何かを得たら?
洋ちゃんが帰って。
洗い物をしながら。
ずっと。
考えてる。
洋ちゃんが。
私のこと好きだって。
小さい頃から。
そうだったって。
私は……
好きだけど。
たぶん。
洋ちゃんが想うような。
好きではないのかな……
日置くんに。
好きって。
言われた時と。
なんか。
違ったかも。
って。
でも。
どうして。
友達じゃなくなるの?
かな……
タオルで手を拭いて。
とぼとぼと。
部屋に戻る。
階段を上がる足取りが重い。
せっかく。
楽しかったのに。
どうして……
なのかな。
部屋の扉を開けて。
そのまま。
ベッドに倒れ込んだ。
くるりと。
仰向けになって。
スマホにメッセージを打ち込む。
「みーちゃん。話があるの」
よし。
スマホを胸に。
目を閉じた。
ピコン。
ん。
顔の前にスマホを持ってくる。
『なんですか? はーちゃん』
「あのね……」
えーと。
どっちから話そうかな……
ブゥー……ブゥー……
あっ。
「もしもし、みーちゃん」
『電話しちゃいました。まずかったですかね?』
「ん? 全然、大丈夫だよ」
『海は行ってきたんですか?』
「うん……」
『何かあったんですね?』
「え……? うん……」
『元気ないですね。三並くんと何かありましたか?』
「なんで……?」
『簡単ですよ。はーちゃんの元気の源は三並くんですからね』
「へ……?」
『けんかでもしましたか?』
「ううん、してない……あのね、洋ちゃんに、好きだって言われて……」
尻すぼみになる声。
『あれ? 嬉しそうじゃないですね』
「あ……あのね……」
私は。
日置くんから。
好きだって言われたこと。
私も。
日置くんのことが好きで。
付き合うことになったって。
さすがに……
キスしちゃったことは。
言えなかった……
『なるほど。遅かった訳ですか……』
「ん? 何が?」
『なんでもないですよ。それで、三並くんには、なんて伝えたんですか?』
「ううん。なんにも……ただ、勝手に好きだって言って……」
はぁ……
『はーちゃん?』
「あ、うん……洋ちゃん。もう、お互いに連絡とか、しないようにしようって……」
『あらら』
「なんで、そうなっちゃうのかな? 私、悪いことしたかな……」
『そうですねぇ……悪いことはしてないと想いますよ』
「そうだよね」
『でも、三並くんの気持ちも分かりますね』
「洋ちゃんの気持ち?」
『はーちゃんのことが、好きだったからですよ』
「なら、今まで通り、友達でいてもよくない?」
『うーん。はーちゃんはそれでいいかもですけど。みんな、はーちゃんのように考えてるとは限りませんよ』
「それは、そうかもだけど」
『じゃあ、はーちゃん。日置くんって、東京に住んでるんですよね?』
「うん」
『例えば。もしもですよ。もしも。日置くんに、仲のいい女の子がいたらどうですか?』
「え……?」
『あんまり、いい気持ちはしないと想いません?』
「でも、友達でしょ?」
『なら。その女の子が日置くんのこと好きだったら? その子がそばにいても平気ですか? はーちゃん』
「それは……でも、お互いに嘘や秘密は止めようって約束したから」
『まあ。実際にそうならないと、その時の気持ちは分かりませんしね』
「そっかなぁ」
『そうですね、時間が解決してくれるかもしれませんし。それより……』
「ん?」
『よかったですね。はーちゃん。遠距離は大変ですけど』
「大変かな? 毎日、メッセージはするし、週に一度は電話もするし」
『ごちそうさまです』
「ん? 何か食べたの?」
『はーちゃんの惚気話のことですよぉ。いいですね。恋ですか』
「惚気てるの?」
『彼は、積極的ぽいから、はーちゃんには合ってるかもしれませんね』
「ああ。なんかドキドキさせられるかも」
『あれあれ、その分だと、もうキスとかしちゃいました?』
「えっ……!?」
自然と指が。
唇に触れていた。
『そうですか。しちゃいましたか』
「え? あ、うん」
『じゃあ、この休みの間に……』
「なあに? みーちゃん?」
『いえいえ、ごちそうさまでした。じゃあ、またダンスの練習の時に聞かせて下さいね』
「え? あ、あの洋ちゃんのことはさ、どうしたらいい?」
『そうですね……何かを得たら、何かを失う。世の中はそう言う仕組みみたいですから、どうにもならないと想いますよ』
「え……?」
『はーちゃんは、好きな人のこと考えてればいいんですよ。それじゃ……』
ツーツー……
ちぇっ。
なんか。
難しいこと。
言ってたけど。
洋ちゃん……
今まで通りで。
いてくれたら。
それでいいのにな……
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