33.
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
薄暗い自室で阿智奉太郎が一人静かに思考のドツボにハマっていることなど、お隣の純情ギャルは知る由もなかった。
爽やかな朝の光が差し込むキッチンで、昼神聖華は鼻歌交じりにコンロの前に立っていた。
フライパンの上で、甘く出汁を効かせた卵焼きがジュウジュウと小気味よい音を立てて焼けていく。
香ばしくて甘い匂いが部屋中に広がり、聖華の見えない尻尾がパタパタと上機嫌に揺れていた。
「ふへへへ。これは、あたしの完璧なる作戦なのだよっ」
聖華は誰もいないキッチンで一人怪しく微笑み、中指で架空のメガネをくいっと押し上げる仕草をした。
もちろん、視力は両目ともに二・〇なのでメガネなどかけていない。
「『やだっ、お弁当を作りすぎてしまったわ! 小食な聖華ちゃんは困ったなー困ったなー、誰か代わりに食べてくれないかなー? あーっ! そこにいるのはメンズ! へい、奉太郎くん、一緒におべんとしないかい!』」
聖華はフライ返しをマイク代わりにして、高い声で一人芝居を繰り広げる。
「なんて完璧な作戦なんだっ。あたしってば天才かもしれないっ!」
自分で考えたシナリオに自分で大興奮し、ガッツポーズをしてキッチンで飛び跳ねる。
彼と一緒に昼休みを過ごすための、口実作りという名の完全犯罪計画だ。
彼が喜んでくれる顔を想像しただけで、顔面から火が出そうになるほどニヤニヤが止まらない。
聖華はウキウキとした足取りで、可愛らしいピンク色のお弁当箱を二つ広げた。
冷ました卵焼き、タコさんウインナー、彩り鮮やかなブロッコリーとプチトマト。
彼の胃袋を完全に掌握すべく、栄養バランスも見た目も完璧なおかずを、いそいそいそと丁寧に詰め込んでいく。
「ふへーっ。完成! 阿智くん、喜んでくれるかなぁ。お昼が楽しみだなぁ~っ」
二つ並んだ完璧な手作り弁当を見下ろし、だらしない笑顔で頬を緩ませる。
純情ギャルの脳内は、すでにお昼休みの甘々なお弁当デートの妄想で埋め尽くされていた。
だが、ふと壁に掛けられた時計に視線を向けた瞬間、聖華の動きがピタリと硬直した。
五十三万IQの頭脳が、現在の時刻と登校にかかる所要時間を瞬時に計算し、絶望的な数値を弾き出す。
「って、わーっ! 結構ギリギリじゃんっ!」
完璧な手作り弁当の制作と、一人芝居の作戦会議に時間をかけすぎたのだ。
「ち、ちこくしちゃうーっ! だーっ!」
聖華は弾かれたように悲鳴を上げ、大慌てでお弁当を風呂敷に包んでスクールバッグに放り込んだ。
ドタバタとけたたましい足音を立てて玄関へ向かい、靴を半分だけ履きながらドアを飛び出す。
恋する乙女の朝は、いつだって騒がしくて大忙しだった。
【おしらせ】
※5/22(金)
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