳に掛けて三本の引っ搔き傷がある。

 両腕には、指先から肩までを覆うゴツい鋼のガントレット、足は膝上までのこれまたゴツいグリーブを履いている。だが、なぜか胴体はシャツにボロボロのジャケットと、なんともいえないファッション。

 というか、ファルカ……全体的にボロボロの傷だらけだ。

 ガロガロガロ!! と、デカすぎる荷車がとんでもない音を立てて引きずられる。なんと、数トンありそうな魔獣を引っ張りながら走り、俺の前で急停止。


「お久しぶりです、お師匠様!!」

「お、おう」


 抱拳礼で挨拶……俺がカッコいいからと教えたんだが、まだ覚えているようだ。

 ていうか、聞くこと山ほどある。


「ひ、久しぶりだけど……この魔獣、なんだ?」

「獲物です!!」

「いや、そうじゃなくて……依頼か?」

「ええ。西だか東から来た暴れ魔獣で、討伐してくれって言われたんで。なかなか強かったっす!!」


 西と東じゃ全然違うんだが……ていうか、メチャクチャ目立ってる。


「お師匠様。やっと王都で道場を構える気になったんすね!! いやーこの日を待ってました!!」

「どういう流れでそうなるんだよ……ていうか、俺は休暇で……あーとにかく目立つ。あとで合流しよう。夕方、ギルド前に集合な」

「はい!! いよっしゃあああああああああ!!」


 ファルカは、とんでもないスピードで走って行った……マジで猪突猛進。昔から変わってねえ……まあ、元気そうだしいいか。


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