告げられたのは
耳元で騒ぐ鼓動が。
わんわんと。
頭に響く。
え?
洋ちゃん。
私のこと、
好きだって……
これって……
「葉月……」
ん?
洋ちゃんが呼んでる。
「葉月?」
「あ、え……」
「いきなりで、びっくりするよな……」
「……うん」
なんか。
洋ちゃんを見れなくて。
膝の上で落ち着かない。
組んだ指先を見つめていた。
「俺、ずっと好きだった、でも、好きだって言ったら、今までの関係が壊れそうな気がしてた」
黙ってうなずく私。
「覚えてないかも知れないけど、保育園の頃、寒霞渓の展望台に遠足行ったんだ」
遠足……?
「こないだ、葉月さ、鷹取展望台で、ダンス動画撮ったろ」
「……うん」
「あそこで、みんなで昼飯食べて、お互いのお弁当のおかず、交換したんだ、コロッケとメンチ」
あっ……
「葉月の弁当がメンチで、俺のがコロッケ。葉月がコロッケ好きだからって」
確かに。
そんなことが。
あったような気がする。
「そのあと、ちょっといいとこ見せようって。崖っぷちに立って、
カッコつけようとしてたら、お前が抱きついてきたんだ……洋ちゃんあぶないよって」
分からない。
全然覚えてないや……
「そん時に、葉月とはじめて手をつないだんだ。それからずっと、好きだった……」
そんなの……
全然気づかなかった……
「それに……葉月に好きなやついるのかなって、勘繰ってたこともあった」
「へ……?」
想わず見上げた洋ちゃんは。
首の後ろを手でさすりながら。
ニコッと笑っていた。
「まあ、そんなことは、どうでもよくて、俺はいつまでも幼馴染みじゃいられない」
「……」
「無理なんだよ。好きなもんは好きだから……」
洋ちゃんは。
箸を手に取って。
素麺を食べ始めた。
私も。
箸を手に。
コロッケをかじった。
美味しいはずなのに。
味がしなくて。
それから。
何を話したらいいか分からないまま。
静かな食卓が。
ゆっくりと。
でも。
意外と早く終わった。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした。洗い物は私がするから」
「そっか、じゃあ、帰るわ」
「え? 帰るの?」
「ああ……今日から、お互い連絡するのやめよ」
「え? なんで?」
「なんで? そりゃあ……葉月さ、お前は俺のこと好きじゃないだろ?」
「え……?」
「え? じゃないよ。好きなら、俺が告った時に返事するだろうし、嬉しそうにするだろ?」
「だって……」
「急だったからか? 悪いけど、それだけじゃないだろ?」
「……」
「俺は……幼馴染みだとしても、仮に好きじゃなくても、アニメや漫画のように、心広く友達でいようねって無理だから」
「え!?」
「そりゃあ、学校で、会ったら話ぐらいはするかもだけどな」
席を立った洋ちゃん。
「じゃあな」
にこりと。
片手を上げると。
リュックを背負って。
部屋を出て行った。
何にも考えられなくて。
ガチャ。
玄関の扉が開いて。
バタン。
閉まった――
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