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ギルド受付で働いてますが、攻略して欲しいのは自分ではなくクエストです  作者: 柚鼓ユズ


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勧誘に自問自答する事になりそうです

(……まいったな。ジフィンさんには自分の気持ちの揺らぎを完全に見透かされているみたいだ)


 エタニアはもちろん、バンツをはじめとした新人ハンターに対してアドバイスをする際に伸びしろや改善点をもっと具体的に伝えたり直接指導したい気持ちが全くないのかと言えば嘘になる。

 ただ、それを行うには一介のギルド職員である自分には限界があるというのが現状であった。


(受付の自分が現役のハンターの皆にアドバイス以上の介入をするには限度がある。今まではそれで構わないと思っていた。だが……)


 バンツたちの一件、師匠からの依頼。そして今回のエタニアへの同行と偶然が重なり図らずも自分の気持ちとは裏腹に己がクエストへ足を運ぶのと同様の時に限って様々な出来事が起きた。そして、それら全てが自分の心の奥底にある何かを動かしていたのは確かであった。


「……ですが、自分は前線を離れて久しい身分です。少なくともハンターに戻る事は考えていません。加えて、講師と呼べるような資格も持ち合わせておりません」


 自分の言葉にジフィンさんが笑みを浮かべて返す。


「それは問題ないでしょう。後者に関しては特にね。あのアーク=ペンレッドが後進の育成に乗り出したとなれば異論を挟む者より歓迎する者たちが多数を占めるはずです。少なくともテルマ君を筆頭に今も貴方に心酔している者たちは諸手を上げて歓迎するでしょうからね」


 ……ただの受付である立場から一歩踏み出せばテルマがどのような反応を示すか。それは容易に想像がつく。今以上にハンターに介入する立場になれば間違いなく周りの目を気にする事なく自分の元へと駆けつけるだろう。だが、それは必ずしも良い方向へ向かうとは限らない。


(……それはまずい。テルマ自身に悪気がなくとも現時点でトップクラスのハンターが過去の人間に固執しているように思われてしまう。自分はどう思われても仕方ないが、テルマや他の皆に迷惑をかけたくはない)


 ジフィンさんをはじめとした偉大な先人たちとは違い、自分は全ての責任を放棄して逃げ出した身だ。輝ける未来が保障されているテルマは当然として、磨けば光る原石であるエタニアを含む新人たちに迷惑をかける訳にはいかない。そう思い口を開く。


「……やはり、様々な事情も踏まえて自分は今の受付としての立場を全うしようと思います。お気持ちはありがたいのですがハンターとして最前線に立つ訳でもない自分が今更育成に関わる事は許されないかと」


 自分の言葉にジフィンさんが困ったような顔で答える。


「……アークさん。貴方の事情は分かります。ですが、やはり私は貴方ほどの方をここで埋もれさせてしまうのは惜しいと思っております。それに……私としてはどうしても貴方にこちらに来て欲しい理由があります」


 ジフィンさんがそう言ったあと、エタニアに声をかける。


「エタニア。貴方はこれからどうしたいと思いますか?晴れてハンターを名乗る事が許された今、貴方は誰の元で高みを目指したいと思っていますか?」


 ジフィンさんの言葉にエタニアが一瞬固まる。が、すぐにまっすぐ顔を上げて凛とした表情で口を開く。


「……はい。私は……何と言われてもアーク先生の元で学びたいと思います。たとえ今すぐは無理だとしてもその気持ちは変わりません。……共にクエストに出る事が叶わないとしても、憧れの人が近くにいるというだけで私はきっと高みを目指せると思います」


 そう口にしたエタニアの顔は覚悟を決めた者の表情であった。表情からその本気の思いが伝わったため、自分はどう言葉を返して良いのか分からなかった。


「……という訳ですよアークさん。我が娘の事ながらこうなったこの子は私が何を言っても聞かないでしょう。それこそ、たとえ国へ戻ればパルキン家の恩恵を享受した上でのハンター生活があったとしてもね。きっとこの子はそれを全て投げ出してでも貴方の元へ向かいかねない。親としては出来ればそれは避けたいのです」


 無言のままの自分にジフィンさんが更に続ける。


「親の欲目を抜きにしても、この子には確かに才能があります。もし貴方がこちらに来ていただけるのならば最高の環境と最高の師の元でこの子を育てられる。故にこの発言をする事をご容赦いただきたい。それに……貴方もエタニアに光る物を見出したのではありませんか?」


 ジフィンさんの言葉に唾を飲み込む。確かにエタニアの才能は百人、いや千人に一人と言って良いほどの逸材だろう。

 今のうちから適切な指示と指導する環境があればテルマの記録を塗り替える可能性もあり得る。そして、そんな逸材を自分が育てる事が出来るのなら自分がかつて成し得なかった偉業を果たせるかもしれない。


(……俺が成し得なかった目標を、テルマや成長したエタニアなら成し遂げるかもしれない。その未来は確かに見てみたい。だが……)


 再び言葉に詰まる自分を見て、ジフィンさんが優しく微笑みながら告げる。


「困らせてしまうような話を申し訳ありません。ですが、これは娘にとっては勿論、貴方にとってもただの無理難題や一方的な要求ではないと思います。当然、その折には全力で支援もいたします。環境も金銭面でもね。何より、貴方の目はまだ楽隠居を決め込む者の目ではありません。本心からそう思うような方ではないと思ったからこそ話させていただきました」


 そう話すジフィンさんに、何と返して良いのか分からず無言を貫く自分にジフィンさんが更に続ける。


「どちらにせよ、我々は一度国へ戻らねばなりません。エタニアも向こうで出来る最低限の手続きやクエストをこなす事になりますが、その間に信頼出来る方や貴方の事情を知る方に相談し、検討していただけませんか?私は勿論、エタニアも返答を心待ちにしておりますので」


 そう言ってジフィンさんは自分とまだ何か話したげな様子のエタニアを連れてその場を後にする。


(……俺は、どうしたいのか。どうするべきなのか)


 皆が去って一人になり、その場に立ち尽くしながら様々な考えが頭の中でぐるぐると回っていた。


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