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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第一章

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第12話

 さて、アルテミウスたち三人でチームを組ませ、しばらく経過した。

 シャナの件で、しばらく三人から離れていたので、どういう成長をしたのか確認するため、久しぶりに討伐に同行したのだ。


「はああああっ!!」

「アルテミウスさん、援護します!!」

「おれは木の上を!!」


 現在、森の中でオーガと、その手下であるコボルト数匹と戦っている。

 アルテミウスがオーガと立ち回り、ユウナが魔法師の初級スキル、『火魔法』の一つ『ファイアボール』でコボルトを牽制、エリオが後方にて木の上で弓を手にしているコボルトを狙って矢を放つ。

 俺はというと、その三人を後方から見て指示を出す。


「エリオ、コボルトを狙う順番に気を付けろ!! 矢を番えてるヤツを優先!! ユウナは火魔法だけじゃない、水魔法、風魔法と使い分けて戦え!! 森の中だと火事になることもあるぞ!! アルテミウスは周囲に気を配れ、広い視野を持て、お前の仕事は戦うことだけじゃないくて、守ることもあるぞ!!」


 三人は「はい!!」と叫ぶ。

 この三人、成長が早い。新人にありがちな反抗心が全くないので、俺の教えに対し文句をつけることもなく、言う通りに動き対応していく。


「ふむ……強くなったな」


 アルテミウスは、風と雷の使い分けが上手くなりはじめ、ダンシングステップのレベルが一つ上がった。

 エリオは『弓士』の初級スキル『鷹の目』を習得。このスキルは弓士が最初に覚えるスキルで、簡単に言えば『目が良くなる』スキルだ。弓矢の使い方も教えたので、矢を放つことはできるようになった。

 ユウナは、『火魔法』と『風魔法』と『水魔法』の初級スキルを手に入れた。

 三人とも成長している。もう、俺の出番もないかもしれんな。


 ◇◇◇◇◇◇


 魔獣を討伐し、この日はキャンプをすることにした。

 テントを張り、焚火をする。

 冒険者にとって野営はできて当たり前。野営に関する知識も三人には叩きこんだ。

 若いからなのか、この三人は教えたことをグングン吸収する。

 食事は、野菜スープに、さっき倒したコボルトの肉だ。塩コショウだけの味付けだが、コボルトの肉はそれだけでも美味い。

 食事をしていると、アルテミウスが言う。


「あ、そういえば私……実家から正式に絶縁されました」

「いや……そんな明るい声で言う話じゃないだろ」


 思わず言う。

 アルテミウスは「あはは」と笑う。


「いいんです。私、不遇ジョブですし、政治の道具にもならない半端者ですから。むしろ、やっと絶縁できたーって感じです。私は、アルテミウス。ただのアルテミウスとして、本当に冒険者になれた気がします」


 エリオ、ユウナはアルテミウスが貴族の令嬢とは知っていた。詳しい事情までは知らなかったのか、手を止めてアルテミウスを見ていた。


「はー、すっきりしました。えへへ……でも師匠、不遇ジョブの私が、ここまで強くなれたってこと知ったら、両親は驚きますかね」

「驚くだろ。むしろ、お前はまだまだ強くなるよ」

「えへへ……うれしいです」


 アルテミウスは嬉しそうに微笑んだ。そして、エリオが言う。


「あの!! アルテミウスさん!!」

「なに?」

「その……おれ、強くなります。アルテミウスさんが思いっきり戦えるように、強くなりますから、だから……これからもよろしくお願いします!!」

「……うん。ありがとう、これからもよろしくね」

「はい!!」

「あの……わ、わたしもです。わたしも……強くなりますから」

「うん。ユウナちゃんも、ありがとう。ふふ……私、本当に嬉しい。二人みたいな仲間に出会えて……夢だった冒険者になれて、チームを組めて」

「「……アルテミウスさん」」

「師匠にも、感謝しています。本当に……私」

「待った」


 と、俺は止めた。

 ここで終わらせるのはいいけど、俺は言う。


「アルテミウス、エリオ、ユウナ。お前ら三人とも強くなった。もう俺の教えは必要ない。あとは、お前たち三人で強くなれ。だから……最後、俺からの卒業課題を出すぞ」

「「「卒業課題……?」」」


 ほんと息ピッタリだな、こいつら。

 

