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十二環界と天塔の魔王  作者: ぷやっさん
第三章 三番島《豊穣デメトリア》

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第27話「豊穣デメトリアの祭りと飢餓の影」

十二環界の“第三環”

豊穣デメトリア

別名:豊穣のほうじょうのわ

農耕・収穫・大地の祝福を司る島

本来は十二環界で最も食に恵まれた“黄金の大地”。

しかし現在は、王国教会の介入により 「豊穣の皮を被った飢餓の島」 と化している。


①農耕大地デメトリア・ゴールデンフィールズ(黄金平原)

島の中心に広がる、果てしない農耕地帯。

黄金麦・聖麦・甘根菜など特産作物が育つ

風車が並び、灌漑水路が島全体を巡る

本来は“豊穣の巫女”が大地を祝福し、収穫を安定させていた

しかし現在は収穫量が激減

住民は笑顔だが、全員が慢性的な飢餓状態

第二島ペリカンテから出て半日。

潮風は柔らかく、青い海が穏やかに揺れていた。


「先生! ほらほら! もう見えてきましたよ!」


ミナが甲板から身を乗り出す。


その先には——黄金色の広大な大地が広がっていた。


第三島《豊穣デメトリア》。

十二環界でも“もっとも食に恵まれた島”とされる農耕大地。


畑はどこまでも広がり、

風車が心地よい音を鳴らし、

川には水鳥が舞っていた。


「……ほっとするな。平和そのものだ」


「ですね……! 空も青いですし!

おいしいものたくさんありそう!」


「お前は本当に食う話ばっかだな」


ミナはむっ、と頬を膨らませる。


そんな“平和なやりとり”が続く時間が、リオにとっては心地よかった。


(ペリカンテが壮絶すぎたからな……

こういう島は、しばらく休めると助かるんだが)


——だが、胸の奥がわずかにざわついた。


(塔の脈動……弱まっているようで、逆に“深く”なってる……

この島……静かすぎる)


足元の影が、波の揺れとは違う“遅れた揺れ”を見せた。

影ではない。

黒いオーラが、影の形を借りて揺れている。


リオは気づかないふりをした。


港に降りると、島の人々はにぎやかに行き交っていた。


「今年の《豊穣祭》が始まるぞー!」

「パンを焼け! 聖麦の入荷は今日までだ!」

「みんな神殿に集まるんだよ!」


ちょうど「豊穣祭」の前日だった。


「わぁ……にぎやか……!

楽しそうです先生!」


「お、屋台も多いな。

飯の心配はなさそうだ」


「先生!!

あれ食べましょう!!

あれ! あの丸いの! あんこっぽいのが!」


「落ち着け。まだ買わん」


ミナは“欲望で目をキラキラさせている”。


その姿に、リオは自然に笑みがこぼれた。


(こういう時間は……守りたいよな、本当に)


しかし——


「……先生。なんか……変です」


ミナが袖を握った。


「どうした?」


「みんな……笑ってるのに……

心が震えてるみたいで……

“お腹空いた”って……声が……いっぱいします……」


(……お腹空いた?

豊穣の島で?)


リオは周囲を見渡した。


笑顔は明るい。

だが——目の奥だけが乾いている。


やせ細った腕。

服の隙間から見える痩せた腰。


露店のパンは薄く、野菜は色が浅い。


(豊穣の島じゃねぇ……

これ、誰もが“飢えてる”島だ)


そこへ、元気な少年が声をかけてきた。


「旅の人!

豊穣祭に来たの!?

だったら神殿に行くといいよ!」


ミナが尋ねる。


「あの……みなさん、お腹空いてませんか?」


「え? 空いてるけど……

神官様が“我慢も信仰だ”って言ってるからへーきだよ!」


「…………!」


リオとミナは同時に表情を固めた。


(……神官?

信仰?

これ……王国教会の匂いがする)


「神殿の上の人がね、

“我慢すれば、きっと今年は豊穣の奇跡が起こる”って……!」


少年の瞳は純粋で、

だからこそ胸が痛くなる。


(この島……

宗教で“飢餓を正当化”してる……!)


神殿は島の一番高い丘にあり、

白く巨大な柱が立ち並んでいた。


「神殿……大きいですね」


「ああ。ただの祭礼施設じゃない。

“支配の中心”だ」


神殿には白衣の神官たちが静かに立っている。

全員が同じ角度で頭を下げ、同じ速度で歩いていた。


その背後で、

光紋の刺繍が揺れる。


(光紋……!

王国の宗教組織……!

やっぱりここも干渉されてる!)


「先生……」


(ミナも感じてるな)


「お前たち、なぜこの島に?」


「旅をしているだけだ。

生徒を連れてな」


「そうですか……

ならば“多くを知る必要はありません”。

祭りを楽しむだけでよいのです」


(多くを知る必要はない、だと?

怪しいにも程がある)


神官たちの動きは、まるで糸で操られているようだった。


(こいつら……

完全に誰かから命令されている動き……

光戒師団か……光審庁か……)


突然、ミナが胸を押さえた。


「っ……!

せ、先生……!」


「ミナ!? どうした!」


「……神殿の奥……

そこだけ……真っ黒なんです……

人の“空腹”じゃない……

もっと深い……“穴のような空っぽ”が……」


(神殿の奥……?

飢餓じゃねぇ……空っぽ……?

なんだその感覚は)


ミナは続ける。


「……そこに……誰かいます……

ひとり……すごく強い……“空腹”を持った人……」


(強い空腹……?)


その瞬間——

神殿の奥から“鈍い鐘の音”が響いた。


ゴォォォン………


リオの胸がざわついた。


ただの鐘じゃない。


(塔の脈動……!!)


ミナが震えた声で言う。


「先生……

あれ……“契約炉”と同じ……

王様の光に似た……

“何かをなくす音”です……!」


(……来たな。

この島も……王国の“破壊の光”が動いてる)


足元の黒いオーラが、鐘の音に合わせて一瞬だけ“逆方向”に揺れた。


リオは気づかないふりをした。


「……どうされましたか、旅の先生」


先ほどの神官が、

いつの間にかリオの真横に立っていた。


声は穏やかだが、目が笑っていない。


「もしよければ——

あなたと、その子を“奥の部屋”で休ませましょう」


(奥……

ミナが“空っぽ”と言った場所……!

間違いなく罠だ)


リオは背中でミナを庇い、静かに言った。


「いや、結構だ。

俺たちは自分で見て回る」


「……そうですか」


神官は穏やかに頭を下げたが、

その背後で光紋の刺繍が微かに光った。


(……絶対に、何か隠してる。

この島、平和じゃねぇ)


「先生……どうするんですか?」


「決まってる。

この島の“異常の正体”を探る。

夜の祭りで……何が起きるかだ」


ミナは不安そうな笑顔を浮かべた。


「……一緒に見に行きましょう。

怖いけど……先生と一緒なら……!」


「ああ。

お前がいれば大丈夫だ」


太陽が沈み、

《豊穣祭》の火が灯る。


笑顔があふれ——

だがその奥には、“飢餓の影”が濃く広がっていた。


リオの足元の黒いオーラが、

祭りの灯りとは違う“別のリズム”で揺れた。


(……またか。

黒いオーラ……お前は一体……何を見てる)


黒いオーラは答えない。

ただ、静かに“誰かの気配”だけを残していた。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!


※本作の執筆にあたっては、

一部のアイデア整理や設定構築にAIを活用しています。

物語の最終的な構成・文章表現・キャラクター描写は、

すべて作者自身の手で仕上げています。

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