第34話
現在、俺はキュレネと二人でレグナフィリアのところにいた。
「なるほど、ね……」
「ま、そういうことだ。お前の伝手で数字に強い信頼できるやつ紹介してくれ。キュレネも、お前なら信頼できるっていうし」
レグナフィリアの紹介なら安全だろ。
レグナフィリアは、テーブルにある本を手に取りペラペラめくる……履歴書でも見てんのかな。
そして、本を閉じてにっこり微笑んだ……キュレネの前だし猫被ってるな。
「二人ほど、ご紹介しましょう。まだ三百歳と若輩ですが、算術に百年ほど没頭するほどの計算好きな子たちなので、問題はないと思います」
「さ、三百で若輩か……エルフなのか?」
「ええ」
すると、ドアがノックされた。
入って来たのは、十三歳ほどの少年、少女……双子かな?
髪は金色で、少年は長髪で三つ編み、少女はショートヘアだ。
俺たちを見て一礼する。
「初めまして。エルフのシャダークです」
「妹の、シャルーナです」
礼儀正しい……ていうか、三百歳なのマジか。
ていうか、今この話をして、すぐに来たってことは話を聞いていたのかな。
ま、まあいいや。
「話は聞いていましたね? シャダーク、シャルーナ。あなた方二人には、キュレネの劇場での経理をお任せします」
「「お任せください」」
二人はレグナフィリアに一礼、そしてキュレネの前で膝をついた。
「キュレネ様。何卒宜しくお願い致します」
「我ら双子。命を賭けてお勤めを果たします」
「え、えっと……うん、よろしくね」
うん、信用できるわこれ。
俺はレグナフィリアにこそっと言う。
「おい、この子たちの性格、お前が仕込んだのか?」
「馬鹿言わないでよ。この子たち、エルフの国で宰相やってる子の子供でね。私のところで社会勉強するために五百年ほど預かることになったの。算術好きでねぇ……むしろ、外部で働くのはいい経験になるわ」
「そりゃ感謝……で、もう一個の頼みだけど」
「知り合いの鍛冶屋に、あなたのアイデアをカタチにしてもらうようさっき手配したわ。よくわからないけど……あんなのどうするの?」
「ふふん、まあそこはあとのお楽しみ。で、残りは?」
「そっちも手配済み」
「感謝。いやー、いろいろギルマスとは関係ない仕事させて悪かったな」
「全然。むしろ、新鮮で面白かったわ。ふふ、ねえアルノー、やっぱり王都に来ない? あなたが死ぬまであと百年くらいかしら、退屈しないで済みそう」
やなこった。
キュレネを見ると、シャダークとシャルーナに自己紹介をし、その場で軽くステップを踏んで自分がどういう人間なのか教えていた。
シャルーナは目をキラキラさせ、シャダークは見惚れているように見える……あの双子にとってもいい刺激になりそうだ。
「うし、事務員はこれでいいな。キュレネ、次行くぞ」
「は、はい」
シャダーク、シャルーナを連れて一度劇場に戻ることにした。
◇◇◇◇◇
劇場に戻り、キュレネが使っていた事務室へ。
そこには書類が乱雑に並んでおり、お世辞にも整理されてるとは言えない。
キュレネは恥ずかしそうにしていた。
「こ、ここはその、お掃除していないので」
「大丈夫です。シャルーナ」
「うん、お兄ちゃん。わたし、やる気出てきたよ」
双子はさっそく掃除を開始。書類を分けていく。
俺とキュレネも掃除を手伝った。新しい事務机を入れたり、窓を拭いたり……双子の希望でここに住み込むことになったので、その部屋も準備した。
整理が終わり、キュレネの事務所は今までにない輝きとなった。
「さっそくですがキュレネ様。ここにあるデータを年代別に整理したいと思います」
「え、ええ。お願いするね」
双子はイキイキと整理を始めた……なんだか楽しそうに見える。
すると、マーガレットさんがドアをノック。大きい木箱を片手に部屋に入って来た。
「失礼します。鍛冶屋から、アルノー様宛にお荷物が」
「おお、もうできたのか」
テーブルに木箱を置く。
キュレネはもちろん、マーガレット、シャダーク、シャルーナも気になるのか俺の周りに集まった。
俺は木箱を開ける。すると、中から出てきたのは。
「……これは、アクセサリー?」
「ネックレス? ブレスレット……イヤリングも」
「わあ、綺麗……」
キュレネ、マーガレット、シャルーナは女子っぽく目を輝かせる。シャダークは首をかしげているだけだが、まあしゃーない。
そう、俺が鍛冶屋に依頼したのはアクセサリー関連。しかも、ただのアクセサリーじゃない。
薔薇をモチーフにしたキーホルダー、指輪やネックレスなどの装飾品。他にも置物、薔薇の刺繍がされたシャツやバッグなど、装飾品だけじゃないモノも多くある。
俺はキーホルダーを手に言う。
「こいつは、『プリマステラ限定』のアクセサリーだ。ここでしか買えない、貴重なグッズ。つまり……俺が提案するのは『会場限定グッズ』の販売だ!!」
そう、映画館などで映画を見たあと、そのままグッズコーナーで買い物をして帰るように、この劇場限定の商品などあれば売れるんじゃないかと思ったのだ。
「例えばこのネックレスやイヤリングをキュレネが付けてステージに立って、販売所で『キュレネが付けていたのと同じイヤリング!』なんて宣伝文句で売りに出せばそりゃもう飛ぶように売れるぞ!!」
「失礼ですがアルノー様……その製作費や材料費などについては?」
シャダークの指摘。とうぜん、そこも考えてある。
「これは、廃棄鉄を使ったアクセサリーだ。キュレネは知ってるよな? 鍛冶屋などで壊れてもう使えない武器防具を回収して、金属部を全部混ぜて一つの鉄にして、釘とかの材料にすることがあるんだが……その廃棄鉄を超格安で買い取って、アクセサリーにしている。元値はタダみたいなもんだし、いろんな鉄を混ぜ合わせて使うから、焼き入れするといろんな色が出る。それもまた面白いだろ?」
「なるほど……」
俺はシャダークに、制作費や材料費などの書類を渡す……こういうの、やっぱ必要になるんだよなあ。
「他にも、記念メダルとかもいいな。差を付けるために高価な、それこそキュレネが身に着けたネックレスとか販売してもいい」
「……すごい。さすがコーチです!! マーガレット、劇場内に物販やるお部屋ある?」
「ええ。空き部屋はあるので準備可能です」
「部屋が空いてるんだったら、カフェとか軽食できる店とかあるのもいいな。劇場って大抵、時間ぎりぎりに来ることないだろ? 待ってる間に喉乾いたりすることもあるし、メシ食ったり、甘い物食えるのもいいよな」
「採用!! マーガレット!!」
「はい、準備します」
とまあ、こんな感じで俺のアイデアは続々採用された。
全ての話が終わり、あとはもうキュレネたちがどうするか、そこに任せよう。




