ライバル
オリーブ公園から少し歩いて。
内海湾に沿って走る国道。
その防波堤に腰かけている。
足元で。
ぽちゃぽちゃと。
水が揺らいでいる。
夏の夕暮れは遅いから。
傾いた太陽から注ぐ光線は。
まだ暑さを運んでくる。
ぬるい風が緩やかに流れては。
ふわりと頬を撫でていく。
「夕凪島に来たのは、今年が初めてなんだ」
「そうだよね。来てたら狭い町だから、気づくと想うもん」
「そうだね。父さんの田舎なのは聞いてたけど、興味なかったし、サッカー漬けの毎日だったしね。それは、これからもそうなるけど」
「うん」
「穂乃花はね、ライバルだったんだ」
名前が出た途端。
また。
胸の辺りが。
くしゅくしゅする。
「女の子? なのに?」
「そう想うよね。少なくとも、普通の男子よりは、サッカー上手いんだ」
「へぇー、そっか」
「中学生になって、張り合えるライバルがいなくてね、ゴールデンウィークに、穂乃花に会うために島に来たんだ」
「あっ……」
つないだ手に力が込められた。
「だからって、穂乃花が好きとかじゃないからね。嘘じゃないよ」
「うん」
そう。
勇太は。
私のことが好きなんだし。
別に。
武田さんは。
勇太の友達なのに。
言ってみれば。
私と洋ちゃんみたいなもんだよね……
「家族の事情とはいえ、練習設備も都会より劣る環境で、サッカー続けてるのか気になってね」
「うん」
「穂乃花のやつ。サッカーのいいとこは、ボール一つあれば、どこでも練習出来るし、仲良くなれるんだって、笑ってた」
「そっか」
「だから、僕も頑張ろうってね」
「ごめんね、そんな時に……怪我させちゃって……」
「あれは、もう済んだことだし、自分の不注意だから、前も言ったでしょ? 葉月のせいじゃないって」
「そうだね」
「葉月に出会って、さらにサッカー頑張ろうって、リハビリも予定より早く終えたしね」
「私に出会って?」
「そう。そうだな、いつか試合観に来て欲しいな」
「うん。観たい。ポジションはどこなの?」
「あれ? 葉月、サッカー詳しいの?」
「ああ、あの、洋ちゃんもサッカーやってるから、少しだけ」
「へぇー、そうなんだ。そっか。会ってみたいね、彼に」
「洋ちゃんに?」
「サッカーやってるなら、友達になれるかも」
勇太は。
空を見上げて。
一人でうなずいている。
「ふーん。サッカーって不思議だね。洋ちゃんは中盤の選手だよ」
「中盤か。僕と同じだね。厳密に中盤でも色々役割違うけど」
「ふーん。そうなんだ」
「今じゃなくてもいいから、いつか、彼を紹介してくれる?」
「えっ? ……うん……そうだ。勇太、明日も会えないかな?」
「そうだね。僕も会いたいけど、みんなで高松に出掛けるんだよね……」
「そっか……」
ちぇっ。
明後日には。
東京に帰っちゃうし。
口を尖らせて。
足をふらふらさせた。
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




