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転生して35年、その日暮らしのD級冒険者やってます。  作者: さとう
第一章

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11/24

第11話

 数日後、俺はシャナと二人で初めて会った泉に来た。

 ほとりにはキャンプギアをセットし、焚火台ではいい感じに薪が燃えている。

 そして、ソワソワしているシャナに、大きな包みを見せる。


「ふっふっふ。シャナ……お前専用の弓ができたぜ!!」

「……森に入る前からその包み気になってたけど、『まだダメ』ってもったいぶりすぎ」


 それは悪かった……でも、こういうのって順序大事だしな。

 俺は包みを外し、弓を見せつける。


「……なにこれ」

「コンパウンドボウだ」


それは、滑車と鋼索で張力を制御する機構弓――いわゆるコンパウンドボウだった。

オリンピック選手が使うような弓……この世界に来て三十五年経過して、地球の知識は風化しつつあるが、子供のころに忘れないようメモ書きしていたので覚えている。

というか……オリンピック競技とか観戦するのは好きだった。コンパウンドボウとかカッケエしな!!

シャナは、壊れ物を持つかのように手にする。


「あれ、軽い」

「素材はミスリルで作った。頑強さ、軽さは問題ないぞ。矢筒はこれ」

「あ、うん」


 矢筒を腰に下げ、シャナは気付く。


「……矢、なんか普通の矢じゃない」

「ああ、それも特別製。魔獣の骨を使ってる。鏃の部分もミスリル製だ。使った後はできるだけ回収してくれ」

「……あ、この筒」

「スコープは改良した。構えてみろ」


 シャナは矢を番えて構える。

 そして、弦を引くときに少し渋い顔をしたが、すぐ驚いた。


「わ、軽い」

「引き始めは少し重いけど、すぐ軽くなる。スコープを覗き込んでみろ」

「……わあ、すごい」


 スコープにはメモリが付いており、ちゃんと狙いが付けられる。

 シャナは、俺が何も言わずとも泉に狙いを定め──射る。

 すると、矢はまっすぐ進んで魚に命中。ぷかーっと魚が浮かんだ。


「あ……あた、った」

「威力も申し分ないだろ。さて、弓はこれでいいな」

「う、うん!! ……え、弓は?」

「ああ。次は、『隠密士』と組み合わせ戦い方だ」

「……えっと」


 こいつ、弓ばかりでジョブのこと忘れてるな?

 俺は提案する。


「シャナは、見たところかなり軽いだろ? 身軽さもある」

「……まあ、軽いけど」

「『隠密士』のスキル、何がある?」

「『潜伏』だけ。気配を殺して潜めるの……こんな風に」


 シャナはスキルを発動させ、近くの藪に潜む……すると、シャナの身体が薄くなり、色彩も同化する……カメレオンみたいだ。

 すぐに解除し、俺の元へ。


「隠れるだけ。使えない」

「バリバリ使えるだろ。今の『潜伏』と弓を合わせて使えば、どんな状況でも先手を取れる。例えば……お前が斥候として先行し、『潜伏』で隠れつつ進む、先には魔獣が数匹、戦闘は避けられない。仲間に報告し戦闘準備させ、お前は先行して……開幕の一発。敵は混乱し、その隙を突いて仲間と一網打尽、とかな」

「……!!」

「不遇ジョブなんてない。使い方なんていくらでもある」

「おおお……」


 シャナは目を輝かせる。


「シャナ、技を磨けばお前は一流の『斥候』になれるぞ!!」

「──うん!!」


 こうして、シャナは『斥候』を目指して修行を開始するのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


シャナの生活は変わり始めた。

斥候についての戦術書を俺と探したり、俺の紹介したベテラン斥候から話を聞いたり、実際に俺の紹介で冒険者チームに同行したり……コミュ障も少しずつ治ってきたようだ。

 それから数日、シャナは俺と一緒に、大衆酒場にいた。


「すみません、焼き鳥追加で。あと、果実水も」

「はーい」

「へえ、もう自分で注文できるんだな」

「ん、馬鹿にしないで」


 シャナはジト目で俺を見て、果実水をグイッと飲み干した。

 そして、シャナは懐から小さな袋を出し、俺の方に置いた。

 

「ん、なんだこれ」

「依頼料。仕事して、貯金できるようになったから。この弓の代金と、指導料……足りる?」

「……ああ、充分だよ」


 まあ、全く足りないけど……この気持ちだけで嬉しい。

 漫画とかラノベなら「必要ないさ」なんて拒否るんだろうけど、俺はこういう誠意のこもったお礼は受け取ることにしている。

 俺は、袋を手にして言う。


「じゃ、ここは俺の奢りかな。お前の冒険者デビューの祝いだ」

「……なにそれ、でも……ご馳走になってあげる」


 シャナはクスっと微笑んだ。

 すると、俺の中に温かい『力』が漲ってきた。


ジョブ習得──『隠密士』。


「……お」

「ん、なに?」

「いや……とりあえず、これから頑張れよ。あと……近く、新人のチームを紹介するよ。もしかしたら、お前に合うかもな」

「新人? あ、もしかして……あの『連装士』の?」

「かもな。さ、飲もうぜ」


 シャナから『隠密士』を手に入れた。シャナの真の願い……『冒険者になりたい』を、叶えることができたようだ。

 今日は金もあるし、いっぱい飲めそうだな。

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― 新着の感想 ―
さとうさんは、アラフォーもの第一人者ですね
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