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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第一章

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第22話

「……どうも、師匠」

「お、おう」


 ユウナに会いに行くと、どんよりしていた。

 エルレインの家から出て来たユウナは……なんというか、怖かった。

 隈を帯びた目、髪はボサボサ、パジャマの上にローブを着ており、持っていた杖はなぜか折れていた。

 アルテミウスも一緒なのだが、心配するように言う。


「ユウナ、なんだかうなされたみたいで……寝言で『どら、ドラゴン』とか『牙、くわ、食われ』とかずっと言ってて」


 重症すぎる……ちょっと可哀想だ。

 するとユウナ。


「師匠、聞いてください……初期スキル、全部覚えました。地水火風、草氷雷、全部です全部……ふふ、ふふふ。ドラゴンに食べられそうになった瞬間、心がぶわーっと」

「お、落ち着け。うん、大丈夫大丈夫。ささ、これ飲んで」


 俺は差し入れで買った果実水をユウナに渡す。ついでにアルテミウスにも。

 ユウナは一気飲みし、袖で口を豪快に拭った。


「っかぁ、生き返りますわ。へへ」

「きゃ、キャラ変わってる……」

「うう、かわいくてヒヨコみたいだったユウナが、なんだかドラゴンの赤ちゃんみたいになっちゃいました」


 例えがよくわからん。

 でもまあ……時間置けば直るだろ。

 俺は咳払いし、ユウナに言う。


「さてユウナ。お前にはやってもらうことがある。覚えてるか?」

「ええ、ええ。かき氷用の氷作りと、風魔法でその、花火でしたっけ? 光砂を整えるでしたっけ」

「ああ。シャナ、エリオは打ち上げ花火のために弓の練習頑張ってるし、お前も頑張ってもらうぞ」

「ええ……ふへへ、ドラゴンの鼻息浴びるのに比べたら、なんてことないですわ」


 キャラ違い過ぎて違和感あるな……カウンセリングとか受けさせた方がいいかもな。どっかの教会とか探して置こう。


「はいはい、師匠。そろそろ私も出番欲しいです!!」

「お前には当日、大事な役目あるぞ」

「それそれ。練習とかしなくていいんですか? というか、何をするんですか?」

「もちろん、呼び込みだ」

「……呼び込み?」

「ああ。お客さんを呼ぶ大事なお仕事だ」

「おお、そりゃ重要ですね!!」


 まあ、専用の衣装とか着てもらうけどな!! もちろん常識的な範囲で。

 そのへんはまだ秘密……とにかく今は。


「ユウナ、俺の知り合いの『魔法師』に、風魔法のスペシャリストがいる。そいつに指導してもらって、風魔法の中級スキル、『エアコントロール』を習得してもらう。そして、そのスキルで上空に打ち上げた光砂を、理想の形に整える特訓だ」

「わかりました。おまかせください。へっへへ」


 というわけで……俺の『知り合い』を呼んで来るとしますかね。


 ◇◇◇◇◇


 場所を変え、郊外にある森の中。

 町からけっこう離れた距離にあるので、ここでならいろいろドンパチしてもばれないだろう。

 アルテミウス、ユウナに先に行ってもらい、『俺』は用意をして森へ向かった。

 静かな森の中を進み、開けた場所へ。


「あ、師匠……あれ」

「……どなたでしょ?」

『……アルノーの知り合いだ』


 全身黒ずくめ、マントにフード、仮面をつけた『俺』だ。

 肌の露出も一切なし。声も違う。


『アルノーの知り合い、ジョブ『魔法師』を持つ……ワイズマンだ。お前に風魔法の指導すするために来た』

「「…………」」


 め、めちゃ見てくる……特にアルテミウス。


「あの~、師匠は?」

『彼は用事があると、指導は任せたと言っていた』


 そう、『俺』ことワイズマン……変装した俺、アルノーだ。

 俺のジョブ『自由人』のジョブストックに『魔法師』はある。それも、十年以上前にゲットして鍛えてるから、もう上級スキルもほとんど覚えたし、ベテラン魔法師と言っても問題ない。

 顔を隠したのは、こいつらには少しバレてるとはいえ、俺がいくつものジョブを所持し、切り替えるということをはっきりと見せたくないからだ。

 ワイズマン……っていうのは適当な名前だ。子供のころプレイしたゲームに、そんな名前のキャラクターいた気もする。


「うーん、師匠じゃない。声も違うし……?」

『……指導を始める。ユウナだったか、こっちにこい』

「はい、へへへ、お願いします」


 ちなみに、声が違うのは発明品である『声変わりガス』を使ったのだ。

 まあ、異世界版ヘリウムガスって感じか。吸うと声変わるんだよ。ジョークグッズとしてシモンの店に持ち込んだら『くだらん』の一言で却下されたけどな。

 さて、真面目に指導するか。


『まず、中級スキル「エアコントロール」を習得してもらう。俺の使う魔法をよく見て、現象を理解しろ。スキル習得はそこから始まる』

「はい。あの~……覚えることできなければ?」

『風魔法の初期スキル、「エアスピン」でやるしかない。その場合、完全に花火の形状を整えることはできないだろうがな』


 まあ、最悪の場合……俺がやるつもりだ。

 持参した紙に、打ち上げ花火が破裂したような、大輪の火花の絵を見せた。


『これが、花火が上空で破裂した場合、光砂が描く光景だ。このような形になるように桐生を操作し、光砂の流れを整える』

「……えと」

『見せてやろう』


 俺は真っ黒な小瓶を風魔法で上空に浮かべ、破裂させる。

 漆黒の光砂が上空にバラまかれ青い空を染める……そこで、俺は右手を上げる。


『中級スキル、「エアコントロール」』


 すると、気流が変化し、光砂が打ち上げ花火のような、綺麗な形となり舞う。

 唖然とするアルテミウス、ユウナ。

 俺は小規模の竜巻で光砂を集め、右手に持った新しい小瓶に全て納めた。


『こんな感じだ』

「神業ですよ!? でで、できません!!」

『大丈夫。今のはただバラ撒いただけ。実際には、放物線を描くように光砂が舞う。それらを整えるだけでいい』

「ええええ……」

『さあ、やるぞ。まずは気流を操作するイメージで』

「は、はひぃ」


 こうして、俺こと『ワイズマン』とユウナによる修行が始まるのだった。

 ユウナは、意外にも早く『エアコントロール』を覚えた。俺が上空に光砂を打ち上げ、破裂した花火のような形にし、わざと形を崩してユウナに風で整えてもらったりした。

 アルテミウスはヒマなのか、剣を振ったり、ユウナの汗を拭いたりしていた。


『完璧を目指さなくていい。まずは、形を整えることだけを優先しろ』

「は、はひ」


 ユウナを指導してわかったが……この子はイメージをする力が高い。

 花火のイメージもつかめたのか、気流操作で上空の光砂を操るのも苦じゃなさそうだ。

 よしよし、これで特訓を積めば、花火もいけるだろう。


『よし、休憩後。もう一度だ』

「はい、師匠」

『えっ』

「あ、すみません。思わず……えへへ」


 び、びっくりした……うん、俺はワイズマン、アルノーの知り合い。そうだよな!!


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