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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第一章

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第26話

「はいよ焼きそば一丁!!」

「かき氷、二つ入りまーす!!」


 収穫祭当日。俺は冒険者ギルド前で、大盛況の屋台を眺めていた。

 

「冒険者ギルドの焼きそばいかがですかー!! 私の師匠考案の料理でーす!! ふふん、私の師匠ですよー!!」


 あ、アルテミウス……なんてことを。

 俺はアルテミウスに近づき、後頭部を指で押す。


「あうっ、あれ師匠? どうしたんですか?」

「お前な、俺の名前出すな」

「いいじゃないですか。あ、師匠どうですどうです? かわいい衣装ですー」


 アルテミウスは、メイド服っぽいフリフリしたドレスを着ていた。

 正直可愛い……が、俺は適当に言う。


「似合ってる似合ってる。かわいいぞ」

「えへへ……って、なんか適当ですね」

「そうか? とにかく、客引き頼むぞ」

「はーい!! はあ、シャナも一緒にやってほしかったんだけどなあ。花火はまだまだ先だし、今はヒマなはずなのにー」


 ちなみにシャナは一人で町を散策してる。

 すると、焼きそば屋台から声。


「師匠、手伝ってくださーい!! オレだけじゃ厳しいっ!!」


 エリオの声。

 屋台に行くと、タンクトップにねじり鉢巻き、汗を流しながら料理人たちと一緒に焼きそばを作るエリオがいた。

 まだ子供なのにこの貫禄……正直、冒険者より料理人のが似合ってるな。

 

「師匠、ちょっとトイレ行きたいっす!!」

「しゃぁねえな。俺の焼きそばを見せてやろう!!」


 エリオと交換し、俺は豪快な手つきで焼きそばを作る。

 エリオが戻って来ても、しばらく一緒に焼きそば作りをした。そして、ユウナがいるかき氷屋台の方にも行くと、氷魔法で氷ブロックを作るユウナがいた。


「あ、師匠。お疲れ様です」

「おう、魔力は大丈夫か?」

「はい。魔力ポーション、飲んでますので」

 

 魔力ポーションっていうのは、魔力を回復させる薬だ。けっこう高いんだが、冒険者ギルドが大量に用意してくれたようだ。


「魔力が残った状態で飲み過ぎると頭痛するから気を付けろよ」

「はい。でも、私の作った氷でかき氷を作って、みんなおいしく食べてくれる……なんだか嬉しいです」

「はは、素直でいい子だ。その調子で……お?」

「やっほー!! かき氷くださいなー」

「わたしも~」


 エルレイン、ミアだ。

 手には焼きそば大盛。二人とも収穫祭を満喫しているようだ。

 俺はエルレインに言う。


「エルレイン。今回はいろいろ世話になったな」

「え、何が?」

「いろいろだよ。あっちの『ひも引き』の景品、ゴブリン退治と、苦労かけた」

「気にしなくていいわよ。その……あたしだって、アルノーには世話になってるしね。その……どうしてもっていうなら、今度ご飯でも奢ってよ」

「はは、それくらいならいつでもいいぞ。あと、ミアも」

「いやいや、私はいいよ別に~、じゃあそういうことで!!」


 なぜかミアは行ってしまった。エルレインが「ナイス」と小さく呟いた。なんだろう?

 エルレインとしばらく話をし、「じゃあまたね」と再び行ってしまった。

 すると、シモンがやってきた。


「おいアルノー、あっちでエールの飲み比べ大会やるみたいだぜ。行くだろ?」

「マジか!! 行く行く!!」


 さーて、俺も祭りを満喫するとしますかね!!


 ◇◇◇◇◇

 

 それから、収穫祭は順調に進んだ。

 俺たちの屋台は大盛況。というか、人気すぎて急遽、グレースが近くの空き家を使ってそこで店を臨時でオープンした。

 

 俺も、祭りを満喫した。

 エール一気飲み大会に参加したり、冒険者仲間と大騒ぎしたり、アルテミウスたちと一緒に町を巡ったり、エルレインと二人でメシを食ったり……年に一度の収穫祭は、今年もすごく盛り上がった。


