練習のあと
ぽちゃん、ぽちゃん……
波とも言えない揺らぎの音。
ぼんやりと空の色を映す滑らかな水面。
淡く黄色に揺れている。
防波堤に腰かけて。
外村くんオススメ。
ホットサンドとホットドッグを食べている。
「おいしいね!」
ホットサンドはキャベツとマヨネーズがたっぷり。
肉厚のハムが入っていた。
ホットドッグはキャベツとチーズがたっぷり。
焼いたソーセージが香ばしかった。
「でしょ? 部活終わりに買ってるんだ」
「へえ。そうなんだ」
運動したからか。
ぺろりと平らげた私。
満足のうなずきをして。
2本目のミルクティーを。
両手で持ってごくごく。
「ふー」
「北見さん、美味しそうに食べるのもそうだけど、なんか幸せそうだね、食べてる時」
「え? そう? でも、そうかも。美味しい物食べてると幸せ感じる」
外村くんは私を見て。
笑いを浮かべて。
空を見上げた。
「足痛む?」
「うん、でも、これくらいへっちゃら」
「ならいいんだけど……」
「練習楽しかった。体育祭が楽しみなんだ私」
「それは俺も」
「そっか。外村くんは運動神経いいからね。私は運動得意じゃないから、はじめてかな、こんな気持ち」
「……俺も初めてかな」
「ん?」
「あ、いや、北見さんとペア組めて……良かったって」
「それは、私もだよ」
両手を防波堤の端に突っ張って。
足をぶらぶらさせた。
外村くんはペットボトルを脇に置いて。
ズボンをさする。
そして。
ポケットからスマホを取り出した。
「あ、あのさ」
「なあに?」
「よかったら、その、連絡先交換してもらえないかな」
「あっ……うん。いいよ」
私はブレザーのポケットからスマホを取り出す。
洋ちゃん、西郷くん、瑞葉ちゃん。
外村くんで4人目だ。
「ありがとう。北見さん」
「ううん。こちらこそよろしくね」
「よし……」
小さな声がして。
片手でガッツポーズをした外村くん。
「どしたの?」
「あ!? いや、その、スマホケースかわいいね。ピンク好きなの?」
「うん。見て」
「あっ、兎田ぴょん吉だ」
「へへ。そうなのこの子好きなんだ」
「ふーん。北見さんはかわいいものが好きなんだ」
「かも? 外村くんは何か好きなものあるの?」
「俺? サッカー選手とか……かな」
「ふーん」
サッカー好きな男の子は。
みんなおんなじなのかな?
洋ちゃんも外国の誰々が好きだとか上手いとか言ってたな。
「そろそろ帰ろっか。福田に行くバス、もうすぐくるよ」
「そだね。よいしょ!」
立ち上がって。
スカートをはたいた。
夕焼けに染まる空。
両手を広げて深呼吸する。
淡い潮の香りを吸い込んで。
大きく息を吐いた。
ん?
視線を感じて横を見る。
夕陽に顔を染めた外村くん。
「あのさ……」
「ん?」
少しうつむいて首の後ろをさする。
笑っちゃいけないけど。
おかしくて。
「ふふふ。また、触ってるね!」
「あっ、そ、そうだな」
苦笑う外村くん。
ぴょんと防波堤から。
軽やかに飛び降りた。
私も負けじとジャンプした。
ひゅーっと。
風がスカートの中に入ってきて。
お腹が浮いた心地になった。
地面に足がついて。
「いてて」
擦りむいた膝がじんじんする。
「だ、大丈夫?」
外村くんは。
顔を洗うように。
両手を上下させた。
なぜか。
おどおどしてる。
「うん、平気だよ」
カアカア……
カラスが2匹。
鳴き交わしながら。
仲良く空を横切っていった。
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