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第26話 リュカ、言語学習に張り切る

 久々の自宅……と言っても精々数日空けた程度なので流石に何も変わりなく、新聞や郵便すら来ることがないためポストも空のまま相変わらず平和な顔をして家は佇んでいた。


 今日から2人は言語学習に没頭する。リュカは日本語を、マサシはマルリール語をそれぞれ教え合う事になるわけだが、まず初めに学習方法について話し合った。


  まず、ここでリュカのステータスを見てみよう。

=====================================

リュッカ・ルン・シルフェン

性別:????

年齢:112歳

職業:????

LV:38

HP:342 MP:572

力:81 魔:182 賢:128 速:79 器:126 運:14

スキル:水属性魔術LV5 風属性魔術LV5 火属性魔術LV2 地属性魔術LV2

    弓術LV3 鑑定LV3 解体LV4 エルフ語 マルリール公用語 日本語LV1

    ???? ???? ???? ???? ????

=====


 マサシとパーティを組んでからゲーム的な成長が始まったリュカはレベルやパラメータは勿論の事、スキルもきちんと成長していた。【弓術】と【鑑定】はLV3に【解体】に至ってはLV4に成長。そして驚くべき事に【日本語】スキルが芽生えていた。


 これには『LV1』とついているが、これは「ひらがな・カタカナ」の読み書きが可能と言う事が表されている。つまり「日本語を聞き取る」「漢字を読む」という事は含まれていないため、リュカはマサシに強請って出して貰った多くのゲームで日本語に悩まされている。


 そのため、リュカの学習方針はまず「漢字が含まれている」テキストを使用したRPGをプレイする事に決まった。以前同様、マサシが横に付き添って通訳をする形だ。


 そしてその際にマサシがエルフ語で読み上げた言葉をリュカがマルリール語で発音する事により、マサシは耳でマルリール語を覚えられる、そう言う仕組みを考えた。


 リュカにとって日本語の聞き取りは後回しで構わないが、マサシはマルリール語の聞き取りと発音は早めに覚えたい大事なスキルであるため、このような学習法になったわけだ。


 無論、リュカはしっかりと『日本語の聞き取り』も今後の予定に組んでおり、現行ゲーム機のフルボイスゲームを楽しむ野望も忘れては居なかった。


 リュカは幸せであった。大義名分を掲げて堂々とゲームで遊べるからである。ゲームとの出会いはリュカの人生を変えたと言っても過言では無かった。


 魔術を極めよう、ただそれだけを目標に掲げ日々努力を重ねてきた結果、待っていたのは面倒な毎日だった。日々来襲する『弟子希望者』それから逃げれば今度は家族から無言で放たれるプレッシャー『はよ良い相手見つけて大人になれ』である。


 エルフ族は長寿とは言え、成人を迎える100歳を迎えれば結婚を考える必要があった。種の特異性からリュカは未だ幼い身体のままであったが、それも未婚というのが関係している。


 エルフには特殊な生態があり、きちんとした『成体』になるためには『兆候』を経て『選択』をする必要があった。リュカはその『兆候』はまだ無かったし、来たところでどう『選択』して良いものか里に居る頃は毎日悩んでいた。


 其れに加えて襲来する弟子候補達。ある日とうとう溜めかねて里を飛び出す事になったわけだが、マサシと過ごすこの時間はそんな事を忘れさせるゆったりとしたもので、中でもこのゲームは日常から飛び出して異世界に飛び込んだかのような感覚がして、気兼ねなく暮らせる第二の世界としてとても居心地が良かった。


 ゲームに逃げていると言われればそれまでなのだが、これが良い具合にガス抜きとなり、マサシの存在と相まってリュカの心を少しずつ癒やしていた。


 現在リュカが『学習』のためプレイしているのは某スーパーなハードの某最後の幻想Ⅴである。マサシが教材としてこのゲームを選択したのには理由があった。


 まず、このシリーズ初めて『漢字』が採用されたというのが一番の理由だ。しかも容量の関係からか、全ての漢字が使われているというわけでは無く、入り口としては適度な難易度で使用されているため、丁度良いと判断したのだ。