 そして最終日。

 今日はエリオ、シャナ、シモンと一緒に冒険者ギルドの中庭へ。

 そこには、大筒があり、シモンが作った『打ち上げ花火』を最終チェックしていた。


「よし、これでいい。アルノー、点火は任せるぞ」

「おう。ギルドの職員がやってくれる。俺は特等席で見せてもらうぜ」

「……私たちも準備できたわ」

「へへ、弓士として腕がなるぜ」


 シャナ、エリオは専用の弓を使い、上空に『花火矢』を打ち上げる。

 鏃部分が球体になっており、放つと同時に少量の火薬が上空で破裂し、近距離での花火となる。

 夜になり、収穫祭の最終日ということで、町は一番盛り上がっている。

 日が完全に沈んだころ。俺は中庭に来たグレースに言う。


「最初の着火はお前に任せるぜ」

「……ふ。重大任務だな」

「エリオ、シャナ、最初の一発が上がったら、お前たちの出番だ」

「ええ」

「よっしゃ!!」

「じゃあ……グレース、頼む」


 グレースは頷き、指をパチンと鳴らして親指に火を付ける。そして、導火線に着火。

 油がしみ込んだ導火線が燃え、筒に向かって火が伸び……ドカンと筒から発射された。

 上空に撃ちあがった花火は一気に破裂。カラフルな光砂がキラキラと輝く。

 冒険者ギルドの屋上にいるユウナが、風魔法で光砂の流れを調整。俺が知っている花火が上空に咲いた。


「「…………」」


 シャナ、エリオは自分たちが矢を放つことも忘れ、上空に見入っている。

 グレースも、花火に釘付け。打ち上げ専門の職員たちも同じだった。

 たぶん、町も同じだろう。いきなり上空が輝き出せば、驚きしかない。

 

「たーまやー!! さあ、エリオにシャナ、頼むぜ!!」

「「っ!!」」


 二人は思い出したように顔を見合わせて頷き、矢を放つ。

 小規模の花火が次々と破裂、単色の花火から二色、三食、そして俺も知らなかったが……複雑な形状をした花火が撃ちあがった。シモンのやつ、ただ破裂させるだけじゃなくて、こんな仕込みもしていたのか。

 あとは、任せても大丈夫だろう。

 俺は冒険者ギルドの屋上へ。そこには、アルテミウス、エルレイン、ユウナがいる。

 しばらくすると、弓矢を他の職員に任せて屋上に来たエリオ、シャナも合流。

 みんなで花火を眺めていると、アルテミウスが言う。


「師匠。私……師匠に出会って、鍛えてもらって、冒険者になって……本当によかったです」

「……そうか」

「オレも!! なあユウナ」

「うん。すっごくたのしくて、いい思い出……シャナさんは?」

「まあ、そうね……悪くないわ」


 子供たちは、キャッキャしながら上空を見上げている。

 俺は一歩下がる。すると、エルレインが隣に来た。


「ね、アルノー……なんだか昔を思い出すわ」

「昔って、お前が新人のころか?」

「うん。昔は、五人で冒険してたけど……あの四人を見てたら、昔を思い出した。みんな元気にしてるかな」

「キュレネとは王都でいつでも会えるだろ。他の三人だって」

「みんなS級だし、忙しいからね。アルノーだって会ってないでしょ?」

「まあな。でも……会えなくてもいいんだよ。俺のことなんか忘れて、自分の人生を歩んでくれたら、俺はそれでいい」

「寂しいこと言うわね……あたしは、忘れないけど」


 エルレインが、少しだけ近づいてきた。

 なんとなくむずがゆくなり、俺はエルレインの背中をバシッと叩き、前に押し出す。


「さ、冒険者の先輩。あいつらのところ行けよ。子供同士、仲良くお喋りしてくるといいさ」

「ちょっと、あたしもう子供じゃないから。まったく……意気地なし」


 エルレインはプンプンしながらアルテミウスたちの元へ。すぐに馴染み、楽しそうに話し始めた。初めて会った頃とは比べ物にならないくらい、仲良しになれたな。

 一人でいると、グレースが隣に来た。


「……一人が似合う男、そう思っているのか?」

「うるせ。教え子の成長を見守る保護者みたいな気持ちだよ」

「……そうか。アルノー……カイザーゴブリンの件だが」

「驚いたよな。仲間割れでもしたのか、未確認の上位種と三匹まとめて死んでたよな」


 カイザーゴブリンの死因は『仲間割れ』だ。

 ブレインゴブリンの反乱、未確認のゴブリンであるアーマードゴブリン、バリアントゴブリンの二匹をブレインゴブリンがけしかけ、共倒れになっていた。

 そこに俺が登場し、死んだカイザーゴブリンの首を手にみんなに報告した、ってわけだ。


「……そういうことにしておこう。お前は認めるつもりがなさそうだしな」

「なんのことやら」


 しばらく、グレースと空を見上げていた。

 グレースは煙草の煙を吐き出していう。


「また明日から、日常が戻って来るな」

「そうだな。あいつらも王都に戻って、冒険者活動を再開する。功績を積んで、等級上げて……来年には、全員がC級……いや、B級くらいには上がるだろうな」

「お前は、D級のまま、か」

「ああ。それでいいんだよ。俺はもう、ずっとのこのままだ。今の生活で満足してる。たとえ、俺がすごい力を持っていたとしても、何も変わらないさ」

「……ふ」


 こうして、収穫祭は終わった。

 また、新しい日常……いつもの新しい日常が戻ってくる。

 冒険に出て、依頼をこなして、日銭を稼いで、ちょっと貯金して、メシと酒を楽しんで、また明日になる。

 俺の、異世界転生した日常は、これからも続いて行く。

 

 俺の名はアルノー、三十五歳、異世界で冒険者やっています。

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