48.
みさおは部活から、自宅へと帰ってきていた。
彼女の実家、喫茶あるくま。
表は店舗スペース、そして裏は住居スペースとなっている。
みさおは住居スペースから、いつも通り帰宅。
すると、父、聡太が出迎えてきた。
「どったの親父?」
玄関先に、聡太が座り込んでいたのだ。
いつもはキッチンか、店番をしているかのどちらかなのだが。
娘を待っているということは、最近はなかったような気がした。
聡太は立ち上がると、みさおの頭を撫でる。
「奉太郎君、来てるよ」
「…………」
一瞬だけ、目を丸くする。
だが、すぐに奉太郎が何をしに来たのか、大体の察しがついた。
「そっか」
みさおは荷物をその場に置いて、住居スペースから、奉太郎の待っているだろう、店へと向かう。
「みさお」
父が背後から娘を呼び止める。
「おれはおまえの父ちゃんだからな。良いんだぞ、辛かったら、泣きついてきて」
父は、みさおと幼なじみである奉太郎との、複雑な関係について、誰よりも理解してる。
このあと、みさおが傷ついて、帰ってくるだろうことは、きっと父も承知してるのだろう。
「大丈夫。あんがと、親父」
みさおは父にそう言うと、奉太郎のもとへと向かう。
席に座って、コーヒーをすすっていた。
……足踏みを、してしまう。
でも、前に踏み出した。
……幼なじみである奉太郎が、一歩前に踏み出したのだから。
自分もまた、痛みを覚悟で進むだけである。
「よっ」
みさおは、平静さを保ちながら、奉太郎に呼びかける。
彼はこちらを見ていた。
……真っ直ぐに、見ていた。
それは過去と向き合い、未来に進むと決めた男の目だった。
……みさおの情緒は、ぐちゃぐちゃになった。
彼が過去を振り切ったことを喜びながら、しかし……それはつまり自分を捨てて前に進む決断をしたということ。
喜びと悲しみ、怒りと……色々な感情がないまぜになった。
だから……。
「ちょっと面貸せよ。外で話そうぜ」
もう夜だというのに、みさおは彼を外に連れ出すことにした。
……明るいところで、今の自分の顔を、見られたくなかったから。




