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地味だからと婚約破棄宣言した彼は、なぜか投げ飛ばされました。  作者: miniko


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10/27

10 訪問の頻度

 あの翌々日には、私とヘンリー様の婚約はアッサリと破棄された。

 異例のスピード婚約破棄である。

 まあ、双方の当主がサインせざるを得ない状況だったのだから、そりゃそうなるよねって感じでもあるけど。



 アイリーンとは、残念ながら、あれから会えていない。

 申し訳ない事に、彼女は騒動の件について両親から厳しく叱責され、謹慎を言い渡されてしまった。現在も、通学以外は外出が許されず、プライベートでは誰とも会えない状態が続いている。


 そんな中、私は、アイリーンに庇ってもらった事へのお詫びとお礼にフレッカー子爵家へ伺った。

 叔母様ご夫婦は、私に対しては怒っていらっしゃらなかった。寧ろヘンリー様の方に腹を立てているらしく、アイリーンが一方的に悪かった訳ではない事も理解してくれていた。

 それでも、アイリーンには軽はずみな行動を反省させなければいけないので、今は私とは会わせられないと言われた。


 手紙のやり取りだけは許されているみたいで、『会いたい。寂しい』という便りが毎日の様に届く。

『私の代わりに怒ってくれたのは嬉しいけど、自分の評判を落とす様な事をされるのは悲しい』『謹慎が解けたらお出かけしましょうね』と、こちらも毎日の様に返信を出したら喜んでくれているみたい。


 実質なかった事になったとはいえ、今回の事件がアイリーンの将来に及ぼす影響は大きいだろう。

 少しでも助けになれる様に、お兄様に相談しておかなくちゃ。


 ヘンリー様からも何度か手紙が届いたが、封も切らずに送り返したので内容はわからない。

 謝罪なのか言い訳なのか……、いや、多分見当違いの苦情だろう。


 ウチと侯爵家の事業提携は婚約破棄によりご破産になったが、そちらについても慰謝料が入るので、お父様のご機嫌はさほど悪くないみたいで、八つ当たりはされていない。

 というか、マクブライド様の存在が抑止力となっているらしく、私への理不尽な言葉が急激に減少した。


 ただ、マクブライド様との正式な婚約はまだ結べておらず、一応『婚約者候補』という中途半端な立ち位置になっている。

 その件についてはお父様の意見は関係なく、世間体を考えたお兄様とあちらのご両親のご意向だ。

 あれだけ派手に婚約を破棄したのだから、騒ぎが鎮まるまで、半年くらいは間を空けた方がいいだろうとの判断である。

 すぐに婚約を発表したら侯爵子息から公爵子息に乗り換えた、だなんて言われかねないから。


 私も彼も、その判断には異論はない。

 というか、私としては、『候補』でいる間に彼を解放してあげられたら一番いいんじゃないかって、ちょっとだけ思っていたりする。


 思っていたり、するのだが───。




 初めての訪問から丁度二週間が経った今日、マクブライド様はまたしてもハサウェイ伯爵邸を訪れていた。

 あれから週に二回以上のペースで足繁く通ってくれているのだ。


 私達は今日もあの日と同じガゼボで、のほほんとお茶を飲んでいる。


「マクブライド様」


「ヴィンスでいいよ。

 ファーストネームもファミリーネームも長くて面倒でしょ?

 親しい人間は皆そう呼ぶし」


 そう言って微笑む彼の言葉からは、いつの間にやら敬語が抜けている。

 たった二週間の間に、彼は私の前でもかなり気を抜いた態度を見せる様になった。


「いえ、恐れ多いので」


「ハハッ。恐れ多いって大袈裟な。

 どうせすぐに婚約するのだから、構わないでしょ」


「いえ、マクブ───」

「ヴィンス」


 食い気味に訂正されて、結局、面倒臭くなった私が折れた。


「ヴィンス様」


「ん? なに?」


 マクブライド様改め、ヴィンス様は要求が通ったせいか、ちょっと得意げに微笑む。

 素のヴィンス様は、公の場で見る姿よりも、なんだかちょっと子供っぽい印象を受ける。


「あの、訪問の周期が少々短いのではないでしょうか?」


「え? そうなの?

 標準的な頻度がよく分からないけど、まあ、長いよりは良いんじゃない?

 それに、僕、気に入ってるんだよね」


「なにを?」


 首を傾げながら問えば、ヴィンス様はスッと手の平でニコラを示した。


「彼女の淹れる紅茶。

 凄いよね、ウチの侍女達より上手いんだよ?」


「まあ、光栄ですわ」


 そう言って控えめにオホホと笑うニコラ。

『光栄ですわ』じゃないよ。

 猫被っちゃって。貴女、普段そんなキャラじゃないじゃない。


 まあ、良いですけどね。

 ニコラを褒められるのは、私も嬉しいですけどね。


「私としては、ウチにいらしてくださるのは構わないのですが、お仕事お忙しいのでしょう?

 兄を見ていれば分かりますから、お体を大切に、ご無理はなさらないでくださいませ」


「うん、ありがとう。

 確かに仕事は忙しいけど……ほら、僕は殿下とは結婚しないから」


 どーゆー理屈ですか!?


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