第26話「契約炉の残滓と、新たな影」
恐怖巨神が崩れ落ちた後の中心炉は、
嘘のように静かだった。
砕け散った契約札が床に散らばり、
炉心の奥では、微かな赤い光だけが“生き残り”のように揺れている。
ミナは胸に手を当て、震える息を整えた。
「……先生……すごかったです……
本当に……勝てるなんて……」
「いや、勝たせてもらったんだよ。
お前の声がなかったら詰んでた」
ミナの頬が赤くなる。
「えへへ……先生、言いすぎです……」
(言いすぎじゃねぇ。
お前の導きは……本当に命綱だった)
そう言いかけた時——
炉心の赤光がふっと揺らいだ。
まるで“呼吸するように”。
「先生……また、何かいます……」
ミナがリオの袖を掴む。
(まだ……残ってるのか)
炉心の縁がゆっくりと割れ、
そこから“白銀の光”がこぼれ落ちた。
「……嫌な光だな」
リオは眉をひそめる。
(これは……アーサー王の光……
式典で見た“作り物の聖性”……
でも今のは……もっと冷たくて、乾いてる)
ミナが顔をしかめた。
「先生……この光……
誰も救う気がない……
ただ……なにもかも“無くしたがってる”……そんな感じ……」
(ミナ……そこまで感じ取れるのか……
王の光の本質を……ここまで正確に……)
白銀の光は炉心の中で球状に固まり、
心臓の欠片のように、静かに脈動していた。
「これ……持っていけませんか?」
「危険すぎる。
これは王の光の残り滓だ。
触れたらどうなるか分からん」
「……でも、置いていったら……
また誰かが使われちゃう」
(……そうだ。
この島を歪ませた“元凶の一つ”。
契約炉を壊しただけじゃ終わらない)
リオはしばらく考え——
拳を作った。
「ミナ。後ろ向け」
「……はい」
リオは炉心へ手を伸ばし——
白銀の球に触れようとした。
その瞬間。
ズッ……!
黒い“靄”が、足元からせり上がった。
「っ……!」
「せ、先生!?
黒いのが……また……!」
黒いオーラは白銀球に反応し、
まるで“喰らう”ように伸びかける。
(やめろ……!!
そんな風に出てくるな……!
俺は……そんな力がほしいわけじゃ……!)
「先生!!
ダメ!! その黒いの……“違う方向”に行こうとしてる!!」
ミナがリオの手を掴む。
黒いオーラが——止まった。
白銀球だけが、ぽつんと取り残される。
(ミナ……
本当に……お前がいないと俺は……)
「先生。
その光……“消す”わけじゃないんですか?」
「完全に消したら、この島に残ってる恐怖が暴走しかねない。
これは……『封じる』のが正解だ」
「封じる……
先生が……抱えていくってことですね」
「ああ。
でもミナは絶対に触るな」
「はい!」
リオは布で白銀球を包む。
球は弱まり、まるで眠るように小さくなった。
(まるで……“魂”だな。
これが王の光の残滓……)
工場の深部から戻ると——
ベルモンドや裏ギルドの者たちが待っていた。
「リオ! ミナちゃん!!
本当に……本当に生きてたか!!」
「当たり前だろ、心配かけたな」
ミナはベルモンドに抱きしめられ、
くすぐったそうに笑った。
少年も走ってくる。
「あの……本当に……ありがとうございました……!」
「お前もよく頑張ったな。
契約に苦しめられた子が……もう出ないようにしよう」
「……はい!」
裏ギルドの女が言う。
「中心炉が沈静化したおかげで、
島の“契約の流れ”も戻り始めたわ。
あなたたちの功績よ」
工場の空気は、戦いの前よりも少しだけ“軽く”なっていた。
(よかった……
この島は……救えたんだな)
「先生……」
ミナが袖を引く。
「ん?」
「遠くから……白い光が……こっちを見てます……
小さな点みたいだけど……すごく冷たい……」
(……王国か)
リオは空を見上げた。
ミナほど敏感ではないが、確かに——
海の向こうから、王国の気配が迫っていた。
(もう動いてる……
王国は間違いなく“次の島”にも手を伸ばしてる)
「ミナ、行くぞ」
「はい!」
「ベルモンド。また会おう」
「おうよ! 次来たときは工場の飯でも食わせてやるぜ!」
少年が手を振る。
「また来てください! 先生! ミナさん!」
リオは軽く手を振った。
港へ出ると、
朝日が海を黄金に照らしていた。
ミナが静かに言う。
「先生……
“塔の呼び声”が、また強くなってます」
「ああ。
王の光も動き始めた。
次の島は……きっと今以上に危険だ」
「でも、行くんですよね?」
「もちろんだ。
守るものがある限り、俺は進む」
ミナの瞳が、嬉しそうに震えた。
「……えへへ。
次も、ちゃんと導きますからね!」
「頼りにしてる」
リオとミナは船に乗り、
次の島——第三島《豊穣デメトリア》へ向かって旅立った。
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※本作の執筆にあたっては、
一部のアイデア整理や設定構築にAIを活用しています。
物語の最終的な構成・文章表現・キャラクター描写は、
すべて作者自身の手で仕上げています。




