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【連載版】 「誰でもヤらせてくれる」と噂の隣のギャル。実は超がつくほど家庭的で、毎日めちゃくちゃ甘やかしてくる  作者: 茨木野


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07.

 放課後の下駄箱。

 先を歩く奉太郎の背中を見つけ、聖華は小走りで駆け寄った。


「阿智くん、一緒に帰ろ!」

「いいよ」


 あっさりとした快諾に、聖華の口元がだらしなく緩む。


(やったああああああ!)


 心の中で盛大なガッツポーズを決め、見えない尻尾をちぎれんばかりにパタパタと振る。


 好きな人と一緒に下校するというラブコメの王道イベントに、テンションは最高潮だった。

 だが、歩き出しながらも聖華の脳裏には、先ほどの幼馴染との密会シーンがチラついていた。


(でもでも、やっぱり塩尻さんとの関係がきになるー!)


 もやもやとした感情を抱えたまま、ふと隣を見る。

 奉太郎が不自然なほど距離を取って歩いていることに気がついた。

 間に人が三人くらい入れそうなほどのスペースが空いている。


「なんでそんなに離れて歩くのー!?」

「余計な噂が立つ」

「余計な、って」


「俺たちが一緒に帰っているのを見られたら、クラスメイトたちの格好の噂の的になる。そうなると君も俺も迷惑だろ」


 前を向いたまま淡々と告げる奉太郎の言葉に、聖華の心臓は甘く跳ねた。


(にゃぁぁっ)


 一見冷たい態度に見えて、実は自分の悪評がこれ以上広まらないように配慮してくれているのだ。


(だめだ、やさしすぎる! 奉太郎くんらぶすぎるー!)


 嬉しさのあまりアスファルトにへたり込みそうになるのを必死に堪える。

 聖華はデレデレに溶けた顔を慌てて引き締めた。


 だが、恋する乙女の思考はすぐにネガティブな方向へと反転した。


(待って。でも、こうも解釈できるよね。彼女に勘違いされるかもって)


 距離を取るのは、自分への配慮ではなく本命の彼女への誠実さゆえなのではないか。


 親の都合に振り回され、世間に達観している大人びた彼だ。

 同年代の男子とは比べ物にならないほど精神が成熟しているのだから、彼女がいても全然おかしくない。


(もし本当に彼女がいたら、あたし、死ねるっ)


 勝手な想像で絶望の淵に立たされ、聖華はガックリと項垂れた。

 並んで歩いているのに、奉太郎はまったく話しかけてこない。

 ただ規則正しい足音が響くだけで、視線すら合わせてくれないのだ。


(あたしに興味ないのかな……)


 見えない耳をペタンと伏せ、重い足取りのまま歩き続ける。

 やがて、見慣れたマンションのエントランスが見えてきた。


(ついてしまった。もっと一緒にいたかったのに!)


 エレベーターに乗り、二階の共用廊下に出る。

 それぞれの部屋の前で立ち止まると、奉太郎は短く手を上げた。


「じゃ」

「ちょ、ちょっと待って!」

「どうしたの」


 自分の部屋に入ろうとする奉太郎の背中に向かって、聖華は慌てて声を張り上げた。

 奉太郎がドアノブに手をかけたまま、不思議そうに振り返る。


(うなれ、あたしの五十三万IQの頭脳! 彼を引き止める完璧な口実を弾き出すんだ!)


 脳内コンピューターをフル回転させた聖華の頭に、ぴしゃーん、と電流が走った。


「今日カレーでして! 余ってしまったので! 処理をお願いしたく!」

「カレー……いいの? 俺は助かるけど」

「もちろん!」


「ありがとう」


 奉太郎は少しだけ表情を和らげ、自室へと消えていった。

 ぱたん、とドアが閉まる音が響く。

 一人取り残された廊下で、聖華は両手を天高く突き上げた。


(うぉっしゃー!)


 歓喜の舞を踊り、意気揚々と自分の部屋のドアを開ける。

 そして、玄関に足を踏み入れた瞬間、聖華はピタリと固まった。


(……カレーどうしよう。これから作るっ!)


 そもそもカレーなど作っていないし、材料すら揃っていない。

 五十三万IQの頭脳が弾き出したのは、完全なる見切り発車だった。

 聖華は慌ててエプロンを引っ張り出し、キッチンへと猛ダッシュするのだった。


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テンプレ通りなポンコツ女子高生だw 聖華がんばぁ
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