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十二環界と天塔の魔王  作者: ぷやっさん
第四章 第四島《森律アルボル》

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第42話「森の深部──心を暴く影」

森律アルボルの空気は、

一歩進むごとに重くなる。

風は吹いているのに音がしない。

鳥の影はあるのに羽ばたきが聞こえない。

木々は揺れているのに葉擦れの音がない。

ミナはリオの背にぴったりとくっつき、

震えながら言った。

「先生……

この森……“心の音”だけが響いてます……

嘘をつくと……その音が乱れて……森が反応します……」

「分かってる。

だからこそ……慎重に行くぞ」

聖騎士団は距離を保ちながら追ってくる。

攻撃はしてこない。

だが、質問だけは続けてくる。

「第三師団長リオ。

お前は王国に敵対する意思があるか?」

「今はない。

だが、生徒を傷つけるなら敵に回す」

森は揺れない。

聖騎士団は苛立つ。

(この森……

“嘘をついた方が死ぬ”……

つまり、俺たちよりも“王国側の方が不利”だ)


森の奥へ進むほど、

空気が冷たくなり、

視界が暗くなっていく。

ミナが小さく呟いた。

「先生……

森の“音”が……変わってきました……

さっきまでは嘘の音だけが消えてたのに……

今は……“心の揺れ”まで拾われてます……」

「心の揺れ……?」

「はい……

嘘じゃなくても……

“迷い”や“恐れ”が強いと……

森が反応しそうです……」

(嘘だけじゃなく……

心の弱さまで狙ってくるのか……

厄介すぎる……!)

その時、

森の奥から“声”が響いた。

——……器よ。

影の声だ。

——この森は“心を暴く”。

気を抜けば、お前の記憶すら引きずり出される。

(記憶……!?

そんな危険な森なのか……!)

——特にお前は“隠しているもの”が多い。

(うるせぇ……!

今は黙ってろ……!)

影は笑ったように揺れた。


突然、森の奥から声がした。

「……先生……」

ミナの声だ。

だが、ミナは隣にいる。

「え……?

私、何も言ってません……!」

森がざわりと揺れた。

次の瞬間——

リオの耳元で、別の声が囁いた。

「……リオ……

どうして……助けてくれなかったの……?」

聞き覚えのある声。

第二島で救えなかった少女の声。

(……やめろ……!

これは森の幻聴か……!)

ミナが叫ぶ。

「先生!!

森が……先生の“後悔”を拾ってます!!

心の揺れが……森に伝わって……!」

木々がざわめき、

黒い根が地面から伸びてくる。

「くそっ……!」

——器よ。

“後悔”は嘘ではない。

だが“弱さ”として森に喰われる。

(どうすりゃいい……!)

——認めろ。

逃げるな。

(認める……?)

——後悔も、怒りも、迷いも。

それが“お前の真実”だ。

リオは拳を握りしめ、

幻聴に向かって言った。

「……俺は……

救えなかったことを後悔してる。

今でも……ずっと引きずってる」

森が静まった。

黒い根が地面へ戻っていく。

ミナが息を呑む。

「先生……

森が……“真実”だと認めました……!」

(なるほど……

この森は“嘘”だけじゃなく、

“誤魔化し”も許さない……

心の弱さを隠すと喰われる……

最悪の精神戦だ……!)


聖騎士団の隊長が一歩前に出た。

「リオ。

次は我々が質問する番だ」

「……なんだ」

「お前は——

“魔王の器”なのか?」

ミナが息を呑む。

「せ、先生……

この質問……!」

(最悪の質問だ……!

“違う”と言えば森が反応する……

“そうだ”と言えば聖騎士団が襲ってくる……!)

影が囁く。

——器よ。

“真実は一つではない”。

言い方を選べ。

(言い方……

そうだ……!)

リオは静かに言った。

「俺は……

“誰かの器”なんかじゃない。

俺は俺だ。

生徒を守るために立ってるだけだ」

森は揺れなかった。

聖騎士団がざわめく。

「……魔王の器ではない、ということか?」

「“俺は俺だ”と言っただけだ」

(嘘じゃない。

森も反応しない)

ミナが小さく笑った。

「先生……

すごいです……

森のルール……

完全に読み切ってます……!」


森の奥へ進むと、

空気がさらに冷たくなり、

視界が暗くなっていく。

ミナが震えながら言う。

「先生……

この先……

“心の奥”を試されます……

嘘じゃなくても……

隠してることが多いほど……危険です……」

(隠してること……

俺には……山ほどある……)

影が低く囁く。

——器よ。

この森の深部には“私の痕跡”がある。

(痕跡……?

影の……?)

——近づけば近づくほど、

お前の“魔王としての気配”は濃くなる。

(……やっぱりか)

ミナがリオの手を握る。

「先生……

どんな真実でも……

私は……先生の味方です……!」

リオはミナの手を握り返した。

「行くぞ、ミナ。

この森の奥に……何があろうと」

森律アルボルの深部へ、

二人は足を踏み入れた。

嘘も、誤魔化しも、弱さも許されない——

精神戦の本番が始まる。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!


※本作の執筆にあたっては、

一部のアイデア整理や設定構築にAIを活用しています。

物語の最終的な構成・文章表現・キャラクター描写は、

すべて作者自身の手で仕上げています。

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