山と海の音の中で。
日置くんが。
スマホを取ってきてくれて。
岩場の上で撮影会。
ちゃぷちゃぷと。
岩に寄せる波。
緑の葉を煌めかせながら。
蝉の音を降らす山。
そんな。
盛りの夏を背に。
スマホをとっかえひっかえ。
カシャカシャと。
写真を撮りまくる。
立ったままで。
座ったりして。
色んなポーズをして。
「じゃあ、ちょっと休憩しよ、写真送ってくれる? 僕の方のも送るから」
「うん」
岩場から下りて。
ほかほかな砂の上を。
足をすらせながら歩く。
さらさらの砂が。
指の間に入り込んで。
くすぐったい。
ピコン。
ん?
スマホの音に立ち止まる。
あっ。
洋ちゃんからメッセージだ。
『部活早く終わったから、一緒に素麺食べようぜ、あと、30分くらいだから』
珍しい。
洋ちゃんが。
お昼一緒にだって。
でも。
今日はお母さん仕事だし。
まあ。
素麺茹でるくらいなら。
私でも出来るけど。
頬を膨らませて。
返事を打ち込む。
「分かった。けど。素麺あったかな?」
『素麺買ってる。じゃあ、後で』
「はぁい」
島の特産品の素麺は。
私も大好物。
つるつるしてて。
いくらでも食べられる。
「どうしたの葉月さん?」
「ん?」
「いいことあったの?」
「あ、洋ちゃんが、お昼一緒に食べようって、大好きな素麺だから、ちょっぴり嬉しくて」
両手を振りながら歩き出す。
「ふーん素麺か、確かに旨かったかも」
隣を歩く日置くんは。
顎をさすってる。
「そうだ! 日置くんも、一緒に食べない?」
「あ、誘ってくれて嬉しいけど。ほら、昨日、言ったでしょ? じいちゃんたちと、ご飯食べに行くから……」
「そうだね、忘れてた」
レジャーシートのある。
木陰まで戻ってきた。
カサカサと。
葉を揺らす風も温かい。
私はぺたんと。
女の子座りする。
今撮った。
ツーショット写真を。
日置くんに送信する。
「洋ちゃんって、友達?」
「ううん、幼馴染みだよ」
わっ。
海を背にした。
二人の写真。
背景の海がエメラルドグリーンで。
水面に光が散らばって。
二人の周りが。
キラキラに装飾したみたいになってる。
「ああ、なるほどね、あの時の子か……」
「ん? どしたの?」
「あ、いや……じゃあ、午後は、予定通り15時に待ち合わせで」
「うん。分かった」
日置くんからも。
写真が送られてくる。
「葉月さんが送ってくれた、海が背景の写真、きれいだね」
「うん。これが一番、お気に入。かも」
「葉月さんの笑顔もかわいいしね」
ぴくって。
肩が跳ねて。
お腹が。
きゅってなる。
「もう……」
日置くんの腕をはたこうとしたら。
ぐっと。
手首を掴まれて。
スッと。
身を乗り出してきた日置くん。
目の前に顔があって。
ほっぺが熱くなって。
目を閉じた。
唇に温もりが触れる。
ぞわぞわって。
ぞくぞくして。
遠く。
蝉の声と。
潮騒だけが。
うるさい鼓動を包んでいた。
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