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ギルド受付で働いてますが、攻略して欲しいのは自分ではなくクエストです  作者: 柚鼓ユズ


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思う事はあれど新人の初陣を見守ります

「ようやく到着なのだわ!ここから……遂に私の輝けるハンター生活が始まるのだわっ!」


 平原のベースキャンプへと辿り着き、開口一番にエタニアが叫ぶ。それを諭すように冷静な口調でイアトラさんが声をかける。


「落ち着いてくださいお嬢様。クエストに向かう前にまずは準備です。支給品をろくに確認もせずに向かうと後で泣きを見るのはお嬢様ですよ」


 イアトラさんの言葉に、そわそわしながらもこちらを見てエタニアが口を開く。


「……こほん。失礼したのだわ。ではアークさん、改めて支給品に関する説明をお願いしたいのだわ!」


 そう言ってエタニアがメモとペンを取り出す。既に予習はしているのだろうが、せっかくの機会なので覚えておいて損はない知識も含めて簡単に説明しておく事にする。


「分かりました。では基本的に配布される支給品の説明とその使い方から始めさせて貰いますね。まずは……」


 そうして、支給品とクエストに向かう前の注意点を話し始めた。


「……なので、怪我をした際に近くに採取ポイントがある場合はそこを調べるまでは緊急時を除いて回復薬を使うのを待つべきです。採取出来た素材によってはその場で調合して上回復薬に出来ますからね。……と、ひとまずこんなところでしょうか」


 自分の説明を最後まで真面目に聞きながらメモを取るエタニア。一通り説明を終えるとぱらぱらとメモをめくりながら内容を口に出して反芻する。


「えぇと……ターゲットを発見した時のペイント弾に、位置を知らせる信号弾……ベースキャンプを基準にして地図を見る時は……」


 事前に自身でも色々と勉強していたらしく、てきぱきと内容を口にして確認していくエタニア。聞く限りではしっかりと内容をまとめているようだ。


(やっぱりこの子は根が勤勉だな。この様子なら問題もなさそうだな)


 そう思っているとエタニアが自分の用意した支給品を丁寧にポーチに入れ、テンション高く叫ぶ。


「さぁ!これで準備も完璧なのだわ!いざ行かんクエストに、なのだわ!」


 そう言って左手を高く掲げるエタニア。その様子を横目にイアトラさんが自分に声をかけてくる。


「お手数をおかけしましたアークさん。横で聞いておりましたが私からしても的確かつ参考になる説明でした。……しかし、貴方ほどの人ならこのような地方ではなく、もっと腕聞きのランクが集まるギルドでの受付の方が適役のように思いますが」


 イアトラさんの言葉に思わず苦笑しながら言葉を返す。


「……いえ、光栄ですが自分には過ぎたる評価ですね。自分には今のエタニアさんのような新人を見守りサポートする方が性に合っていますので」


 その言葉は半分真実、半分嘘であった。師匠のお陰でギルドの受付として働く事になり、新人や将来有望と思える若手を育てる事にやりがいを見出しているのは確かだが、より優秀なハンターを自分の知識や経験でより高みを目指せる存在にしたいという欲が自分の中に全くないかといえば素直に頷けない自分がいる。だが、そんなハンターが集うようなギルドに自分が赴けば様々な問題が発生する事が容易に想像出来る。


(……王国や栄えた街に向かえば向かうほど、自分の過去を知る者が増える事となる。きっと今のように気軽に受付業務をさせては貰えないだろう)


 仮にもハンター時代に人から称されるレベルに至ってしまったが故に、それが時には厄介な方向へ作用してしまう事も多くなる。そうなれば多くの人に迷惑をかけてしまうのは想像に難くない。


(逃げるように現役を退いた事を責められたり揶揄される事は何でもない。問題は不用意に自分をクエストに勧誘してきたり下手にクランを結成させようとする連中が出てくる事だ)


 皆が皆、テルマのようにこちらの気持ちを汲みつつそれでも自分と組みたいと言ってくれる者や現在のバンツたちのように純粋に自分を慕ってくれる連中ばかりではない。そうなれば必ずギルドや他のハンターたちに迷惑をかける事になる。


(……テルマ級とまではいかなくとも、才に溢れた者を育成したいという気持ちは確かにある。かつての俺が師匠にそうして貰ったように。だが、そんな出会いはそうそう望めないだろう。確実にそんな出会いがあるならともかく、リスクを背負ってそんな場所に向かう事はとても考えられないな)


 頭の中で思わず色々と考え込んでいると、自分が悩んでいるのかと思ったのであろうイアトラさんが自分に声をかけてくる。


「失敬。あまり重く受け取らないでくださいアークさん。あくまで私の素直な感想を述べただけですので」


 イアトラさんの言葉に慌てて言葉を返そうとする。だが、それよりも早くエタニアが自分たちを急かすように声を掛けてきた。


「もう!二人とも何を話しているのだわ?準備が出来たのだから今すぐ出発なのだわ!」


 一秒でも早くクエストに向かいたいと言わんばかりのエタニアにそう言われ、二人で顔を見合わせ苦笑する。


「失礼しましたお嬢様。では、クエストに向かうとしましょうか」


 そうイアトラさんが言い、拠点を離れて討伐対象の魔獣の散策へと向かう事となった。



「……いましたね。まずは岩石獣から狙いを付けるというお嬢様の戦略は大正解ですね」


 地図を頼りに平原を歩き、岩場の多い水源へと向かうとそこには水を飲む岩石獣の姿があった。


(砂漠や湿地帯、生息地は多岐にわたる岩石獣だが基本的にどの生息地でも水場を好むという事は事前に調べておかなきゃ分からない事だ。闇雲に周囲をぐるぐると回りがちな初心者とはやはり違うな)


 そんな事を思っていると、エタニアが自分たちに声を掛けてくる。


「では、さっそく仕掛けるのだわ。イアトラ、それにアークさん。手出しは無用なのだわ。私の始めての討伐クエスト。そこで見ていて欲しいのだわ」


 そう言って装備を構えるエタニア。変形式の盾と伸縮性の槍をその場で構える。しゃきん、と音を立ててメイス程度の長さだったものが槍の長さへと形を変える。それと同時に手の甲から肘の先よりも長めの盾を装着した姿を見てエタニアが槍使いだという事を知る。


(……なるほど。軽装だから片手剣や双剣使いかと思っていたが槍使いだったのか。まぁ、『粉砕者』と称された父親の血を引いているなら槍使いというのも納得だな)


 エタニアの父であるジフィンもメインで使用していた武器は槍であった。その屈強な体躯と盾で敵の猛攻を受け止め、手にした槍で魔獣を貫く。味方の盾になりつつ己も敵を仕留めていく戦闘スタイルは当時の自分たちの中でも語り草になっていた。


(だが、ジフィンさんのように恵まれた体格ではない彼女ではその戦法は難しい。いったいどうやって戦うつもりなのだろうか)


 そう自分が思ったと同時、腰を落としてエタニアが一目散に槍を構えて岩石獣へと駆け出した。その速さに思わず驚愕する。


(……早いっ!あの装備でこの速度!この子……!並の槍使いじゃない!)


 想定外の速さで岩石獣の元へと辿り着くエタニア。その速さはもはや突進と言える。一瞬遅れてその気配を感じ取った岩石獣が後ろを振り返るもののもう遅い。岩石獣の元へと辿り着いたエタニアが雄叫びを上げる。


「……はあああぁぁっ!」


 次の瞬間、岩石獣の堅い鱗の隙間をぬって繰り出されたエタニアの槍が岩石獣の腹部を勢い良く貫いていた。


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