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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第二章

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第30話

 夜になり、俺は宿を出た。

 これからレグナフィリアとの飲み会だ。待ち合わせ場所は冒険者ギルド前で、俺は腰に護身用のナイフだけを差し、財布を胸ポケットに入れた。

 いちおう、あいつの奢りだけど……まあ、二軒目は俺が奢ってやろうかね。

 ギルド前に行くと……いたいた。


「おーい、レグナフィリア」

「あ、来たわね」


 レグナフィリア。

 ギルマス部屋で見た時とは違い、長い髪を三つ編みにし、やや厚手のシャツやスカートを履いていた。

 美貌は変わらないはずなんだが……妙に芋っぽいというか、地味に見える。

 俺は軽く手を振って言う。


「精霊も頑張ってるみたいだけど、お前の美貌は隠しきれてないな」

「あら、私の『精霊偽装』をけなしているのか、私の容姿を褒めてくれているのか、どっちかしら?」

「さーな。それより行こうぜ」


 レグナフィリアのジョブは『精霊術士』……エピックジョブと呼ばれる超希少なジョブ。そりゃもう珍しい、世界でも十人いるかいないかの珍しさ。

 ジョブには等級があり、ノーマルから始まり、レア、レジェンド、エピックと続き、伝説であるゴッドと続く。

 エピック以上のジョブは、種族が関係していると言われている。

 例えば、レグナフィリアはエルダーエルフ。これまで『精霊術士』のジョブを得た者はみんなエルダーエルフだった……とか。

 しまった、また長々と……ちなみに、『精霊偽装』っていうのは、精霊を身にまとうことで外見を変化させる、レグナフィリアの十八番スキルである。


「アルノー、どうしたの? ふふ、また頭の中で言葉を発してるの?」

「ああ、クセみたいなもんだ。で……どの店行く?」

「私のお気に入り。さ、こっちよ」


 レグナフィリアは俺の腕を取り、なんと胸に押し付けてくる……うん、デカい。


「ね、焼き鳥好きだったよね? それともお鍋? 美味しいお魚料理のお店もあるけど……ん~、お気に入り多くて困っちゃうわ」

「そう言う時は、全部行くぞ。一軒で腹いっぱいにするんじゃなくて、二軒目、三軒目のために少量ずつ楽しむんだ」

「あ、それいいわね」


 最初に向かったのは、美味しい焼き鳥の店。

 店主が目の前で焼いてくれる、日本でもよく見る感じの店だ。

 二人で向かい合わせに座り、エールと焼き鳥盛り上わせを注文し乾杯する。

 最初の一杯は飲み干し、すぐに杯目を注文……俺は焼き鳥を食う。


「うっま。脂すげえなあ」

「でしょ?」


 レグナフィリアは、焼き鳥をハフハフしながら食う。

 そんな様子を見ながら、俺は言う。


「お前、相変わらず猫被ってんだな」

「何よその言い方。しょーがないでしょ? もう二百年くらいギルマスやってるけど、今更こんな素を見せられるわけないじゃない」


 そう……こっちが本当のレグナフィリアだ。

 二百年前、『神秘的でミステリアスなギルドマスター』という雰囲気で王都のギルマスに就任し、そのままずっとそのキャラで通してきたせいで、王都中に『ギルマスは神秘的なエルフ』というのが伝わってしまい、そのキャラでやっていくしかなくなったのだ。

 

「アルノーは、早々に私のこと見破ったわよね」

「まあ、なんとなくな。それを言うならお前もだろ」

「ま、長生きしてるからね。あなたのジョブ……詳細は教えてくれないけど、いくつもジョブ持ってるんでしょ?」

「……デカい声で言うな」

「はいはい。ま、別にいいけどね。それより……あなた、王都に来ないの?」

「……まーたその話か」


 俺はエールを飲み干し、同じのを注文。


「俺は、ポータムでのんびりその日暮らしするのが好きなんだよ。王都は騒がしいし、面倒くさいことも多いしな。それに、もう三十五歳……冒険なんて、できないね」

「は、まだガキじゃない」

「エルフのスパンで言うなよ。ったく」

「はいはい。それより、キュレネたちには会った?」

「いんや、まだ。挨拶しに行こうとは思ってるけど」


 えーつが届いたので、俺は飲む……はあ、王都のエールはポータムのとまた違う味するなあ。


「『極星五傑(グラン・ステラ)』は毎日多忙だしねぇ、行くならアポ取った方がいいわよ。私が紹介状を書きましょうか?」

「グラン……なに?」

「あれ、知らないの? あなたの教え子五人、マルセム王国始まって以来最強の五人、今を代表する冒険者なのよ。それで、かっこいい呼び名を私が考えたの」

「……それが?」

「『極星五傑(グラン・ステラ)』よ。かっこいいでしょ? 王都マルシェを照らす五つの光、五人の英傑。ふふん、自分のセンスが恐ろしいわね」


 くっそ中二病みたいな名前だな……言ったらキレそうだし言わんけど。

 俺は焼き鳥を齧って言う。


「最近、あいつらどうしてるんだ?」

「言ったでしょ。みんな多忙。キュレネは劇場でダンサーたちの指導、ファルカは修行、ティンフェニアは王城での魔法指導、スティンギールは古文書解読……自由に冒険者をやってるのはエルレインくらいね」

「冒険者っていうか、みんな仕事人だな……ファルカ以外」

「まあ、みんな冒険者は副業になりつつあるわね」


 口直しに、野菜サラダを食べる。うん……さっぱりして美味しい。

 

「みんな忙しいのか。せっかく王都に来たんだし、挨拶でもって思ったんだが……まあ、あいつら全員、俺のことなんて忘れてるかもなあ」

「あ~……それはないんじゃない? ま、紹介状を書くから、明日にでもギルドに取りに来なさいよ。私の紹介なら、王様だって断れないしね」

「そういやお前、マルセム王国の建国にも関わってるんだっけ……なあ、正直な年齢、いくつなんだ?」

「知りたい?」

「…………やっぱやめとく」


 こうして、この日はずっとレグナフィリアと飲み続けるのだった。


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