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葉隠れの蕾  作者: ぽんこつ


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10/12

帰りの最中《さなか》

「今日はありがとう外村くん。練習も楽しかったし、パンも美味しかった」

「こちらこそ、そうそう、『タケヤ』のポテトサラダのサンドイッチも旨いよ」

「うわっ。いいね。こんど買ってみる。外村くんも美味しい物好きなんでしょ?」

「ん? まあね。そうだ。北見さんは何のゲームしてるの?」

「色んなのするけど。今は『渦潮』っていう。オープンワールドのゲームかな。キャラがねめっちゃかわいいんだ」

「へえ。かわいいのが好きだもんね北見さん。『渦潮』か。俺もやってみようかな」

「やりなよ! 私がキャリーしてあげる。洋ちゃんや西郷くんに瑞葉ちゃんもやってるよ」

「そっか。じゃあ後でダウンロードしてみるよ」

「是非是非!」

横断歩道の信号待ち。

行き交う車は。

小さなライトを灯し始めていた。

ん?

「外村くん瀬田町は反対でしょ?」

「ん? バス停まで送るよ。俺のバスまだ来ないし」

「そうなの?」

「うん、あと10分後かな」

「そっか」

信号が青に変わる。

横断歩道を渡ればバス停はすぐ近く……

あれ?

洋ちゃん!

ん?

中臣さんと喋ってる。

んん?

中臣さんは私服だ。

しかも。

フリフリのおしゃれなミニスカート。

オーバーサイズのトレーナーもかわいい。

んんん?

洋ちゃんの用事って……

ひょっとして……?

私たちがバス停に近づくと。

中臣さんが先に気がついて。

「こんにちは」

って。

笑いを含んだ。

高い声が飛んできた。

「こんにちは」

私より先に外村くんが応じていた。

洋ちゃんは。

目を丸くして。

私と外村くんを見てうつむいた。

ブルルル……

タイミングよくバスが来て。

プー。

扉が開く。

「じゃあね、外村くん。今日はありがとう」

私の横で。

同じような挨拶を中臣さんにしている洋ちゃん。

「こちらこそ楽しかった。気をつけてね、北見さん」

「うん」

どういうわけか。

狭い入り口を。

洋ちゃんとぶつかりながら。

一緒に乗り込んだ。


いつもの一番後ろの指定席。

進行方向左側に腰かけた。

窓の外で。

外村くんと中臣さんが。

揃って手を振っている。

私は外村くんに。

洋ちゃんは中臣さんに。

手を振り返す。

何か面白かったのか。

外村くんと中臣さんが。

顔を合わせて。

笑いだした。

バスは。

そんなことも気にせず走り出す。

なんだろう。

ぐしゃぐしゃしてるの?

ため息をこぼして。

シートに寄りかかった。

チラッと自然に向いた視線の先。

リュックを抱えた洋ちゃんの手。

あっ。

中臣さんとつないでた。

「お前、膝どうした?」

「ああ、転んでさ、擦りむいちゃったんだ」

「ふーん」

「ねぇ、洋ちゃんの用ってなんだったの?」

「ん? お前こそ外村と何やってたんだよ」

「え? 私は二人三脚の練習してたんだよ」

「ふーん。そっか」

腕を組んで目を閉じた洋ちゃん。

ん?

「怒ってる?」

「何で?」

「だって、貧乏ゆすりしてる」

「あ?」

揺すっていた足が。

ピタッと止まる。

洋ちゃんのイライラの合図。

「ねえねえ、なんだったの用事? 私は教えたんだから教えてよ」

「聞いてない」

「ん?」

「外村と遊ぶなんて聞いてない」

「だって、言おうと思ったら洋ちゃん用があるって行っちゃったじゃん」

むすっとした顔をして。

目を瞑った洋ちゃん。

「ねえってば」

洋ちゃんの袖を引っ張った。

「静かにしてくれ」

「……っ!」

洋ちゃんが払った腕が。

私の顎に当たった。

「もう、ひどいよ洋ちゃん」

「……悪い」

洋ちゃんは、ぼそぼそと呟いて。

うつむいて目を閉じた。

ちえっ。

口を尖らせて。

顎をさする。

そんなに痛くなかったのに。

なんでだろ。

胸がじんじんする。

なんか。

つまんないな。


車内が暗くなる。

エンジン音が一段と大きく響く。

バスがトンネルに入った。

窓ガラスに映る女の子一人。

眉が下がって。

尖った唇。

さっきまであんなに楽しかったのに。

シートに深く沈み込んでもたれる。

チラッと見た洋ちゃんは目を閉じている。

寝ちゃったのかな?

もう。

何やってたかくらい。

教えてくれたっていいのに。

小さく息を吐いて。

洋ちゃんの肩に頭をもたげた。

ビクッって。

体が震えたけど。

私はそのまま目を閉じた。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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