同じで違う
洋ちゃんと座ってた。
バスの一番後ろの席に。
今は日置くんと座っている。
車体が揺れるたび。
日置くんに。
肩がぶつかっては離れる。
窓の外は。
水面で踊る光の破片が。
眩しくて。
目を細めた。
「葉月さん、どうしたの? なんか元気ない? 疲れた?」
「え、うん……あのね、幼馴染みの洋ちゃんのことなんだけど……」
「ああ、お昼一緒に食べた子だよね? どうかしたの?」
「うん。急にその、私のことが好きだって」
「えっ!?」
顔をしかめて。
身動いだ日置くん。
「それでね、よく分かんないんだけど、勝手に言って、もう連絡するの止めようって……」
「変なこと聞くけど……その、洋ちゃんって、男子だよね?」
こくんと。
うなずく私。
「そっか……」
日置くんは。
フッて。
笑った。
「幼馴染みって、前にあった……ダンス一緒にしてる子じゃなかったんだ」
「ん? ああ、みーちゃんのことかな?」
「そうそう。みーちゃん。そんな名前だった。そっかそっか勘違いだな」
首を捻って。
笑いだした日置くん。
「どしたの?」
「いや、ちゃんと話してくれてありがとう。僕は葉月さんが、一緒に昼ごはん食べるの、女の子だと勘違いしてたってこと、思い込みってやつだね」
「ふーん?」
「それで、葉月さんは、その幼馴染みとは、どうしたいの?」
「どうって……今まで通り、遊んだり話したりしたいけど」
「なるほど。だから元気ないのか」
「え? 元気ない訳じゃないけど」
スーっと。
伸びてきた。
日置くんの手が。
膝の上の私の手に重なる。
「葉月さんにとって、大切な幼馴染みなんだ……」
「大切っていうか、一緒にいるのが当たり前だったし……」
「ふーん。なるほどね」
「ん?」
「僕は、一緒にいてあげられないよ」
「え?」
「夕凪島と東京。離れてるから、楽しみも苦しみも、哀しいことも、その瞬間、そばにいれない」
「それは、しょうがないよ」
ん?
手から温もりが離れて。
日置くんは。
ぐっと。
私の肩を抱き寄せた。
想い出したかのように。
鼓動が。
騒ぎはじめて。
心が。
きゅっとなる。
自然と。
日置くんの肩に、
頭がもたれる。
「そう言えばさ、葉月さんって誕生日はいつなの?」
「あ、8月の20日だよ」
「来月か……葉月さんの名前の通りなんだ」
「うん。8月生まれだから葉月。お父さんが考えた名前なの。私が生まれたのが夜で、満月だったんだって」
「へぇー」
「日置くんは? 誕生日いつなの?」
「僕は、9月の15日」
「私のがお姉さんなんだ」
「まあ、確かに。そういうことになるかな」
クスクスと笑う日置くん。
「なあに?」
「葉月さんのシャンプー。
いい匂いだなって」
あっ……
肩を抱いていた。
日置くんの手が。
私の髪を撫でる。
優しくて。
気持ちいい。
私は。
日置くんの腕にしがみついて。
目をつむった。
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