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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第一章

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第21話

三日後、エルレインとユウナが戻ってきた……が。


「ただいま、アルノー」

「お、おう……いやはや、すげぇなあ」

「そこそこ苦労したわ。さて、ボルケーノドラゴンの素材なら、収穫祭の商品として申し分ないでしょ」

「十分十分。感謝するぜ、エルレイン」


 ボルケーノドラゴン。このあたりでは最強レベルのドラゴンだ。

 討伐レートSS……エルレインでも苦戦するかと思ったが、見たところ怪我らしい怪我もしていない。


「にしても……デカいなあ」


 冒険者ギルドの前には、氷漬けのドラゴンが巨大な台車に括り付けられていた。

 ドラゴン、とにかくでかい。

 日本人だったころ、自衛隊の戦車を間近で見たことあったが……それの数倍以上のデカさだ。

 ボルケーノドラゴン。深紅の竜皮、首長で胴体は丸みを帯びており、手足が短く翼も退化して小さい。重量級といえばいいのか、見るからに頑丈そうだが……頭と首が見事に両断されており、傷も少ないことから即死だったのかもしれない。

 

「ところで、ユウナは?」

「ああ、疲れたのかあたしの家に置いてきた。いやー、あの子、ドラゴンの咆哮を真正面から聞いてショック受けちゃってさ、でも死ぬ気で戦わせたから、氷属性だけじゃなくて、草属性と雷属性の初期スキルも全部覚えたわよ」

「おま、何してんの!? てか全部!?」


 スキルの覚え方はいくつかある。

 たとえば『剣士』とかの戦士系スキルだったら、その技をなぞって身体に覚えさせて、スキルを得るってのが普通。

他にも精神的成長とかショックで覚えることもあるけど……あれだあれ、漫画とかである『ピンチになると都合よく新しい力に覚醒する』ってやつだ。

 ユウナの場合、ドラゴンに真正面から対峙して、何度も『死』を感じたことでいくつもスキルを覚えた、ってことか……なんかエルレインに預けたの間違いだった気がする。今度会ったら謝ってメシでもおごろう。


「ま、とにかくあたしの仕事は終わりね。あとは何を手伝う?」

「い、今はいいよ。お前もドラゴンと戦ったんだし、ゆっくり休め」

「うん。ね、今度ご飯とお酒、一緒にどう? あたしのドラゴンとの戦い、じっくり聞かせてあげる」

「はは、また今度な」


 エルレインと軽く拳を合わせる。そして、エルレインは冒険者ギルドに入っていった。これからドラゴンを解体し、素材を分けておくんだろう。

 

「よし、これで『ひも引き』の商品も何とかなるな」


 焼きそば、かき氷の屋台は準備完了。ひも引きの商品もこれで完了。

 あとは、メインイベント……『納涼打ち上げ花火』の準備だな。


 ◇◇◇◇◇


 二日後、俺はシモンの店に来ていた。

 店にいたのは店主のシモン、そして冒険者後輩のミア。

 カウンターの前には、半透明の球体がポツンと置いてあった。


「で、なんだこりゃ?」

「ふっふっふ。俺の新発明、そして収穫祭を彩る最強武器だ」

「アルノーさんの妙な発明ですねぇ。わくわく」


 ミアがワクワクしながら球体を指でつつく。シモンはそれを手に取り、すぐに気付いた。


「プラティックカブトの外殻か」


 触っただけで気付いた。

 プラテックカブト。ツルツルした半透明の甲殻に覆われた『デカいカブトムシ』だ。色は灰色っぽい白。討伐レートもDと高くない。まあ、デカいカブトムシといっても大きいのではライオンくらいデカいのでかなりキモイと言われている……正直、俺は嫌いじゃない。だってカブトムシってかっこいいし!!

 じゃなくて。プラテックカブトの外殻は、やや硬めのプラスチックみたいで加工が容易であり、溶かして固めることで、この世界ならではの『プラスチック製品』となるのだ。というか俺が作った。

 が……やっぱり『虫の外殻を元にした食器』というのがダメなのか、ぜんぜん売れなかった……別にいいけどな!! 俺んちの皿とかカップとか、全部俺特製のプラスチックだし!!


「で、これがなんだ? ん……何か入ってるのか?」

「ご明察。と……さすがに実演するわけにもいかんから、それが何なのかだけ説明させてくれ」


 俺は、カバンからプラスチックの小さな玉をいくつも出し、テーブルに置く。

 大きさは指先よりもやや大きい。


「……ほう。デカい球の中に、この小さい球が入ってんのか」

「ああ。でも、ただの弾じゃない。その小さい球の中には……こいつだ」


 俺は小瓶に入った光砂をいくつも出す。

 赤、青、黄色、白、ピンク、紫、オレンジ……出せるだけ出した。

 ミアは「光砂? あたしも持ってますよ」とポケットから緑色の光砂の小瓶を置く。

 シモンは目を細め、光砂を見て、小さい玉を、そしてそれら全てが詰まった球を見て、最後に俺を見てニヤリと笑った。


「なーるほどな……火薬のアテは?」

「さすがシモン。理解したか」

「おう。いつもクソくだらねえゴミしか持ってこないお前だが、収穫祭に関してって意味ではいいアイデアだ」

「おい、クソくだらねえ、ゴミってなんだおい」

「問題点がいくつかあるな。まず、上空で小さい球が破裂するか。そして、光砂がちゃんと撒かれるか」

「いちおう、風魔法の補助も考えてる。それと……細かい問題点を解決するために、お前に依頼するんだよ」

「……お前なぁ。収穫祭まであと二週間もねぇぞ。改良だけじゃねぇ。派手にするならサイズも変えねぇといけねぇな。数も必要だろ……いくつほしい?」

「ざっと……二千」

「あぁぁ!? おま、馬鹿か!?」

「だからお前に頼んでるんだよ。もちろん、冒険者ギルドから報酬も出る。できるか?」


 シモンは大きくため息を吐き、頭をボリボリ掻いて舌打ちした。


「こりゃ、しばらく店閉めねぇとな」

「できるのか?」

「フン。店の休業分の売上も請求するからな」


 俺はシモンに拳を向けると、シモンもコツンと合わせてくれた。


「あのあの、二人で盛り上がんないで、いろいろ説明してくださいよ~」

「ちょうどいい。おいミア、シモンの手伝いしてくれ。お前、手先器用だぞ」

「へ?」

「それもいいな。ミア、手ぇ貸せ」

「え。え、ちょ」


 ミアはシモンに首根っこ捕まれ、店の奥に引きずられていった。

 うし、これで打ち上げ花火もなんとかなる。


「あとは、風魔法だな」


 シモンの腕前なら、上空で綺麗な花火を上げることも不可能じゃないだろうけど……ユウナに、上空での『光砂』をコントロールさせるための精密な魔力制御を指導しないと。

 さすがに、こればかりは他人に任せるわけにはいかないか。

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