浮かんで。揺れて。
あったかくて。
大きい。
日置くんの手の感触が。
水着越しに伝わる。
「葉月さんのドキドキ。僕と一緒だよ」
少し。
真剣な顔をした日置くん。
胸に添えた手を持ち上げて。
私の両手を握る。
「じゃあ、海行こう。起こすよ」
「わっ」
ぐいっと。
引っ張りあげられる。
よろめきそうな私の腰を。
さりげなく。
支えてくれた。
また。
とろけそうな気分。
「じっとしてて」
「ん?」
日置くんは少し屈んで。
私の左脇の辺りに手を入れて。
片方の手を膝下から足を持ち上げる。
「わっ」
体が浮き上がって。
両手を胸に組む。
「葉月姫、海に案内します」
ぽっと。
頬が染まる。
日置くんの腕に。
しっかり抱き留められている。
張り裂けそうな鼓動。
呼吸も早くなる。
「うん」
目の前の。
日置くんが。
白い歯を見せて笑う。
口元を見つめてしまって。
視界が暗くなって。
ああ……
唇に重なる。
ぬくもり。
ぎゅって。
体が縮こまる。
チュッ。
チュッ。
音を残して。
そっと。
離れた。
ダメだ。
溶ける。
「わっ」
急に駆け出した日置くん。
私は。
日置くんの首に。
腕を回す。
パシャパシャパシャ……
海に入る音がして。
お尻から背中が。
水に浸かっていく。
「葉月姫、手を離して」
「うん」
私は両手を胸元に添えた。
「どうかな、力抜いてみて」
「うん」
日置くんは。
私の肩甲骨から後頭部にかけてと。
腿の辺りを。
そっと。
支えている。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
揺らぐ波と一体になったみたいで。
空しか見えない。
「わぁ。浮いてるみたい」
「葉月さん。寂しくなったら、空を見て、僕も東京で見上げてるから」
「うん」
「雨でも、雪でも、嵐の日でも、葉月さんを想って僕は毎日見上げるから」
「分かった。私もする」
ちゃぷん。
ちゃぷん。
「空は繋がってるっていう歌詞があってね。その歌を聞くたびに、僕はずっと空を見上げて、葉月さんを想ってた」
「何て言う歌? 私も聞いてみたい」
「じゃあ、後で教えるね」
「今じゃないの?」
「お楽しみ。一緒に聞いてみたい場所があるんだ」
「え?」
驚く私に。
ニコニコしている日置くん。
水面の光の揺らぎが。
その顔を。
一層。
眩しくしてる。
「そもそも、空を見出したきっかけは、この島の星空を葉月さんが教えてくれたからだよ」
「そうなの?」
「あの日から、空を見なかった日はないから」
「起きる」
私は日置くんに手伝ってもらって。
向かい合う。
ゴツゴツした岩が。
足裏に当たる。
足は辛うじて。
底につく。
「あの、また、会えるよね? 冬休みとか、夏休みとか」
「うん。部活もあるから難しいかもだけど、夏休みは来れると想う。両親の都合もあるから絶対とは言えないんだ」
「そっか……」
きゅーって。
胸が締め付けられる。
私は。
胸元で握った拳を。
そっと。
片手で包む。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
「出来る限り、島に来れるような方法考えてみる。僕だって会いたいから」
「うん」
スーっと。
伸びてきた。
日置くんの腕が。
私を抱き寄せる。
顔に当たる。
日置くんの胸。
やっぱり。
私と同じくらいの速さ。
でも。
さっき感じた。
肌に触れる怖さは。
なくて。
ぬくもりに。
溶かされてしまいそうだった。
日置くんは。
東京で。
私は。
夕凪島。
分かってるのに。
もう。
離れたくないって。
想ってる……
お読み下さりありがとうございます。
感謝しています。