 某ドラゴンな探求のⅤも同様に易しめの漢字が使われているのでそっちと悩んだのだが、リュカがそれのⅢをまだクリアしていないため、別のシリーズを選択したというわけであった。


 この現在プレイしている某Ⅴはアビリティという形でスキルが存在するため、リュカは現在の自分と重ね合わせやすく、どんどんのめり込んでいった。ここにマサシの誤算があった。


 このゲームの平均的なプレイ時間は20~30時間程度である。長くとも一週間もすればクリアする事が出来、その後はもう少し漢字が多いゲーム……例えばサウンドノベルゲーム等も触らせてみよう、そう思っていたのだ。


 しかし、この某Ⅴの魅力のひとつに『豊富なジョブとアビリティ』があった。アビリティシステムは奥深く、またコレクション要素が強い。リュカはコンプ欲が強いようで、アビリティ、特に『青魔法』と呼ばれる敵から覚えるスキルの収集に夢中になった。


 結果として、一週間ではクリアする事が出来る筈も無く。


「な、なあリュカ?そろそろラスボスさん倒しに行かないか?待ってると思うよ?」


「だめだよ!まだこのジョブマスターしてないから!」


 真面目な顔で延々とスーパーボールのような敵を倒し、アビリティポイントを稼ぐその作業は既に学習では無かった。


 流石に見かねたマサシはアドバイスをした。


「なあ、クリアしたら二度と出来ないってわけじゃないんだぞ。例えばさ、今の状態でクリアするだろう?その後は最後にセーブしたところからまたプレイできるんだよ。

 そこからが本番だ。後はコツコツとレベルを上げて最強を目指す。最強となったパーティーでラスボスと再戦だ。以前苦労したあの攻撃がまるで痛くない!それどころか半分以下の時間で倒せてしまう!」


「ああ!成長が目に見えるんだ!」


「そう!いきなり最強の状態で倒してしまったら楽しみをひとつ無くしてしまうことになるんだよ」


「ありがとうマサシ……僕はなんて過ちを犯すところだったんだ……」


 こうしてリュカは重い腰を上げ、某最終幻想Ⅴと某ドラゴン探索Ⅲのラスボスをそれぞれ倒し、二つの世界に光を取り戻す事となった。


 達成感に浸るリュカの目には既に新たなる次元に向けた闘志がメラメラと燃えていた。

 

 マサシはその顔にため息をつき、リュカの相談の元、1日のスケジュール表を作った。


6時       起床→顔を洗い7時まで鍛錬

7時半      朝食

 8時半~11時半 依頼達成のための狩りや採取作業

 12時      昼食

 13時~18時   言語学習(ゲームの時間)

・某なんとかオブグレイセスf 3時間

・某ドラゴン探索Ⅲレベル上げ 1時間

・某最終幻想Ⅴレベル上げ   1時間

 18時半     夕食

 以後、就寝時間の22時まで自由時間。



 なるべくこれを守って行動しようと2人で決め、ある程度きちっと守って行動する事が出来た。やはりというか、予想された結果になったのが自由時間。リュカは夕食を食べ終わるとさっさと風呂に入り、そのまま22時までゲームに没頭する。


 そう、新たに追加した「某なんとかオブグレイセスf」にもそれなりにコンプ要素がある。リュカはそれを見て嬉しい悲鳴を上げ、自由時間を使って某Ⅲと某Ⅴの育成を進め、最終的には言語学習の時間を全て『某なんとか』に割り当てる事に成功した。


 もともとクリア済みのゲームを早くコンプして貰うために設けた時間だったのでマサシとしては結果オーライなわけだが、これは同時に新たなゲームを強請られる事に繋がってしまうのだ。


(くそー、なんだってノベルゲームはどれもこれも現代日本舞台なんだよ……)


 かといって、流石にファンタジーノベルのためだけにえっちなゲームをさせるわけには行かないマサシは、なるべくコンプ要素が薄いゲームを必死に探すことになるのであった。


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