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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第二章

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第28話

 さて、俺は自宅で旅支度をしていた。

 大き目のリュックに必要なモノを詰め込んでいく。


「着替え、キャンプ道具……クッカーに、テント、寝袋、釣竿。焚火台は……適当に石積んで作るか。ナイフにカトラリー……火は魔法で何とかなるな」


 キャンプギア、けっこう昔に作ったんだよな。シモンの店にも俺の商品がいくつか並んでおり、たまーに売れるとか何とか。

 

「王都で何日か過ごしたら、湖の町スーリヤでバカンスだ。グレースの別荘どんなところかな~……旦那と住む予定だった家ってのが重たいけど、まあ普通の家だろ」


 リュックに荷物を詰め、玄関に置いておく。

 武器は剣が一本あればいい。いざとなれば魔法でも戦えるしな。

 

「おっと……せっかくのバカンスを邪魔されるのは嫌だしな。みんなに会わないようにしないと」


 ラノベ的展開なら俺の知り合いがわんさと押し寄せ、みんなでバカンス……なんて展開になるんだろうけど、俺はそういうの望んでない!! なので……行くときはこっそり行くぜ。特に、エルレインとかにバレたら付いて来そうだし。

 出発は明日。書状をギルドで受け取ったら、そのまま王都へ向かおう。


「うし。しばらく留守にするし……冷蔵庫のモン全部食っちまうか」


 今日は、冷蔵庫掃除も兼ねて、家でメシを食うことにするのだった。


 ◇◇◇◇◇


 翌日。

 家の戸締りを確認し、ドアの鍵をしっかり掛け、庭の植木鉢の下に鍵を隠す……そこ、ベタって言うなよ。

 そして、冒険者ギルドへ。

 ギルマス部屋に行くと、グレースは煙草を吸いながら窓の外を見ていた。


「来たか。書状はそこにある」

「おう……よし、受け取った」


 テーブルにあった書状をリュックの中に入れる。

 グレースは、煙草を灰皿に押し付けながら言う。


「道中、気を付けろ……まあ、お前は心配ないだろうな」

「いやいや、普通に魔獣出たら逃げるぞ。討伐レートがB以上なら太刀打ちできないからな」

「本気で言ってるのか?」

「あったり前だ。俺はD級冒険者だぞ? さーて、知り合いにアレコレ言われる前に、さっさと出発するか」

「依頼を受けるのを忘れるなよ」

「はいはい。じゃあな、グレース」


 俺は軽く手を振ってギルマス部屋を出た。

 そして、そのまま一階にある受付へ。


「おうサラダ。グレースからの依頼、あるだろ。それ俺がやるから」

「はいはーい。えっと……ああこれですね。王都まで書状の運搬ですね。じゃあ、アルノーさんが受理したってことで」


 依頼書を受け取る。

 これで、依頼完了後にこの書状を王都のギルドに出せば、報酬が手に入る。

 そのあとは……ふふふ、バカンスの開始だ。


「アルノーさん、王都のお土産期待してますね~」

「ははは、忘れなかったらな。じゃあ、行ってくるわ」


 俺はリュックを背負い、冒険者ギルドを後にした。

 ここから王都まで、乗り合い馬車でなら二日で行ける距離だ。徒歩だと何日か必要だが、まあ歩いて行くのも悪くない。

 王都へ向かう道はしっかり整備されているので、魔獣こそ出るが見通しもよく比較的に安全だ。

 俺は町を出て、王都へ続く街道をのんびり歩き出す。


「ふーふふ、ふふふ、ふーふふ~ん……っと」


 青い空に白い雲、そして平原に吹く風、緑の匂い……なんて最高なんだ。

 

「湖の町スーリヤかあ……何度か行ったことあるけど、いつも素通りするからなあ。本格的なバカンスは初めてかも」


 王都も久しぶりだし、行ったことのない居酒屋とか発掘しようかな。異国料理のお店とか、そこでしか飲めないお酒とかも。

 ああそうだ。王都で酒を買って、別荘で飲むのもありだなあ。


「むふふ、むふ……」


 やっべえ、楽しくなってきた。

 というか、王都か。


「そういや、あいつら元気かな……」


 王都には現在、アルテミウスたちがいる。

 まあ、アルテミウスたちはいい。きっと冒険者として経験積んで頑張ってるだろうしな。

 俺が言ってるのは、過去に俺が指導をした四人の冒険者だ。


「全員、S級冒険者だし、俺が今更心配するような連中じゃないけど……まあ、挨拶くらいはしていこうかな」


 俺は、これまでけっこうな数の冒険者を指導してきたが……その中でも特に優秀な同期の五人がいる。

 エルレインは王都を拠点としていないからよく顔を合わせるけど、それ以外の四人は皆、王都で活躍している。

 S級冒険者は、ただでさえ少ない。全員が二つ名持ちで、さらに有名だ。俺の名前もちょっとだけ知られているのも、このS級冒険者たちが活躍しているせいもある。


「まあ、軽く挨拶して、さっさと湖の町スーリヤに行きますか」


 この時点で、俺は知る由もなかった。

 俺の指導した王都を拠点とする四人のS級冒険者が、厄介な問題を抱えていることに。


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