「ああ。今、お前らの冒険者等級はF級だ。課題は、E級への昇格だ」

「昇格試験、ってことですか?」

「ま、そうとも言う。こいつを見ろ」


 俺は、冒険者ギルドから持って来た討伐依頼書を取り出す。


「討伐レートD、ゴブリンチャンピオンの討伐だ」

「と、討伐レートDって……お、おれらで、ですか?」


 ちなみに、さっき倒したオーガが討伐レートEで、コボルトはFだ。ゴブリンもFであり、魔獣としては一番弱い部類である。

 現在、アルテミウスたちの冒険者等級はF級。冒険者規定で『魔獣討伐依頼を受ける場合、自分の冒険者等級の二段上までと限る』とある。つまり、F級のアルテミウスたちは討伐レートDの魔獣討伐を受けることができる。

 討伐レートは、危険度である。討伐レートFが最低で、最上級はSSS……まあ、生きてる間に遭遇することはまずないけどな。


「実はすでに、等級試験として依頼を受けてある。こいつを倒して冒険者ギルドに報告すれば、お前たちは晴れてE級冒険者だ」

「えええ!? そ、そうなんですか?」

「ああ。悪いな、勝手なことして。でも、お前たちにはその資格はあるし、E級冒険者としての実力はあると思ってる」


 俺は焚火にくべてあるポットを掴み、カップに注ぐ。


「今日は俺が夜警をする。お前らは、ぐっすり寝て、いつも通りに起きろ。明日は勝負の日になるぞ」

「「「……」」」


 三人は緊張しつつ、しっかりと頷いた。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 三人は起き、顔を洗い、朝食を食べ、装備を整えた。

 万全の状態だ。俺の前に整列する。


「よく寝たようだな。じゃあこれより、卒業試験もとい、昇格試験だ。いつも通りにやれば問題なく倒せる……いいか、俺は指示をしない。これまでの教えを思いだして、自分たちで……いや、チームで倒せ」

「「「はい!!」」」


 ほんと素直な子供たちだな。

 さっそく、ゴブリンチャンピオンのいるゴブリンの巣穴へと出発した。

 実は、現在位置からそう遠くない……まあ、今日が本番だからそうなるよう場所を調整したんだけどな。

 到着したゴブリンの巣穴の近くで、俺は三人に言う。


「この中に、ゴブリンチャンピオンがいる。意外なことだけど、ゴブリンチャンピオンは群れることを嫌う。配下に数匹の従えてて、狩りとかも自分でする。まあ、戦うのが好きなゴブリンでな……お」


 と、ここまで言うとゴブリンが這い出てきた。

 ゴブリンチャンピオン。身長三メートルくらいあるゴブリン。筋骨隆々というより、ややメタボリックなゴブリンだ。だが……腕だけはムッキムキなのがすごい。

 配下のゴブリンは三匹。手には棍棒を持っている。

 俺は小声で言う。


「さて、どうする?」

「はい、まずはあの三匹を、おれの矢で倒します」

「わたしは、水魔法でゴブリンチャンピオンの気を引きます」

「その間に、私が接近して、必殺の一撃を叩きこみます」

「そうか。じゃあ、あとは任せる」


 俺は距離を取ると、三人は相談を始めた。

 そして、三人が同時に頷くと、緊張したエリオが矢を三本抜き、一本を番える。

 アルテミウスはマスクを着け、両手のブレードを展開。

 ユウナはブツブツ言うと、水魔法の初級スキル『アクアボール』を作り、ふよふよと飛ばす。

 そして、アクアボールがゴブリンチャンピオンの頭上で破裂し、ゴブリンチャンピオンの顔が水で濡れ、めんどくさそうに顔を拭った瞬間……エリオが矢を放つ。

 ゴブリンチャンピオンが顔を拭った瞬間、アルテミウスはブレードに雷を纏わせ、両足に風魔法の『エンチャント・エア』を展開、地面を滑るように移動した。

 

