第18話
ギルドラウンジ。日中はそんなに混んでいない。
依頼を終えた冒険者が雑談したり、次の冒険の予定を立てたり、依頼後に酒を飲んだりする憩いの場。
俺、アルテミウス、シャナ、エリオ、ユウナ。五人でボックス席に座った。
ちなみに俺の奢り。四人は遠慮なく甘いものを頼み、席に届くなりバクバク食べ始めた……育ち盛りだねぇ。
俺は紅茶を飲み、五人を見て言う。
「……強くなったな、お前ら」
「ふふん、もちろんです。もぐもぐ。わらし、もうD級に昇格して、もぎゅ」
「食うか喋るかどっちかにしろ。ユウナも、エリオも強くなったな。シャナも……うん、成長してる」
アルテミウスは『連装士』で、ユウナは『魔法師』で、エリオは『弓士』で、シャナは『隠密士』だ。
まあ、漫画みたいに見ただけで強さなんてわからんけど……雰囲気というか、落ち着きというか、場数を踏んだように見えなくもない。
アルテミウスはフルーツ盛り合わせを完食し、水をガブガブ飲んで言う。
「げふっ……ふう。師匠、私、D級になりました。師匠と並びましたよ!!」
「はいはい、そりゃよかった」
「師匠、オレとユウナはE級になったぜ!! へへ、新しいスキルも覚えたんだ!!」
「あう、エリオ……わたし、自分で言いたかったのに」
「……あたしもD級。ま、通過点ね」
四人はワイワイ楽しそうに喋っている。
仲間、か……仲良くやってるようで。あ、そうだ。
「なあ、お前らは収穫祭に参加するんだよな」
「はい。この町の収穫祭は有名ですからね。王都からも、収穫祭のためだけにこの町へ来る人、けっこういるみたいです」
「臨時の馬車も出るみたいだぜ。ま、オレらは歩きで来たけどな!!」
「正確には、馬車代が四人分ないからだけどね」
「……しょうがないわ。全員の装備のメンテナンス代金、けっこうするんだもの。特に、テミスの武器は特殊だからね」
テミス。聞きなれない言葉だったのでシャナを見ると、エルフ耳がぴくっと動く。
「……アルテミウスって長いし言いにくいから、略しただけ」
「えへへ、愛称っていいですね。私、初めて嬉しいです。ありがと、シャナ!!」
「お礼なんていらないから。ふん」
ほほー、ツンデレっぽいね。ツンデレエルフ……悪くない。
すると、エリオが言う。
「師匠。師匠はなんか、変わったことないんすか? C級になったとか、大魔獣を討伐したとか」
「んなもんない。昇格試験とか受けてないから、俺はD級のまま。お前らも、俺のことなんか気にせず、どんどん等級上げていけよ」
「……でも師匠って、本当は」
ユウナが何か言おうとしたので、俺は手で制する。
すると、ユウナは口を抑えた。そう……こいつらは俺が本当は強く、実力を隠していることを知っている。
ジョブ『自由人』の詳細こそ説明していないが、『剣士』ではあり得ない魔法とかスキルとかを使うところ見せてしまったからな。
俺はコホンと咳払いする。せっかくだ、こいつらも巻き込むか。
「なあ、収穫祭のことだけど……お前らさ、俺の依頼を受けないか?」
「「「「依頼?」」」」
おお、ハモッたぞ。
俺は紅茶を飲み干して喉を潤し、収穫祭で冒険者ギルドが毎年出店してることなどを説明する。すると、アルテミウスが挙手した。
「はいはい!! つまり、今年は師匠が冒険者ギルドを代表して出し物するってことですか!?」
「ああ。エルレインが手を貸してくれることは決まったけど、他にも手が欲しくてな。もちろん、謝礼も出すぞ」
「やりまーす!! なんだか面白そうです!!」
「えー? でもでも、手伝いなんかしたら、収穫祭の当日、祭りを見て回れねーんじゃね? オレ、出店回るの楽しみにしてるんだけどなー、収穫祭で美味いもんいっぱい食うために依頼の報酬とか貯金してたんだぜ」
「エリオ。師匠が困ってるんだよ? ていうか、貯金って……馬車代、出せたんじゃない?」
「う、うっせえ」
エリオの言うことはもっともだ。シャナは肯定も否定もなく、目を閉じて話を聞いている。
俺はエリオに言う。
「もちろん、最初から最後までってわけじゃない。収穫祭は五日間開催されるからな。冒険者ギルドの職員も交代で参加するし、お前たちにはメインイベントの手伝いを頼みたいんだ」
「「「「メインイベント?」」」」
おお、またハモッたぞ。なんか息ピッタリで面白いな。
俺は頷き、少し身体を前のめりにする。
「おう。最終日、冒険者ギルドでやるイベントだ。それに参加してほしい。多少の『練習』は必要だけど……そうだな、この中だとエリオ、ユウナ、シャナは活躍できるな」
「え、師匠、私は!?」
「お前は別。どうだ? イベントに参加すれば、お前たちの名前も多少は売れるぞ?」
四人は顔を見合わせ、うんと頷いた。
「やります!! 師匠、お手伝いさせてください!!」
「やるぜ!! 盛り上がるなら楽しそうだ。それに、最終日だけなら四日間は祭りを楽しめるぜ!!」
「わ、わたしでお手伝いできるなら……ドキドキするけど」
「……ま、少しは恩を返さないとね」
俺は手をパンと叩き、親指をグッと立てた。
「決まりだな。うし、じゃあ『収穫祭・冒険者ギルドチーム』で頑張ろうぜ!!」
「「おー!!」」
「は、はい」
「……なんかダサいわね。まあ、やると決めたからには手は抜かないから」
こうして、アルテミウスたち四人をチームに加え、収穫祭の準備を開始するのだった。
◇◇◇◇◇
ギルド一階に行くと、なんだか騒がしかった……って。
「あ、いた」
「おま……エルレイン」
エルレインだ。
酒の席で醜態を晒していた昨日とは打って変わって、今は凛々しさしか感じない。
俺を見るなり近づき、顔をグイッと寄せてくる。俺は思わずのけぞった。
「な、なんだよ……顔近いぞ」
「収穫祭の打ち合わせ、するわよ。シャワー浴びたらスッキリしてね、今ならどんな無茶な要望だろうと聞いてあげる。必要な素材があればいくらでも狩るわ……ん?」
と、エルレインは俺の背後にいる四人を見た。
四人はビクッと姿勢を正す。
「ああ、アルノーの教え子?」
「そうだ。こいつらも収穫祭の手伝いしてくれるんだ」
「ふーん。ふむ……子供だしいいか別に」
「あ?」
「なんでもない。さて、自己紹介していい?」
「その前に移動だ移動。こんなギルドのど真ん中で、お前みたいに馬鹿目立つS級と、冴えないD級のおっさんが談笑してると妙な勘繰りされるだろうが」
「妙な勘繰り? ふふん、アルノーもそういうの気にするの?」
「ああ、平穏な生活、冒険には不必要だからな。とりあえず、適当な飯屋でも行くぞ」
「そうね。さてキミたち、自己紹介はあとにして、行きましょうか」
「「「は、はい!!」」」
「……『剣聖』と、本当に知り合いなんだ」
アルテミウスたち三人は緊張マックス、シャナは驚いたように俺を見ていた。
日中でよかったぜ。夕方とかだったら、依頼終わりの冒険者たちが集まって、さらに目立っていただろうからな。




