好物を食べながら
ザー……
シャワーを浴びて。
汗と海水で。
べとべとした体を。
すっきりさせている。
でも。
日置くんが。
触れた体の至る所に。
まだ。
感触が残ってるみたいで。
そわそわ。
むずむずして。
水着越しに。
日置くんの手が。
胸に触れた時。
ぞくぞくってなって。
知らない感覚に襲われて――
想い返して。
ブルル……
と。
身震いをした。
そしたら。
キスした感覚も甦って。
ぽーっとしてきて。
でも。
鼓動は忙しくて。
シャワーのお湯が。
名残りを流して。
湯気が。
余韻を包んでいるようだった。
お風呂から出たら。
「葉月、素麺茹でる」
キッチンの方から。
陽気な洋ちゃんの声がした。
「ありがと」
声を張り上げる。
「おかずにコロッケもあるからな」
「本当!?」
「ああ、2個ずつ。メンチも買った」
「さすがだね、洋ちゃん」
「揚げ物と素麺は神」
「フフフ。髪乾かしたら手伝う」
「分かった」
もう、
お腹ペコペコ。
私は。
Tシャツをすっぽりと被った。
キッチンに行くと。
素麺は茹で上がっていて。
ガラスの器に。
白い山盛りの素麺がよそられていた。
「とりあえず、6束茹でたから」
「多すぎない?」
「葉月、食えるだろ?」
「うん、まあね」
私を見た洋ちゃんは。
視線を上下させて。
顔をしかめた。
「葉月、焼けたな?」
「あ、うん、海行ってたから」
腕をさする私。
「ふーん。そっか」
洋ちゃんは。
ガラスの器を両手で抱えて。
ダイニングのテーブルへと運びだした。
私は。
めんつゆと麦茶を冷蔵庫から出して。
テーブルに持っていく。
揚げ物たちは。
小皿の上に準備されていた。
「これ、洋ちゃん」
麦茶を渡すと。
黙って受け取って。
コップに注いでくれる。
その間に私は。
お椀にめんつゆを入れる。
「よし、じゃあ食うか」
「食べよ、食べよ」
椅子に腰かけて。
箸を手に取った。
「いただきます」
重なる声に。
微笑みが混ざる。
箸で素麺を摘まんで。
めんつゆにつけて。
ツルツルとすする。
「美味しいね」
「ああ、旨い」
私を見た洋ちゃん。
「誰と?」
「ん?」
「海。一人じゃないんだろ?」
「あ、日置くんとだよ」
素麺をすすって。
もぐもぐ。
幸せを噛みしめる。
「日置……って? 誰?」
「あっ、斜向かいの梶川のお爺ちゃん家の子だよ」
「梶川の爺ちゃんとこ、子供いたんだ」
「うん。東京に住んでて、遊びに来てる」
「ふーん。年は?」
「同じ」
「そっか」
「うん」
それから。
黙っちゃった洋ちゃん。
お互いの。
素麺をすする音だけが。
テーブルの上に響く。
どしたのかな?
「あのね……」
「あのさ……」
「ん? なぁに洋ちゃん?」
「あ、葉月こそなに?」
「私は後でいいよ」
「そっか」
スッと。
背筋を伸ばして。
箸を置いた洋ちゃん。
「んっ、んんっ……」
咳払いをして。
私を見た。
すすりかけの素麺を。
吸い込んで。
ごくりと。
飲み込む私。
「葉月、俺、お前のこと好きなんだ……」
風も吹いてないのに。
ぶわっと。
声が体を突き抜けた。
ただ。
頭と心に。
お前が好きなんだ。
洋ちゃんの声が。
木霊していた、
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