「ッッ!!」


 閃光のようだった。

 矢は三本、一本はゴブリンの脳天、一本は心臓、一本は口の中に刺さった。

 エリオが舌打ちした……口の中に刺さったゴブリンが死んでいない。

 それだけじゃない。


『グガォオオオオオオオオオ!!』

「くっ……」


 ゴブリンチャンピオンの首を切裂いた。致命傷なのか血が噴き出している。だが……死んでいない。

 ゴブリンチャンピオンは首を押さえていたが、青筋を浮かべ足元にいたアルテミウスを睨みつけた。

 そこに、ユウナの放った『ファイアボール』が顔面に命中。フラッとした瞬間、アルテミウスが飛び上がり……両手のブレードを、ゴブリンチャンピオンの喉に突き刺した。


「ああああああああああ!!」

『オッッゴゴゴォォォォォォ……ォ、ォ』


 ゴブリンチャンピオンが白目を剥き、そのまま後ろに倒れた。

 口の中に矢が刺さったゴブリンも、ようやく死んだ。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 アルテミウスは、汗びっしょりだった。

 ブレードを引き抜き、しゃがみ込んだ。

 エリオは動けない。ユウナもぶるぶる震えていた。

 俺はゆっくり歩きだし、エリオ、ユウナの背を叩いてアルテミウスの近くまで進ませて言う。


「ギリギリだな。まずアルテミウス……緊張しすぎて手元が狂ったな? あの威力なら、首を飛ばせた」

「う……」

「エリオは、一発ミスしたな? さらにその後の追撃がなかった。アルテミウスのミスに気付いても動けなかった」

「……うう」

「ユウナは満点。アクアボールでゴブリンチャンピオンの注意を引き付ける役目だけじゃなく、作戦にないファイアボールでアルテミウスの援護もできた。一人でも冷静な判断ができるチームは、生存率もあがる。今回は二人とも、ユウナに感謝だ」

「そ、そんな、わたしは」

「トータルで、ギリギリ合格。三人とも、よくやったぞ」


 俺はしゃがんでいるアルテミウスに手を差し伸べると、アルテミウスは目を潤ませて俺の手を掴み立ち上がり、グスグス泣き出した。


「ううう、師匠おおおお……」

「ほら泣くな。強くなったよ、お前は。もう立派な冒険者だ」

「うええええええええん……」


 アルテミウスの頭をポンポンと撫でていると……ゴブリンの巣穴から、新たな気配がした。

 現れたのは……ゴブリンチャンピオンではない。

 身長二メートル以上、筋骨隆々、手に立派な剣を持ったゴブリンだった。

 アルテミウス、エリオ、ユウナは驚愕し、汗を流す……こいつの持つ『圧』は、ゴブリンチャンピオンの比ではない。

 俺は知っていた。


「ゴブリンナイトか。てか、なんでここに……」

「ご、ゴブリンナイトって、ゴブリン種最強のひとつ、ですよね」


 討伐レートB……B級冒険者チームで挑むような強敵だ。

 この場で一番高い等級の俺はD級、まあ勝てる相手じゃないな。

 まあ……俺が、本気を出せば話は変わるけど。


「しゃぁないな」

「……え、師匠?」

「アルテミウス、エリオ、ユウナ。これから俺がやること……全部ナイショな?」


 俺は三人に向けて言う。次の瞬間──ゴブリンナイトが剣を振りかぶり、俺を一刀両断しようと剣を振り下ろした。


「『ジョブチェンジ』──闘士」


 俺はジョブを『闘士』にセット。

 中級スキル『見切り』を発動し、振り下ろした剣を紙一重で躱す。

 ゴブリンナイトが驚くが、俺はすでに攻撃に移っていた。


「中級スキル、『連牙剛打』」


 闘士の中級スキル、『連牙剛打』……拳を連続で叩きこむ技。

 スキルレベルは7で、俺の拳は岩をも砕く。


『オ、ッガゴ、ッグァ!?』


 ズドドドドン!! と、連続パンチが顔面、腹、胸に命中。ゴブリンナイトがたたらを踏み後退するが、俺は接近。


「悪いけど、お呼びじゃねぇんだわ……『ジョブチェンジ』」


 『刀士』にセット。

 俺は剣を抜き一閃。


「上級スキル発動──『天閃刃』」


 ゴブリンナイトが剣を盾にするが、俺はそのまま剣ごと両断。

 ゴブリンナイトが縦に割れ絶命……俺の勝利となった。

 俺は剣を鞘に納め、唖然とする三人に向け、人差し指を口に当てて片目を閉じて言った。


「今の全部、ナイショにしてな」

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