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【連載版】 「誰でもヤらせてくれる」と噂の隣のギャル。実は超がつくほど家庭的で、毎日めちゃくちゃ甘やかしてくる  作者: 茨木野


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30/65

30.

薄暗い昇降口には、アスファルトを叩きつける冷たい雨の音が響いていた。

 湿った土の匂いが鼻をくすぐり、ひんやりとした空気が肌を撫でる。


 昼神聖華は下駄箱の前に立ち尽くし、ガックリと項垂れていた。


(やばっ。天気予報ぜんぜん見てなかったし。傘、持ってないよぉ)


 見えない犬の耳をペタンと伏せ、恨めしそうに灰色の空を睨みつける。

 誰かに傘を借りようにも、親友の深雪は図書委員の仕事で残っているため、一緒には帰れない。

 途方に暮れて大きくのけぞっていると、背後から静かな足音が近づいてきた。


「昼神さん」


 不意に名前を呼ばれ、聖華はビクンと肩を跳ねさせて振り返る。


「阿智くん! どうしたの?」


「一緒に帰ろう。傘、あるし」


 奉太郎が手にした黒い折り畳み傘を軽く振って見せる。

 まるで救世主のように現れた大好きな彼からの提案に、聖華の顔がパッと明るく輝いた。


 ペタンと伏せていた耳がピンと立ち、見えない尻尾がちぎれんばかりにパタパタと振られる。


「えーーーー!? いいのー! ありがとーっ!」


 聖華は弾かれたように両手を合わせ、満面の笑みでその場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。


 バサリ。

 奉太郎が傘を開き、二人は並んで雨の通学路へと歩き出す。

 傘の布地に打ちつける雨だれの音が、やけに大きく耳に響いた。


 スタスタと歩調を合わせながら、聖華はふふん、と上機嫌で鼻歌を漏らす。

 一つの傘の下、肩と肩が触れ合いそうなほど近い距離。

 微かに漂う彼のシャンプーの爽やかな香りと、隣から伝わってくる温かい体温に、聖華の頭の中はお花畑状態だ。


(んふふふ。阿智くんと一緒に帰れるなんて、雨の日も悪くないにょ。って)


 そこまで考えた瞬間、五十三万IQの頭脳が現在の状況を正確に弾き出し、聖華は雷に打たれたようにピタリと足を止めた。

 一つの傘に、男女が二人で入って並んで歩いている。

 それはつまり。


(これ、相合い傘じゃーーーーんっ!?)


 一瞬にして顔面から火が出るほどの熱を帯び、聖華の心臓がドクンと激しく跳ね上がった。

 憧れの相合い傘。物理的距離ゼロ。もはや実質的なデートである。

 急激にキャパシティをオーバーした純情ギャルは、傘の下でクネクネと身悶えし始めた。


「ど、どうしよう阿智くん! 距離がっ、近いよぉっ! 心臓もたないっ!」


 真っ赤な顔をしてテンションを爆発させる聖華を横目に、奉太郎は呆れたように小さく息を吐く。


「面白いね、昼神さんは」


「むぅっ! 人がこんなにドキドキしてるのに、なんでそんなに冷静なのーっ!」


 聖華はぷくっと頬を膨らませて抗議するが、奉太郎は微かに口元を緩めただけで、何も答えない。

 雨の音に紛れた二人の騒がしい声は、灰色の空の下でどこまでも甘く響き渡っていくのだった。

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― 新着の感想 ―
随分と好意をストレートに表すようになったな~
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