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ギルド受付で働いてますが、攻略して欲しいのは自分ではなくクエストです  作者: 柚鼓ユズ


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入念な説明と下準備は大事です

「……ランクの昇格に関わるもので、現時点で受注可能なクエストをご所望という事ですか……?分かりました。調べてみますので少々お待ちください」


 そう言って現状エタニアの受注が可能なクエストの中で全ての条件が噛み合う物を手にしたリストから探し始める。図らずも面と向かってジフィンさんに自分が名指しされたような形になっているため、他の受付の連中はその場に固まっている。


(……これもジフィンさんの狙いか?この状況なら俺以外の誰かが他に何かを提案する事はまず不可能だ。完全に自分に任されてしまった形だな)


 そんな事を思いながらも該当するクエストをピックアップし、ジフィンさんとエタニアの前にリストを提示しながら言う。


「……巨大鳥と岩石獣の同時討伐、ですか。もう一つは水魚獣の討伐……なるほど。この二つのクエストを選んだ理由は?」


 ジフィンさんがリストを見て静かにそう口にする。エタニアもいつの間にか自分の隣でリストを覗き込んでいる。


「はい。……まず、ランクを上げるためには様々なクエストがあります。その中には目的の素材を集めるクエストや、小型獣を一定数討伐するクエストもありますが、今回それらは除外してあります。エタニアさんがそれでは納得しないと思いましたので」


 自分の言葉にエタニアがうんうんと頷く。その様子をため息を吐きながらジフィンさんが続ける。


「なるほど。私たちの時代とは違い細かな条件が定められているのですね。もう一つお聞かせください。同時討伐を選んだのは何故でしょう?巨大鳥も岩石獣も単体のクエストはあるとは思うのですが」


 ジフィンさんの問いに再びリストを指差しながら口を開く。


「おっしゃる通りです。巨大鳥の単体討伐クエストは実際初心者ハンターの登竜門とされるため、ランクを上げる基準としてクエストの一つにあるのは確かです。ですが、今すぐにでもクエストに向かいたいとなるといくつか問題があります」


 二人が自分の言葉に聞き入っている事を確認してから続ける。


「巨大鳥の生息地は主に密林と平原です。そして、単体のクエストは密林での狩猟が条件となっておりますが、この時期は餌となる小動物や植物が豊富なため密林に巣食う魔獣の行動が活発です。木々で視界が悪いうえ、個体値が大きい個体に出会うリスクが高いため今回は除外しました」


 そう話すと、ジフィンさんがうんうんと頷きながらリストから自分の方を見て言う。


「……うん。それは確かに正しい判断ですね。となると、それに変わって水魚獣のクエストを入れたのは浅瀬での戦闘がメインになりますし、この時期は水温の関係で水魚獣の動きが鈍くなるからですね?」


 ジフィンさんの言葉に頷き、自分が続ける。


「水魚獣に関してはその通りです。もう一つのクエストについての補足ですが、同時討伐とはいえ捕獲も許可されておりますし、平原のため視界も安定しています。二体同時に相手をする事さえ避ければ個体値も比較的小さめな物を相手に出来ますし、基礎が出来ていれば討伐は難しくないかと思います」


 そう言い終えると、ジフィンさんがうんうんと頷きながらエタニアへ声をかける。


「流石ですね。私が現役の時代にパーティーに貴方のような存在がいたらどれだけ心強かったでしょうね。……うん、問題はありません。さぁエタニア。アークさんが選んだクエスト、どちらを所望しますか?」


 ジフィンさんの言葉に、躊躇う素振りをまったく見せずにエタニアが一つのクエストを指差した。



「……結構歩くものなのね。受付を抜けてすぐ目当てのフィールドに向かえるものだと思っていたのだわ。意外と大変」


 悩む事なくエタニアが選んだのは平原での同時討伐クエストであった。目的地へと向かう最中でエタニアがぽつりと漏らす。


「平原だからまだ良い方ですよ。これが氷原や火山でのクエストとかになると、目的地に向かうまでにもっと体力を消耗しますからね」


 そうエタニアに言葉を返すと、後ろから声が聞こえる。


「そうですよお嬢さま。この程度で弱音を吐くなら今すぐお戻りになられても構わないのですよ?」


 そう口を開いたのはジフィンさんの部下の一人であるイアトラさんだ。ジフィンさんの下でパルキン家に仕えながらも現役のBランクハンターとの事だった。調査と改善報告書をまとめるジフィンさんたちとは別行動でエタニアのクエストに同行する事となった次第である。口元に蓄えた立派な髭と知的な雰囲気を醸しだす眼鏡、前髪から髪を後ろに流した髪型といい、その出で立ちはハンターというよりも執事のような雰囲気を感じさせる。


「そ、そんな事はないのだわイアトラ!これはあくまで感想であって決して弱音ではないのだわ!そもそも、アークさんが支給品の配布やクエストの手ほどきをしてくれるのだから貴方が付いてくる必要などなかったのだわ!」


 慌てたように言うエタニアに対し、表情を変えずにイアトラさんが淡々と続ける。


「そうはいきません。あくまでアークさんはお嬢様の初クエストのためのガイド役や案内のために今回特別に同行してくださっている身。ハンターとしてではありません。それに、私の同行無しでクエストに出られたと思いますか?」


 イアトラさんにそう言われ言葉に詰まるエタニア。受注の際に当然のように一人で向かうとごねたものの、イアトラさんの同行を許可しない場合はクエストの参加は中止、それどころか調査業務への強制連行とジフィンさんに言われて渋々それを受け入れた次第である。


「わ……分かっているのだわ!ただし!手出しは一切無用なのだわ!貴方はあくまで見届け人!そこは譲れないのだわっ!」


 そう言ってびしっとイアトラさんを指差すエタニア。そんなエタニアのテンションをまったく意に介さずにイアトラさんが言う。


「はい。勿論私が自ら魔獣に立ち向かう事はいたしません。あくまでお嬢さまの監視と有事の際のサポートに努める所存です。それに、私も一応現役とは言えど引退をしていないだけで今ではパルキン家での業務の方が主となっておりますので」


 そう言って背中に担いだ大剣を指差すイアトラさん。あのサイズの大剣を軽々と担いでいながら平然と歩く姿を見るに、その言葉には謙遜も含まれていると思った。


(……本人の言う通り、全盛期よりは劣るのかもしれないが充分強そうに見えるけどな。何にせよ、この前のようなトラブルにならない事を祈るばかりだ)


 内心でそう思いながら、自身のバッグの中に密かに忍ばせた支給品ではなくかつて己が使用していた片手剣に触れる。使わずに済むに越した事はないが、万が一という事もある。


(……ま、前回の火炎龍よりもはるかに格下の魔獣だし、イアトラさんだっている。取り越し苦労で済むのならそれが一番だ)


 そう思いながらも三人で会話をしながら道中を過ごし、程なくして目的地の平原へと辿り着いた。


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