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十二環界と天塔の魔王  作者: ぷやっさん
第二章 二番島《工環ペリカンテ》

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第25話「恐怖巨神、教師が砕く」

中心炉コントラクト・フォージが震えていた。

恐怖が固まり、怒りが渦巻き、怨嗟が形を持つ。

そのすべてをまとめたような巨大な影が、ゆっくりと立ち上がる。

それはもはや人の形ではない。

黒い神像のような“異形の巨体”。

目も口もなく、千を超える契約札が全身に貼り付き、蠢いている。

『——侵入者。

恐怖の根源へ溶解開始。』

その声だけで鉄塔全体が沈むように軋んだ。

(これが……恐怖巨神の最終形態……

島中の恐怖、怒り、悲しみ、憎悪をまとめた化け物……

こんなもん、正面から勝てる相手じゃ——)

「先生……」

ミナが震える手で、そっとリオの袖を掴んだ。

「先生が……行くなら……

私も、絶対そばにいます」

(……そうだ。

俺は一人じゃない)

リオは深く息を吸い、拳を握った。


「来るぞ!」

巨神の片腕が振り下ろされる。

床が波のように歪み、炉心近くの鉄床が丸ごと吹き飛んだ。

「ミナ、伏せろ!」

「は、はいっ!」

恐怖の霧が襲いかかる。

触れたら“感情そのもの”を削り落とされる。

——ゴオォォォン!

リオはミナを抱え、床を転がって回避する。

(強すぎる……!

あの一撃、騎士団でも受けきれねぇ!)

巨神はすぐに追撃を構える。

【契約:恐怖連鎖フィア・リンク

無数の黒球が周囲から集まり、リオとミナへ迫る。

「先生、上です!!

……次は下!!

そのあと右!!」

ミナの叫びに合わせ、リオは飛ぶ・転がる・跳ねる。

恐怖連鎖は恐怖そのもの。

普通の人間なら精神が砕けている。


——ゴウン……

塔の脈動が、リオの胸を強く叩いた。

(……違う。今までより……近い……)

黒い“靄”が、リオの足元で揺れ始める。

影ではない。

色のない黒いオーラが、勝手に形を作ろうと蠢く。

「先生……黒いのが……呼び出されてる……!」

(やめろ……!

ミナが見てる前で……これは……!)

黒いオーラが膨れ上がり、

巨神へ伸びようとする。

「先生!」

ミナが必死に叫ぶ。

「黒いオーラなんて……先生じゃない!!

私がずっと見てる先生は……

“オーラがなくても立ってる先生”です!!」

(……ミナ……)

黒いオーラが一瞬だけ震え、動きを止めた。

異形の力が抑え込まれる。

(……ありがとう)

リオは微笑み、前へ出た。


「来いよ、巨神。

教師の拳、見せてやる」

リオは床を蹴り、巨神の懐へ滑り込む。

巨神の腕が重く襲いかかるが——

ミナの声が導くように響く。

「先生、そこ!!

“契約の重なり”が薄いところがあります!!」

(そこが弱点……か!)

リオは巨神の胸部にある「契約札の結束点」へ拳を叩き込む。

——ドッ!

契約札が吹き飛び、黒金の光が漏れる。

『……損傷……?』

(効いてる!!)

恐怖巨神が怒号のように吼え、炉心の力を直接吸い上げる。

床の契印が全て黒金に反転した。

『契約:恐怖一元化ワン・ドレッド

「先生っ!!

避けられません!!

これ……広すぎて……!」

恐怖が“面”になって押し寄せる。

すべての方向から来る“純粋な恐怖”の圧。

リオはミナを抱き、その前に立った。

(教師ってのはな……

こういう時に、壁になるんだよ……!)

「先生ッ!!」

リオは自身の黒いオーラが暴れようとするのを、

強引に押さえ込んだ。

(黒い力には頼らねぇ!!

俺は教師だ!!)

その瞬間、

十二環連鎖の破片が光り、ミナの瞳が輝いた。


契約共感覚 → 契約指向ディレクション

「先生!!

恐怖の圧が全部……集まる“中心”があります!!

そこ!!

あそこ殴れば……恐怖が全部散ります!!」

「よし——!」

リオは恐怖の圧に逆らい、

筋肉が軋んでも前へ出る。

「うおおおおおおッ!!」

巨神の胸部中央、

“十二環の結び目”へ拳を振り下ろす。

——ドゴォォォンッ!!!

恐怖が四散し、巨神の身体が大きく揺らいだ。

『——連鎖……断裂……?』

(いける……!

あと一撃で……!)


「先生!!

だめ!!

巨神……最後の攻撃を……!!」

巨神は炉心を抱え込み、

契約そのものを燃料に最終形態へ変異する。

『契約:恐怖極点ゼロ・フィア

空気が消えた。

音が消えた。

ミナの叫びも遠くなる。

(……くそ……!

これは……“消滅”だ……

あと一発……くらう余裕なんて……)

それでもリオは進む。

(それでも……

ミナを……救うためなら……!)

恐怖極点が収束する——

その瞬間。

「先生!!!

“上”です!!!

上から殴って!!!

上なら……恐怖が届かない!!

その“瞬間”だけ……!!」

「……ミナ……!」

リオは炉心の蒸気パイプを蹴り台にし、

鉄塔を踏み台にし、

巨神の頭上高く跳び上がった。

巨神が恐怖を放つ。

だがミナの声が導く。

「いまだぁぁぁぁぁ!!!!!」

リオは空中で拳を固めた。

「俺は教師だァァァァァァァ!!!!!」

——ドッッッッッッ!!!

拳が巨神の頭頂に直撃し、

恐怖の核を砕き、

中心炉が赤白い閃光を放つ。

恐怖巨神・深層契約体、破砕。

巨体が崩れ落ち、

契約炉の歪んだ光が霧散していった。


「先生!!」

ミナが駆け寄り、涙を浮かべながら抱きつく。

「勝った……先生……勝ちました……!!」

「……ああ……

よく導いてくれたな、ミナ」

リオは優しくミナの頭を撫でた。

(黒いオーラに……負けずに済んだ……

俺は……まだ“俺”でいられる……)

だが、その時。

炉心の奥から、薄く“白銀の光”が漏れた。

(……またかよ……王……!)

そして静かに幕を閉じる——


少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!


※本作の執筆にあたっては、

一部のアイデア整理や設定構築にAIを活用しています。

物語の最終的な構成・文章表現・キャラクター描写は、

すべて作者自身の手で仕上げています。

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