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ギルド受付で働いてますが、攻略して欲しいのは自分ではなくクエストです  作者: 柚鼓ユズ


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近々職場に調査が入るようです

「……え?近々お偉いさんの調査が入る?本当ですか?」


 食堂とリモの件も落ち着き、日々の日常に戻り受付業務をこなしていたある日、先輩と就業前の書類整理を進めていると先輩が世間話のついでにそう口にした。


「あぁ。とはいえ俺たちにはあまり関係ない話だがな。ギルドに使われている資金が適切なものかとか、設備や環境に劣悪なところはないかとか問題を放置していないかとか、そんな辺りの調査さ。経費や資金を中抜きしたりちょろまかしたりする事が出来る場所の奴らは今頃慌てているかもだがな」


 そう言って先輩が笑う。確かに自分たちは現金を扱う事もほとんど無ければくすねるような物もない。そう考えれば別に調査が入ろうとも自分たちが気にする事もないだろう。


「ま、調査の日は決められた期間内の日に抜き打ちで来るって事だから俺たちはせいぜい居眠りしないようにその期間真面目に仕事をこなすだけさ」


 先輩の言葉に頷き、その日の業務を終えた頃にはそんな話があった事すらすっかり忘れていた。


「ふぅ。食った食った。やっぱり食堂の飯は最高だな。しかもリモちゃんの笑顔と接客付きときたもんだ。……でもよ、なんかアークの量だけ盛りが多くないか?小鉢が一つ余計に付いてたりとかさ。同じ定食を頼んでるのにおかしいよなぁ」


 気を使わなくて良いと何度も言っているのだが、自分が食堂に行くと必ずといっていいほどリモからの過剰一歩手前のサービスがある。目立つから控えてくれと伝えてようやく今のレベルまで落ち着いたのだ。


「……何でだろうな?気まぐれだったり、ちょっとしたお返しじゃないか?少しだけ食堂を手伝った件もあるからな」


 元々自炊は嫌いではないため、一度食堂に行くのを控えてみたが、四日ほど経過したところで同僚をはじめとしたリモのファンたちから『リモちゃんの元気がない。凄く落ち込んでいるようで、食堂に人が来る度にため息をついている』とちょっとした騒ぎになった。

 そのため、最近は三日に一度程度のペースではあるが食堂で昼食か夕食を摂るようにしている。


(……おばちゃんはにやにや笑っているだけで助けてくれないからな。大した事をした訳じゃないんだからそこまで恩義を感じなくても良いだろうに)


 下手に説明するのも面倒なため、会話を切り上げるのも兼ねて休憩時間が終わる前に一服してから戻る事にする。


「じゃ、俺は始業までに一服してくるよ。先に戻っててくれ」


 そう同僚に声をかけ、早足で喫煙所に到着してタバコに火をつける。


「あぁ……至福だ。やっぱり食後に吸うタバコが一番美味い」


 喫煙所には誰もいないため煙を吐き出しながら思わずつぶやく。満ち足りた気持ちで一本目を吸い終え、まだ時間に余裕がある事を確認して二本目に火をつけようとしたその時だった。


「……もし、そこの貴方。少し尋ねたい事があるのだわ」


 そう声をかけられた。その声に振り向くとそこには金髪の小柄な少女が立っていた。


(……誰だこの子?見ない顔だな。立派な身なりだが、ハンターという感じでもなさそうだ)


 ギルド関係者の敷地内喫煙スペースのため、ハンターがここで喫煙するという事はまずあり得ないし、動きを制限しにくい軽鎧こそ身に付けてはいるものの、綺麗な巻き髪をした目の前の少女がハンターとは考えにくかった。が、すぐにスイッチを応対モードに切り替える。


「はい。何でしょうか?」


 二本目のタバコを諦め、少女の元へと近づく。相手の立場や身分が分からないため初手から敬語で会話を始める。こういった相手の対応は敬語にしておく事に越した事はない。そう思っていると少女が口を開く。


「……ギルドに用事があって来たのだけれど、施設を見て回っていたら同行者とはぐれて道に迷ってしまったのだわ。良ければ窓口か受付まで案内して貰えると助かるのだわ」


 少し恥ずかしそうに少女が言う。なるほど、親か保護者がギルドに何か用事があってここへ訪れたのだが途中ではぐれてしまったのだろう。確かに初めて来た者に対しては少し分かりにくい構造の建物なため、少女の申し出に答える事にした。


「分かりました。では、ちょうど自分もそこへ戻るところでしたのでご案内しますね」


 そう言って少女と共に受付へと向かう事にした。


「助かったのだわ。珍しい建物なので散策していたら、いつの間にかお付きの連中と離れてしまってどうしようかと思っていたのだわ」


 道すがら歩いていると少女がそう声をかけてくる。言葉使いに癖はあるものの、やはり会話の端々に気品を感じる。


「それは大変でしたね。少し分かりにくいですがここからならすぐ着きますんで大丈夫ですよ。窓口に着いたらお付きの方と合流出来るように取り付けて貰いますね」


 向こうから積極的に声をかけてくれるタイプで助かったと思っていると、少女が更に話しかけてくる。


「助かるのだわ。貴方、もしかして過去に執事や使用人の経験があるのかしら?話していてとても落ち着くのだわ。……私を変に子供扱いもしないし、かといって変に畏まり過ぎる感じもしないし」


 長いハンター生活の中で様々な連中と出会った経験が活きているのだろう。相手に応じて対応を使い分ける事には自然と慣れているのが幸いした。


「……いえ。特にそのような経験はないですね。ただ、この年の割には多くの人と関わってきたとは思いますが」


 その後も取り留めのない会話を交わしながら歩いていると、すぐに窓口が見えてきた。


「お、もうすぐですよ。ほら、あそこが入り口で……ん?」


 会話を途中で止めて窓口の方を見る。何やら何人かが騒いでいるようだ。


(何かあったのか?やけに皆が慌てているようだが……)


 気にはなるものの今はこの少女を案内する方が先だと思い、ひとまず少女と共に窓口へと向かう。自分の姿を見つけた同僚が自分に駆け寄り声をかけてくる。


「戻ったかアーク!大変なんだ!調査員のお偉いさんの娘さんがいつの間にかいなくなっていたそうだ!特徴は小柄で金髪の巻き髪で……え?」


 そこまで言ったところで自分の隣にいる少女に気付き、自分と少女を交互に見る。思わず自分も少女のほうを見ると少女が口を開く。


「……こほん、ご挨拶が遅れたのだわ。私の名はエタニア=パルキン。由緒正しき調査観察員パルキン家の長女なのだわ」


 さらりと金髪をなびかせ、エタニアと名乗る少女は自分たちにそう告げた。


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